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連作短歌:あいしてる、未満、以上。


あいしてる、磨った言葉をうたにしてただひと粒の砂になるため

まだ君は言葉の虜あいしてるって言うばかり、好き

あいしてる囓った檸檬どうでもいい夢の中まで夏のすっぱさ

旅立ちのあいしてるを嘘にできない、歩く神の庭先

あいしてる照らす世界に私さえいなければもうハッピーエンド



久しぶりに連作っぽいものを編みました。
あいしてる。
言ったらまぁ平板というか普通の言葉はあるんですがこの5文字、とても扱いにくい5文字ですよね。その扱いにくさ、クセ強なくせに真っ直ぐすぎるこの言葉をどうにか使いたくって、単語縛りで作ってみたのでした。

思えば「あいしてる」って誰かに面と向かって言ったことないな。
何かについて語る時、たとえば本とか映画とか、いわゆる「推し」に対して「あいしてる」っていうときはあるけど、ある特定の人間に対してこの言葉を使ったことは、今までの人生の中には、たぶんない。使われたことも、ないな、うん。
だから少し気恥ずかしくもあって。
そうなのだ。
気軽に言えないくせに逆に自ら言葉にすると、途端に陳腐になってしまう。マジとジョークの間にグランドキャニオンみたいな隙間が出来上がるんだ。その隙間に詩が見えればいいのだけど、あー!もう難しいですねえ!


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