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沖縄コザの金曜日の夜

朝ごはんに昨日買ったちんすこーんなるスコーンを食べる。ちんすこうの生地が練り込んであると聞いたが、なるほどちんすこう味のスコーンとしか言いようのない味だった。

コミュニティシアター「シネマドーナツ」で『燃えあがる女性記者たち』というインドの映画を見る。被差別カーストの女性たちが立ち上げた新聞社「カバル・ラハリヤ」の記者3名に焦点を当てたドキュメンタリー。

カバル・ラハリヤの設立は2002年。映画は新聞社の認知が広まった頃の話だが、女性の地位が低く、2014年から40名のジャーナリストが殺されているというインドで、被差別カーストの女性が新聞社を立ち上げるハードルはいかほどだったのか。

映画に出てくるインドの女性たちは目を覆いたくなるような状況に置かれているけれど、決して対岸の話ではなく、程度の違いはあれ似たようなことが日本でもたくさんある。

そもそも2023年のジェンダーギャップ指数は日本が146か国中125位で、インドは127位とほとんど変わらないという現実。それでも地道にアクションを起こすしか方法はないのであり、そうやって確実に世の中を変えつつある女性たちがいることに励まされる。

映画館というか普通のお部屋で、観客は2人。映画の前後には代表の方からの一言もあり、まさにコミュニティシアターという雰囲気。それぞれの映画をしかるべき人に見てほしいという思いが強くあるようで、「今度沖縄タイムズと琉球新報の記者さんを招いて上映会をする」と言っていた。

本当はコザを舞台にした『遠いところ』という映画も見たかったけど、今は受け止める気持ちの余裕がないと判断して断念。こういう場が近所にあったらもうちょっと映画が身近になりそう。

今日はいよいよ金曜日。コザの米兵は普段寮に住んでおり外出できるのは週末に限られているため、この辺りは金曜日と土曜日が賑わうと教わった。盛り上がるあまりガラスが割れることもあるらしいので、そんな雰囲気を遠巻きに見たい。

手始めにクラフトビール屋へ。沖縄のクラフトビールはおいしくないと評論家から言われたこともあったそうだが、それはかつてブリュワリーが地元の人が気軽に飲める価格にすべく、麦芽の代わりに安価な麦芽エキスを使った結果だという。

そういった文脈含めてのクラフトビールであり、背景にある想いやストーリーを度外視しておいしくないだなんて、安い評価だなと憤る。

そういえばオーストラリアのカンガルー島の小さなブリュワリーで草の味がするクラフトビールを飲んだことを思い出す。お世辞にも美味しいビールではなかったけど、島のサイズ感とともに記憶に残っている。それがクラフトビールの面白さだと個人的には思っている。

1杯飲んで勢いをつけようと思いきや、話の流れで2杯目を頼んでしまい、ぼちぼち次の店に行こうというタイミングでおじいさんが来て、わたしのぶんのビールも買ってくださった。

おじいさんは日本人かと思ったらハワイの人で、昔コザの米軍基地にいたらしく、今でも年数回コザを訪れるのだという。

おじいさんは日本語が話せないので英語で頑張る。わたしは正しい英語を話そうとするあまり言葉が出ないタイプの人間なので、酔っ払っている方がスムーズにコミュニケーションが取れる。

「もうすぐバレンタインだから」とチョコレートいただき、さらにもう1杯ビールをご馳走になり、おじいさんの友だちがやっているバーに連れていってもらい、ジントニックをいただく。

1人じゃ絶対入れないお店だったのでありがたかったが、他のお客さんの好奇の目線をやや感じる。アメ女のパパ活だと思われたかもしれない。

おじいさんと解散し、コンビニのトイレを借り、散策してふとカバンがないことに気づく。トイレに忘れていた。危なかった。

時刻は22時を回り、火曜日に閑散としていたエリアも賑やかになっていた。コザは米兵と日本人が遊ぶエリアの住み分けがハッキリしていて、米兵が集まるのはゲート通りだとクラフトビール屋さんで教わったので行ってみる。

日本人のエリア

ゲート通りは本当に外国人だらけ。おそらく8割が外国人で、ネオンと音楽がうるさい。今日は基地の給料日後初の金曜日らしく、「クラブに行ったらめちゃくちゃ奢ってもらえると思うよ」とクラフトビール屋さんで言われたが、もちろん行かない。わたしはうるさいところが嫌い。

今夜はビールを1杯飲んでから居酒屋でご飯を食べる予定だったが、予期せずおじいさんとはしごしてしまったので、これまで食べたものはおじいさんがくれたマカダミアナッツのみ。屋台でケサディーヤを買い、路肩で食べながら行き交う人を眺める。

「米兵は20代前半で、4年で入れ替わる」「ゆえに飲み方が若く、ショットが中心」などクラフトビール屋さんで教わったが、わたしはすでに酔っ払っており、ゲート通りを眺めた記憶は曖昧。それでも山田詠美の世界観を体験した気持ちになれたので満足。

クラフトビール屋さんによると、盛り上がるあまり割れるのはガラスではなく、グラスとのこと。最近は治安も良いそうな。


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