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お家時間を楽しもう。ついに「パラサイト」分析 加筆修正ver. ※ネタバレあり※

周囲の映画好き絶賛の今年度カンヌ・グランプリ作品、「パラサイト」見てきました。(その後、アカデミー賞も受賞しました。カンヌとアカデミーのW受賞は極めて異例です。)

激しくよかった。映画として、本当によく出来ている。

昨年の万引き家族に続いて、アジアの格差社会を描いた作品がグランプリを取っているんですね。「万引き家族」も衝撃的でしたが、パラサイトは絶望感が物凄く、富裕層と貧困層の拭えない差をかなり上手く表現していました。

息子も娘も激しい受験競争に敗れ、父母は失業して半地下の家に暮らしているキム家族が、ひょんなつてで富裕層であるパク家族の”パラサイト(寄生虫)”となる話− パラサイト・シングルなどと言いますね。

日本でも金持ちの家(昔で言えばお城)は高い土地にあり、貧しい人の家は割と低い土地にあるように、彼らは半地下の家で貧しいながらも内職しながら暮らしていました。前半はコメディ要素もあり軽快な感じです。(後から振り返ると実は全然笑えないのですが・・)

※※以下、ネタバレあります!注意願います。※※

この映画で最も上手く象徴されているのが格差です。富裕層の家は丘の上、キム一家は半地下、そして後半に明らかになる完全なる“地下”に住む人々というように。

そもそも貧困層である半地下のキム一家ですが、さらなる地下へ転落する様、そしてそこから這い上がることがほぼ不可能な絶望を描いています。

事の始まりは、長男のギウが昔の友人(金持ち)のツテで、彼が留学している間の家庭教師を頼まれたのがきっかけですが、そもそも彼の中に金持ちへの根本的恨みがあるのか、あっという間に友人を裏切ります。

パク家の長女のことが気になっているから、信頼しているお前に家庭教師を頼みたいと紹介してもらったというのにあっという間に裏切り、長女と出来てしまいます。長女がその気を見せると迷うことなくキスする様に、金持ちの友人のことなど心底どうでも良いと思っていることが分かります。

かと言ってギウが悪い奴なのかというと、そうでもなく、父や母を大切にしているし憎めない。その点が貧困層と富裕層の間の、お互いをどうしても助け合えない関係を上手く表現しています。

その友人がギウにくれた巨大な石が、結局最後まで彼にへばりつき、彼に災難を呼んでしまう。

終始善良で騙されやすい富裕層と、賢く生き抜こうとする貧困層を描いていているだけで、極悪人がいるわけでも無い。ただ、どうしても消え去らない貧しい者の「匂い」だけがそこにあり、富裕層は鼻をつまみ彼らを下に見る−

韓国は実際に激しい競争社会のようで、就職に失敗すると一生貧困層なんてこともあるようです。現実社会の断片を見ているのかな、なんて思うとますますゾクゾクしてきますが、前半はスパイ映画のようで楽しめます。

後半は、大雨で半地下の家に大量の水が流れ込み下水が溢れている一方で、富裕層の家では何事もなかったかのように盛大な誕生日パーティが行われている・・。貧しい者へのあまりの無関心さ、これが最悪の事態を引き起こしました。

鑑賞後、常に慎ましく生き、困っている人に手を差し伸べられる社会になってほしいと願わずにいられなくなります。現代社会を捉えて、強烈に伝えてくれた作品でした。

全てのシーンが示唆と比喩に富み、ポン・ジュノらしさが光る本作でした。分析してもし尽くせない深みがある作品です。勉強として、もう一度見直したいなぁ。





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