日記 - 2020-02｜みやまなつみ

芝犬のピリカは星になったらしい夜の海には灯台ひとり

タオル干す手を止めじっと耳すます季節先取り風鈴の音

「アップルシナモンクレープ」この呪文、世界平和の鍵になるかも

悪いことしちゃお気づかれないようにポテト1本背徳の音

「最高の朝だね」ミルクコーヒーとトースト今日は砂糖入れちゃえ

好物のカレーライスのその隣デザートプリン照らすひとすじ

無意識の駄洒落わらって書き留めて今この時を永遠にして

水玉のまど戸を叩く雨粒に気づかれぬよう息をひそめて

かりそめの区切りを無くすヘッドライト勝手に踊るハンドルなだめ

（ばばばばば）心まで刺す雨粒を振り切れ車我が家目指して

熱い湯にふれたとこから溶けだしていっしょになった夢を見ながら

「桜越え梅になったわ」「なんのこと？」「指先の色」「もうあがったら」

この時を詠もうとすればするほどに言葉が溶けて消える日もある

飛び込みの合図瞬間思い出す好きで嫌いで悲しい青を

もうそこに自分はいない苦痛たちさよなら全部プールの底に

水中の青にときめくあの頃のままなら好きでいられたのにな

「このバイト天職かもね」4月にはいなくなっちゃうくせにひどいや

昼食が終わるとやって来る眠気夜に来てくれ待ってるからさ

「なんか今日しあわせだなあ」私まだそこまでじゃない置いてかないで

窓開けた途端足から凍ってく物干し竿に並ぶ水滴

妹はまだ来ないこの車内には深夜ラジオと未来ぷかぷか

もう10分待ち続けてる15分すぎるころには消えちゃう怒り

日記