見出し画像

【日曜小劇場6】人生は生きてみないとわからない。鑑定士と顔の見えない依頼人&二度結婚した女性

人生は最後の最後までわからないミステリアスなもの。だから日々生きる意味があるのだろう。
映画はそのことを教えてくれる。特にヨーロッパ映画。私の記憶にある限りのことだけど。

鑑定士と顔の見えない依頼人」のラストシーンは恋愛の全てが凝縮

10年前、天才的な美術鑑定士が姿を見せない女性からの謎めいた鑑定依頼に翻弄されていくさまを描いた恋愛ミステリー映画「鑑定士と顔の見えない依頼人」を観終わったときも、「つかみとった幸せのままに人生が幕を閉じるわけじゃない」と感じたものだ。

ちょうどその頃、1年に渡る辛い乳がん治療が終わり、新しい主治医のもとで“様子見”と次のステージに入ったからだろう。感受性がいつもより鋭くなっていたのかもしれない。ほっこれからどのように生きるのかという迷いと孤独のまっただなかだった私は、この映画のラストの強烈さが脳裏に焼き付いている

映画が教えてくれた「人生は生きてみないとわからない」の真実は、私だけでなく私の友人たちにもあてはまると思う。つきあいが長いと、いつの間にかお互いに人生の生き証人になっているため、縁というのは不思議なもの。生きていることそのものが奇跡なら、長年に渡る付き合いも大きなミラクルといえるだろう。

一見すると幸せそうなキャリアウーマン。でも精神のバランスが崩れそうなのはなぜ?

人は他人の人生の岐路に、意図せずに立ち会うこともなる。
キャリアウーマンのSさんもその一人だった。
私が15年以上前に働く女性の恋愛や婚活、結婚をテーマにした無料のルポメルマガを配信中のこと。浅草のお好み屋で、Sさんから突然離婚の相談をされたのだ。
共通の知人の舞台出演が浅草で行われ、終演後にご飯を食べるお店を探したが、浅草の夜は意外に早く閉まり、繁華街を覆う無数の明かりも徐々に消えていき、営業している店は中心地から少し離れたお好み焼き屋だった。
テーブル席で設置されている鉄板を挟んで、私とSさんは向き合って焼き続けた。ジュウジュウという音と共に豚肉やサクラエビ、紅ショウガなどと共にソースの香ばしい香りが広がっていく。ビールやレモンサワーを飲みながら、観終わった芝居のことや、お互いの近況を話していた時だった。

Sさんが突然、夫のことを語り始めたのだ。

「うちの(夫)から、離婚を切り出されてから二か月ほど経つの。その後は何も言ってこないけど、どう思う?離婚を考えたほうがいいのかな」

Sさんは私が「離婚を止めたら」と引き留めてくれるだろうと思って、夫が口にした離婚話を私に相談したという。恋愛や婚活、結婚をテーマに様々な女性たちの話を聞き取ってルポを書いていた私なら、「離婚話を止めてくれる」と思ったというのだ。
ところが私がSさんの期待に応えるどころか、
「離婚、したいならしたほうがいいんじゃない。でも離婚には慎重にした方がいいよ」とアドバイスまで添えたのだから、とても驚いたという(後日談)

浅草のお好み焼き屋で打ち明けられたのは“夫と不協和音”の事情

Sさんに出会った頃、彼女の結婚生活は幸せから遠ざかっていると感じた。
というのは、彼女と一緒に飲みに行くと途中で必ずといっていいほどテーブルやカウンターに突っ伏して寝落ちしてしまうのだ。いわゆる“飲んで潰れる”という厄介なケースですね。
そのたびに私はそのまま彼女を寝かせてあげて、終電が近くなると彼女を起こして、駅まで一緒にひたすら速足であるいたものだ。
その頃から精神的に不安定だと気づいていた。既婚者のSさんは20歳以上も年配の男性と付き合っていると酔っ払って打ち明けてくれ、その後私はその男性を紹介されたことがある。
Sさんがその男性を好きだから付き合っているのではなく、心にある彼女の人生の不協和音を和らげてもらいたいという救いの気持ちが潜んでいるように感じた。
酔っ払って潰れてしまったり、他の男性に救いを求めるような浮気をするのは
夫に対して不満があるからだ。不幸な結婚が、人生の不協和音の原因だった。

「私の夫は7歳年上でバツイチ。夫の方から猛アプローチをかけられたのよ。その当時、付き合っていた男性がいたけど、彼は仕事のことや家族のことで結婚の余裕がなかった。
私が別の男性から猛アタックされていることを両親知ってから、結婚を勧められて。最後は夫や両親に押し切られるように結婚を決めたのよ」。

自分に結婚の意志があまりなく、押し切られてゴールインしたという結婚は、よくあること。
結婚前に二人があまり話し合うこともなくゴールインすると、いろんなほころびが生じることが多く、ほころびを修正したり改善したりしながら“夫婦になっていく”というカップルもいれば、結婚してから話し合うことが大切と軌道修正した夫婦も。でもそれができなかったカップルの行く末には、別れが待ち受けていることも。

結婚後にSさんが夫に対しての不満が不爆発したのは、いくつかの理由がある。
「仕事の関係で、社会の事件や出来事に関心が高い夫が、私と一緒に、リビングで夕食中につけっぱなしのテレビに向かって、罵詈雑言を履くのよ。
夫の立場からするとテレビのニュースや情報番組に感想や批評をするのは当たり前かもしれないけど、私が一生懸命に掃除をした綺麗なリビングで、夫の好みの手料理を作って、楽しくゆったりと過ごしたいのに、テレビに向かって汚い言葉で口汚く罵るなんて、せっかくの夕食が台無し」と憤慨したという。

また夫と外食すると、夫は気に入らないことがあるとレストランの従業員に、文句を言うのだとか。
「せっかくの美味しい料理がまずくなって、ちっとも楽しくなくて、一緒に来たことを後悔してしまうの。夫は平気な顔をして食事をしているから、ますますむかむかするのよ」

夫との関係がうまくいかないSさんのイライラが積み重なって、精神のバランスを壊し始めているのではないか。
酔いつぶれるたびに、私は心配だった。

夫に離婚を言わせるためのシナリオ

話を元に戻しますね。
Sさんから離婚の気配を感じ取った私は、離婚に賛成すると
次のようなアドバイスがすらすらと出てきたのです。

「あなたの夫はかなりプライドが高いから、離婚は夫から言わせた方がいいよ」。

「例えば休日の朝、遅いブランチを食べ終わった頃に、窓から柔らかな光が包み込んだ暖かなリビングで、『ところであなた、あの話はどうなったの?』『あの話って?』『別れるとか言ったじゃないの、あの話よ』と、何気ない日常の無難な朝に、夫の口から言わせるのよ!」

Sさんはびっくりしていました。お好み焼きを食べる手を止めるほど。ソースが紙エプロンにうっすらと滲んでいます。
私は涼しい顔をして、離婚を勧める言葉を探し続けていました。。

その後、Sさんは離婚しました。私の手法通りではないけど、夫を立てて、夫から離婚を申し出るような形にしたそうです。

そしてその後再婚。
再婚相手は元夫と同じ年で、元夫からプロポーズされたときに付き合っていた男性。困っている人がいたらすぐに手を差し伸べるような、とても優しい人。

ところが神様は安易に人を幸せにしてくれない。
再婚後もSさんには、別の試練が待ち受けていました。
試練の先に見えてきたのは、幸せになるために必要なのは乗り超える力。それを支えるのが愛であるということ。
次週は再婚後のSさんの幸せにになるための奮闘ぶりを綴りますね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?