好きなものがある。

私は色んなアートが好きだ。絵画、音楽、映画、本。どれもそこまで知識はないけれど、五感を伴って経験するのが好きなのだと思う。

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この間、私はどうして、好きなものが好きなのだろう？と考えてみた。

例えば、映画が好きで、映画のおかげで、英語をマスターしてアメリカにも行った。１０代の頃から様々なジャンルの映画を見てきたけれど、私はヴィンセントギャロの作品が本当に好きだ。

「バッファロー６６」は私たちが２０歳前後の時に、ものすごく流行ったというか、映画が好きな人は絶対に語るべき作品であり、あれが好きな人はオシャレというか、なんか粋な感じがしたものだ。きっと見たことがある人もたくさんいると思う。

でも、本当に、私は、この映画が好きだ。全てが好き。

そして、ギャロ氏がその後に作った「ブラウンバニー」も大好きだ。最後の結末がどうしても衝撃で、子供は見れない展開になる。そこばかりが大きく取り上げられて、どうにもこうにもないのだけれど、そこへ行くまでの流れが、私は大好きだ。

ただ、ドライブしているだけでも写真の様に美しくて、切なくて、画そのものが大好きだ。

なぜ、ギャロの作品が好きか。それは、空気感にあるのではないかと考えが至った。

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私は、全てのアート作品で、私の中で一番大事なのは空気感であり、雰囲気であり、そのものの持っているもの。そういうもので、「この作品は好き」と決めているらしい。

ギャロの一見、ノスタルジックでシュールでナンセンスなあの感じ。あれがもう本当に、魂がきゅーーーっとなるほどに好きなのだ。ストーリーが、とかキャラクターがとか、そういうのの前に、私はもっと感覚的で、動物的に決めているような気がする。

小説でいえば、水村美苗さんの「私小説From left to right」が好きだ。

この小説は画期的で、横書きだ。英語と日本語の比率が半分くらいで、とにかくアメリカ社会にいたくなくてもいてしまった日本人の姉妹の視点から描かれている。

私はこの本が大好きで、アメリカにいる時に買って、お風呂にも何度も持ち込んだから、もうしなしなになってぼろっちくなっているけど、未だに手放せない。

これも、あのなんか寂しくて孤独で、そうだよな、アメリカって、こうだよなって思える感じが、好きなのだと思う。アメリカで生活する時の底しれない孤独感とかに同調してしまう、という以上に何かがあるのだ。

こういう流れでいえば、音楽でも同じだ。

例えば、Coldplay は初期の時の方の曲がとても暗くて、これもどことなくノスタルジックで、人生に迷いがあるというか。とても陰湿な響きがして、すごく好きだった。（興味のある方は、２０００年頃のなるべく昔のをおすすめします）

他にもまたイギリスになってしまうけれど、Radiohead。彼らは絶対に私を裏切らない。

彼らの曲は本当にインスパイアリングで、CDをつけると、私は絶対に何か書きたくなってくる。いろんなアイディアや、風景が勝手に頭の中に入ってくる気がする。

なので、子供たちがまだ元気に遊んでいる時間帯には聞かないことが鉄則だ。絶対に子供たちを無視して創作してしまいたくなるから。

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ここまで考えて、私というのは、もしかしてスッパーン！と明るくてきらきらしているものは、案外好きではないらしい。

人間的には、そうなれたらいいなって思うけれど、好きな作品というのは、ちょっと暗くて、人間として影があって、後ろ向きだけど、なんか、切なくて、こういうのもいいよねっていう空気感のものに、ぐっとくる。

だから、自分が作りたいものも、こういうちょっと、湿っていて、後ろ向きでどちらかというとネガティブな感覚を出したいと思ってしまう。ストーリーラインなんかそっちのけで、私はこういう空気感のするものを書きたいし、描きたいし、作りたくなってしまう。でもそういうのはあまり需要がないのかなあ。幅広い人には受けないのかもしれない。

読者側の気持ちに回ると、もちろんストーリーがエキサイティングで、どうなるのだろう？と次々ページをめくりたくなってしまう本の方が、消費しやすいのだと思う。

私だって実際、物語として面白いものは、読んでいる時楽しい。ただ、何度も読むかと言われれば、一度でいいと思ってしまう。けれど、空気感が好きっていう作品は、何度も何度も経験したいと思ってしまう。

私の夢はこれだ。

空気感を重視したものを物語性や小説の構造云々を無視して作って、それを出して、しかも「これってすごい分かる！」と言ってくれる人と同調したい。シェアしたい。私が、私の好きな作品を感じる時に、するのと同じように。

私が好きなワールドを作りたいと思っている。