川中那茶 / Natcha Kawanaka

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川中那茶 / Natcha Kawanaka

作家・ライター / 映画と小説を愛する人間が執筆中です。/FB:https://www.facebook.com/Natcha-Kawanaka-100282644727565/?modal=admin_todo_tour /

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初稿、ショートストーリー:「淳さん」

 夕陽はとても美しい。特に好きな人と見る夕陽はー。  人は何故、不毛な恋に惹かれるのだろうか。瞳は毎朝、駅にある鳩除けを見ながら思う。止り木の様な姿形をしながら、その上には剣山があり、決して留まることは許されない。ただ遠くから見るととてもちょうど良い場所に思えて、ひたすら其処を目指して飛んでしまう。淳さんはとても良い止り木に思えた。まるで空気の様な存在。瞳は人混みで気分が悪くなると、淳さんのことを想像する。淳さんがただ其処にいることを思い浮かべるだけで、すっと気分が良くなる

    • 中国映画鑑賞記 「花の生涯ー梅蘭芳」と、「さらば、我が愛 覇王別姫」

      先日、チェン・カイコー監督の「花の生涯ー梅蘭芳」を鑑賞したのだが、不意に「さらば、我が愛 覇王別姫」の凄まじさを思い出してしまった。今回はこの二作を比べつつ、「さらば、我が愛 覇王別姫」の魅力について紹介していきたい。 まず、私が最近鑑賞したのは『花の生涯~梅蘭芳~』2008年の中国映画である。 実在した京劇の名女形、梅蘭芳の一生を描いた伝記物。148分とかなり長い尺で、若かりし梅蘭芳がこれまであった京劇の型を破り、改革を起こしていったかを描いている。冒頭のシーンからすで

      • 隠れ、おすすめ。韓国ドラマ 「マッド・ドッグ〜失われた愛を求めて〜」

        ご無沙汰しております。川中那茶です。自粛中はひたすら韓国ドラマを見ておりました。 日本でもNETFLIXで韓国ドラマ「愛の不時着」「梨泰院クラス」などが流行ってましたね〜。なかなかお出かけできずにドラマに熱中していた方も多かと思います。 今回おすすめしたいのは、日本ではそこまで話題には上がっていなかったけれど、私が実際に最後まで鑑賞してみて、見応えのあった骨太韓国ドラマをご紹介します。 「マッド・ドッグ〜失われた愛を求めて〜」 2017年 飛行機墜落事故の真相に迫った

        • おすすめ香港映画〜入門編〜

           若い人の間では香港=映画のイメージがあまりないのかもしれず、由々しき事態だ、と勝手に思っています。著者は幅広く映画を見ているつもりですが、結果、一番好きなのは香港映画。近頃の人気は下火ですが、まずは入門編として間違いなく楽しめる作品をご紹介します。  「インファナル・アフェア」  こちらの作品は2002年公開の作品で、ハリウッドや日本でもリメイクされている名作です。本家が香港だということ、ご存知ない方も多いのではないでしょうか?  ハリウッド版は「The Depart

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        記事

          短編小説:「謎のウイルスと愛の関係」

           疫病は一定の周期で蔓延し、世界中を恐怖に陥れる。人口過多となった世界で、大勢の人が一度に亡くなる。謎のウイルスが蔓延するとき、奇しくも人間は当たり前の日常はかけがえの無いものであることに気づく。そして、愛する人の安全が気になり始める。愛する者を守りたい気持ちは、人に良くも悪くも影響を与える。壮大な理論はさておき、身近なところでは謎のウイルスが一部の人間の恋を後押しする場合もある。  メアリーは退屈していた。もちろん、メアリーは彼女の本名ではない。麻里(MARI) という名

          短編小説:「謎のウイルスと愛の関係」

          お家で、話題の新作「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」の予習をしよう。

          個人的に、だいぶ前から密かに楽しみにしていた映画「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」。大変残念ながら、コロナウイルスの影響で現在、公開延期になっています。 原題は「LITTLE WOMAN」、アメリカを始め日本でもリメイクされている普及の名作です。アメリカの作家、ルイーザ・メイ・オルコットが1868年に執筆した自伝的小説「若草物語」が原作と言えばお分かりになる方も多いかもしれません。 とはいいつつ、「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」という邦題

          お家で、話題の新作「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」の予習をしよう。

          特集:猫が可愛い映画

          動物達は、映画をさらにハートフルなものに彩ってくれます。今日は可愛い猫ちゃんが出演する映画についてご紹介したいと思います。いつもとは違う視点で映画を探してみるのもまた一興です。 今回は代表して、猫ちゃんが可愛い映画を2作ご紹介します。 「ティファニーで朝食を」 まず、言わずと知れた名作、「ティファニーで朝食を」(1961年公開)です。本作では猫俳優として活躍したオランジーが随所に登場し、オードリー・ヘップバーン演じるホリーを投影する存在として描かれています。可愛いだけで

          特集:猫が可愛い映画

          過去の名作を家で楽しもう。「バタフライ・エフェクト」

          最近、複数の人から同じ映画を勧められることがあったので、これは見なければいけないと思い鑑賞した映画があります。 「バタフライ・エフェクト」、2004年公開のアメリカ映画。TSUTAYAでレンタル出来るので、是非家で鑑賞してもらいたい作品です。 バタフライエフェクト(バタフライ効果)とは、元々、小さな蝶が羽を動かすだけで遠くの気象に変化が起こるという気象学の用語。これが転じて、本作ではほんの些細な出来事が徐々に大きな出来事に変化してしまうことを意味しています。 初恋の女性

          過去の名作を家で楽しもう。「バタフライ・エフェクト」

          短編小説:「シークレット・チョコレート」 加筆修正ver.

           バレンタインは日本の男達にとって、いつまでも重要なイベントであり続ける。なぜ、日本では“女性”から“男性”にチョコを送るのかは定かではない。世界各国では男性から女性にプレゼントを贈る日だ。ただ、昔ながらの日本企業では未だに、女性社員が男性社員にバレンタインデーのチョコレートをあげるという習慣が残っている。  ある年、部内の方針で、バレンタインデーのチョコレートを廃止しようという提起があった。古き習慣を取り払い、よりフラットな会社を目指す動きなのか?この慣習には女性社員から

          短編小説:「シークレット・チョコレート」 加筆修正ver.

          過去の名作を家で楽しもう。ポン・ジュノの 「殺人の追憶」を見た ※加筆修正ver.

          韓国人監督、ポン・ジュノの「パラサイト」が本年度アカデミー賞作品賞を受賞しました。おめでとうございます。同じアジア人として、とても嬉しい。個人で鑑賞した中では、今年度最もよく出来た作品だと思っていたので、受賞は正当な評価だったのではないでしょうか。(例えばアジア人監督だから賞レースで優遇された、とかではなくて。) さて、これを機に、ポン・ジュノ祭りをしたいところですね。そこで、前々から気になっていた「殺人の追憶」(2003年公開)を鑑賞しました。 以下、ネタバレはないよう

          過去の名作を家で楽しもう。ポン・ジュノの 「殺人の追憶」を見た ※加筆修正ver.

          お家時間を楽しもう。ついに「パラサイト」分析 加筆修正ver. ※ネタバレあり※

          周囲の映画好き絶賛の今年度カンヌ・グランプリ作品、「パラサイト」見てきました。(その後、アカデミー賞も受賞しました。カンヌとアカデミーのW受賞は極めて異例です。) 激しくよかった。映画として、本当によく出来ている。 昨年の万引き家族に続いて、アジアの格差社会を描いた作品がグランプリを取っているんですね。「万引き家族」も衝撃的でしたが、パラサイトは絶望感が物凄く、富裕層と貧困層の拭えない差をかなり上手く表現していました。 息子も娘も激しい受験競争に敗れ、父母は失業して半地

          お家時間を楽しもう。ついに「パラサイト」分析 加筆修正ver. ※ネタバレあり※

          短編小説:「ポイントを貯める女」※加筆・修正ver.

           とある女はポイントを貯めるのに凝っている。  近所のスーパーに行けば、電鉄のポイントカードを提示し、会計はスマホ決済アプリで行う。カードとアプリで、ポイントの二重取りができると言う訳だ。  買い物に行けば必ずクレジット決済をする。ここもポイントなのだが(駄洒落ではない)、実際にはクレジットカードではなく、プリペイドカードかデビットカードを使用する。クレジットカードと同じように使用できるので、VISAかMASTERの表示がある店では大抵問題なく使える。利用分の0.5%が還

          短編小説:「ポイントを貯める女」※加筆・修正ver.

          百万円と苦虫女を(今更)見ました。※加筆修正ver.

          もう10年以上前なのか。 自分が高校生くらいの時、話題になっていたタナダユキ監督の「百万円と苦虫女」見ました。(2008年公開) タナダユキさんといえば、現在「ロマンス・ドール」が公開されています。こちらも蒼井優さん主演。可愛いこと間違いなしだなあ。可愛いだけでなく、演技力がある優さん。安心感があります。 「百万円と苦虫女」は、邦画の中でも気になってはいたものの、派手さやハッピーさが感じられず見ていませんでした。ごめんなさい。ただ、こういう少し地味なイメージの作品ほど内

          百万円と苦虫女を(今更)見ました。※加筆修正ver.