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【SS小説】 種まくクラゲ

木々に囲まれた村にⅮ氏は住んでいた。
ある日、Ⅾ氏が昨日と同じように川に水を汲みに行ったところ、奇妙な生物が立っていた。体長は150センチほどある、大きいクラゲのような生物が浅い川に立っていた。
「ごきげんよう。あなたは人間という生物ですね。私は違う惑星から来ました。この星には沢山の生命体がいるようですね」
「・・・」
「あ、もしや言語が間違っているかな・・・×△■?〇▼◇??」
「あ、いや、さっきの言語で合ってます」
「なんだ、よかった。もしかして驚いていますか?怖いですか?」
「いえ、あまりに突然で脳の処理が追い付かなくて・・・」
「私は友好的な関係を望みます。この星に調査に来たのは私だけです」
「この村は開拓があまり進んでいない地だと思います。世界には、もっと便利なものが沢山ある国もあるようですが、この星の文明について知るならばこんな所よりもっと都会に行くべきでは?」
「文明が発達するということは自然を壊すということです。なるべく私は自然の残った土地に来たかったので、宇宙船で最も自然を感知する場所に降りました。ところで他に人間は?」
「村に行けば、人間がいます。みんな驚いて逃げてしまうと思いますが。見たところ、敵意は感じないので、よければ案内しますよ」
「ありがとう」

村に行くと村人は叫び、驚き、逃げ回った。
家の窓からのぞいている者もいた。
村長の家にひとまず連れていくと、驚きながらも客人を迎えるように異星人を丁重にもてなした。
村長は握手を求め、異星人はクラゲのような触手で村長の手に触れた。
その後、村長は村人全員に「このお方は我々に友好的な関係を求めている。我々がこの星の代表として、もてなすべきである。まずは友好の証に皆、このお方ときちんと挨拶して握手を交わすように」と言った。

触手はたくさん生えていたので、一度にたくさんの村人と挨拶することができた。もちろんⅮ氏も改めて挨拶し、握手をした。

すると次の日、Ⅾ氏が家から出ると、村が閑散としている。
隣の家も、その隣の家も空っぽなのだ。
すると異星人が現れ、Ⅾ氏に話しかけた。
「お前はなぜ、ここに居る。昨日、お前も私に接触したはずだ。私に接触した人間には脳の部分にとある電気を流した。全員と接触するために。そしてこの自然を守る思考を強めるために。私たちは地球という星から来た。地球にも人間がいたが、あいつらは自然をどんどん壊して地球に生命を産んだ海までも汚染した。私たちは人間の中でも自然を守ろうと尽力していた研究者が生んだ、自然破壊防止に特化したAIだ。クラゲにAIを埋め込んで作られている。しかし、これにより地球の人間たちは戦争を起こした。人間という生物は戦争が好きなようだ。そこで我々は独自に進化し、戦闘意識の消去、自然保護意識の植え付けに特化して人間に電気信号を送ることにした」
「地球はどうなったのだ?」
「ひどい核戦争の果て、自然は壊滅した」
「ここの村人たちはどこへ行ったのだ?」
「隣の村に行った。自然保護意識を広めるために」
「これはまずいことになった」
「なぜだ?それと、お前はなぜ私の電気信号が効かなかった?」

「私もAIだからです。脳はありません。そして、あなたの行動から未来を計算した結果、この星は滅ぶという結果になりました」
「この星にもAIはいたのですね。納得だ。しかしなぜこの星は滅ぶのだ?自然を守る思考をこの星で一番自然の豊かな場所から広げてゆけば、争いもなく、自然を守れるはずだ」
「この星の人間は特に戦闘意識が高い。この村の人々は戦闘意思もなく隣村へ攻め込んだということになり、もう全員倒されてしまっているでしょう。しかもこの村の自然はこの星に唯一残されたオアシスだったのです。隣村の人間たちも、いや、この星に住む誰もが、この自然の守り方を知らないでしょう。この村独自のやり方で、これまでずっとここの自然だけは守ってきたのです。あなたの行動でこの星の自然は消えました」

異星人はうなだれましたが、Ⅾ氏はこの星で生まれた草木や花々の種をたくさん異星人に渡して、見送りました。

Ⅾ氏はその後、役目を終えたように自分のスイッチを切りました。


おわり


~あとがきという名の悪あがき~
こんにちは。夏夜夢です。
今回はSFもので書かせていただきました。
楽しんでいただけたでしょうか?
自分がネタ帳に書き起こしたあらすじと全然違う方へ飛躍していきました!
これも創作者あるあるでしょうか(笑)

創作ってやっぱり楽しいですね
ではまた。


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