巡る、ビュフェの白百合

昨年、冬のはじまりの頃、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催されているベルナール・ビュフェ展へ行きました。(短い文章ですが、noteにも感想を書いております。)

実は、ビュフェの展覧会に行くのは、これが2回目。

初めてビュフェの絵を見たのは、たしか、小学4年生です。桜の咲く頃に、なぜか、祖母とふたりで。
今でこそよく美術館に行くようになりましたが、そもそも私が自発的に絵を見に行くようになったのは、大学生になってから。なので、祖母と行ったこのビュフェ展は、かなり貴重な体験……というか、不思議な思い出なのです。(なぜ行ったんだろう。)

さらに、買い物が苦手だった当時の私にしては珍しく、ミュージアムショップで1枚100円のポストカードを購入しました。(なぜ買ったんだろう。)
そのとき私が選んだのは、重く暗い雰囲気をまとうビュフェの絵の中でも、ことさらに暗い色調で描かれた、白百合の絵。(なぜそれを選んだんだろう。)


それから何年も経ち、私は美術館に足繁く通うようになり、そのうちにポストカード収集も趣味のようになって、もちろん手紙を書くのも好きなので、せっせとカードを買い集めては使うようになりました。ですが、この白百合だけは、なかなか手放せずにいました。


そして昨年、ビュフェ展で、再びこの白百合の絵と巡り会ったのです。この絵が展示されていることを知らずに行ったので、会場で見つけた瞬間、思わず息をのみました。15年ぶりくらいの再会です。

小学生のときに見た絵。
机の中に長年とっておいてあるカードの絵。
それが今、目の前にある。

変わらないな。
相変わらず、暗く美しい。

私は、ずっと手元に置いていた白百合のカードを手放す決心をしました。家に帰ってすぐそのカードに友人宛てのメッセージを書くと、切手を貼ってポストへ投函しました。さようなら、ビュフェの白百合。


つい先日のことです。郵便受けを開けた私は、あっと声を上げてしまいました。

白百合のカードがあったのです。

同じくビュフェ展に行った友人が、展覧会の感想とともに私に送ってくれたのですが……彼女はなぜ、この絵を選んだんだろう。


こうして、また、ビュフェの白百合が私の手元に戻ってきました。




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