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夏目は頭と格闘し。

「夏目先生の文章って稚拙で、面白くないんですよね」

誰にもこんなこと言われていないのに、脳内で聞こえた。手が震える。

「あ、もう書けないかも」

一瞬一瞬が文章になって、その結果自分の世界が広がっていて、降ってきたものをそのまま乗せていた。
それが否定されれば、私の世界がつまんないんだ。一生懸命文字に起こしたところで誰も読んでくれないし、面白くない。

もてはやされても、それが実力と伴っていないから、皮肉に感じる。
でも、褒められたい。我儘かもしれない。

「夏目先生、世に出てるものでも良い作品なんてないです。作家が次の作品を書くのは、その作品で満足していないからだと思います。読む人も書いた人も完璧だと思えるような作品を作ろうとして苦しまないでください。夏目先生が楽しんで書いている姿、自分の作品を読んで面白いって言ってる姿、それが夏目先生の形です。それを大きくするだけでいいんじゃないですかね」

脳内の言葉を塗り替えて、私はスマホを閉じた。また、少しずつ自分を大きくしていきたいと思う。
私はまたメモ帳を開いていた。

きっと、立ち止まりたくないんだろう。

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