未来の私にも残したい、スポーツが私にくれたもの

スポーツは私の人生において、相当に大きな比重を占めてきた。

体操、乗馬、テニス、バスケ、陸上、バレーボール、フラッグフットボール、クロスカントリー、アルティメットフリスビー、ホッケー、フットサル、トランポリン、ソフトボール、、、

幼少期から様々なスポーツと触れる機会があり、楽しい思い出は無数にある。

スポーツは私にとって純粋な喜びであると同時に、人生に欠かせないコミュニケーションツールだ。

私は中学高校を親の仕事の都合でアメリカで過ごしているのだが、英語が話せない12歳が、アメリカの片田舎で何とか楽しく生き抜くことが出来たのは、スポーツの力に他ならない。

言葉が上手く話せなくとも、仲間と呼べる人間関係を築けたのは、部活でスポーツという非言語のコミュニケーション方法を通じてである。

日本に帰国して進学した大学でもそうだ。

中高6年間をアメリカで過ごし、周りからすればやや風変わりな日本人になっていたらしい私が、生涯の友人を得たのは、体育会で苦楽を乗り越える経験を共にしたからである。

そして今。

仕事でシンガポールに駐在しており、プライベートでは、ホッケーやソフトボールやフットサルを楽しみながら、様々な国籍や年代の人と知り合い、通じ合い、関係性を築いている。

このように、私の人生と切っても切れない、沢山の体験、経験、感情、友情、絆を与えてくれたスポーツだが、ここ数年、憂慮していることがある。

スポーツを楽しむ輪の中に、同年代以上の女性が減ってきたことだ。

スポーツの輪の中で私が唯一の女性であったり、他の参加者が全員自分より10以上年下であること自体は、私の楽しみを奪うものではない。

ただ、少し不安になる。

私にとって、純粋な喜びであるスポーツに参加できなくなる日がいつか来るのだろうかと。

だって、同年代以上の女性が参加できないのは、何か障壁があるからだ。

そうでなければ、全国の部活少女はどこへ消えた?という話である。

(グラデーションはあれど)世の中に半分ずつくらいいるはずの男女の、女性だけがスポーツコミュニティから消えるのは理由があるはずだ。

私の同年代は妊娠出産の多い年代であることは間違いなく、それが女性スポーツ人口を減らしている要因の一つではあるだろう。

でも、その後は?

私の父は60を過ぎているが、今も仲間とサッカーを続けている。

また、大学の部活はOBによるシニアチームがあり、参加者は70代の方もいる。全国でシニア大会が開催され、チームで遠征をしている(2020年以前)。

でも私は未だかつて、60代の女性チームや女性のシニア大会は見たことがない。(私の視野が狭いのだろうか?)

純粋な楽しさ。人との繋がり。スポーツが私にくれたものは計り知れない。だからこそ、未来の私もそれを享受していて欲しい。

もし、ちょっとよく分からないと思う場合は、別のことに置き換えて考えてみて欲しい。

30代以上の女性は殆ど音楽を聞かないとか、本を読まないとか、絵を描かないとか言われたら違和感ではないだろうか。

興味が別のことに移ったとか、生活の中で優先順位が下がったとか、それが本人の選択であるなら何も問題はないのだが、私は構造的なものではないかと疑っている。

スポーツすることを選ばないのは真に本人の選択ではなく、何となく周りから押し付けられているのではないかと。

ただの会社員である私にこれを精査するリソースはあまり無いながら、「女性 スポーツ」でググってみたところ、女性の運動頻度について以下の記事が出てきた。

《スポーツ栄養協会》
https://sndj-web.jp/news/000618.php

《スポーツ庁》
https://sports.go.jp/tag/life/post-28.html

スポーツ栄養協会の記事に掲載されているデータ(2019年度スポーツ庁調査)によれば、週に1回以上運動をする男性は55.8%、女性は51.0%。

女性の方が低いものの、その差は私の肌感覚よりだいぶ小さい。

運動をする理由は「健康のため」、運動をしない(頻度を増やせない)理由は「仕事や家事が忙しい」が男女ともにトップ。そこに違いはない。

女性のスポーツ人口が20代後半以降、急激に減るなんて、私の思い違いなのだろうか?

しかし、記事を読み進め、運動の種類の内訳を見て、もしかしたら女性は運動そのものから遠ざかっているのではなく、私が主に参加している球技などの「チームスポーツ」の場から消えているのではないかと思った。

ウォーキングやヨガ、体操などの項目は男性と同等かそれ以上をマークしているからだ。

この理由について考えた時、女性が家のこと(家事、育児)を担っているケースが多いからではないかと想像した。

一般的な会社員(男性)について考えた場合、基本的には平日週5日勤務で、週末が休みだ。

家族との時間も勿論あるだろうけども、「休みの日」に自分の趣味(スポーツ)に時間を割いても良いだろうというメンタリティは持ちやすい気がする。

一方、女性が主婦、若しくは共働きだけど家のことはメインで担っているという場合、家事は週7日、休みのない業務だ。

子供がいた場合は子供の面倒を見たり、子供の予定のサポートをしたり(送り迎えなど)と、学校や保育園がやっていない週末はむしろフルスロットルで働くことになる。母親は子供を優先すべきという、世間の無言のプレッシャーもある。

そうすると、週末に自分の趣味としてスポーツをする時間を確保することは難しく、あくまで健康維持の為にスキマ時間でできるウォーキングか、近所にあり、且つ自分の都合で休むことも罪悪感の少ないヨガなどの習い事へ行き着くのではないだろうか。

チームスポーツは有志で集まって自分たちで場所を予約することが多いので、場所は必ずしも自宅の近くではないし、場合によっては開催時間が定まっていないし、急遽不参加となると他の参加者に迷惑をかけることもあり得る。

家族に加えてチームの予定も考慮して動かなくてはいけないとなると、その輪に入るのはなかなか億劫になるのも想像がつく。

また、スポーツ庁のコラムには女性が運動を躊躇する理由として、「化粧直しをするのが嫌」「汗でメイクが崩れるのを見られたくない」「すっぴんになることへの抵抗がある」といった記載があった。

個人的には想像もしていなかった観点なのだが(私は日々ほとんど化粧をせずに過ごすので)、確かにこういった気持ちを持つ女性は少なくないというか、多いと思う。

女性は化粧をしているべきで、していないのはマナーがなっていないとか、女として終わってるとか、意味のないネガティブな世の声はまだまだ強い。

前述データの運動をしない(頻度を増やせない)理由の第2位には「面倒くさいから」がランキングインしているのだが、男性24.7%、女性30.3%と女性の方が割合が高い。

この差は、もしかしたら「汗をかいて化粧が崩れる」「化粧直しをしないといけない」という要素が表れているのかもしれない。

以上は単なる私の想像及び仮説でしかなく、勿論、本人がヨガやウォーキングがしたいなら何の問題もないし、本人がスポーツの楽しさよりも化粧をしてキマってる自分を優先したいなら異を唱えるつもりは全く無い。

ただ仮に、本当はチームスポーツに参加するのが楽しいのに、世の中の理不尽なプレッシャーによってそれを選ばされているならば、私は全力で、気にせずやろうよ!と言いたい。

そんなことをずっと考えていて、コロナウィルスでスポーツをする機会がぐっと減った昨年、スポーツの思い出や話題に特化したnoteを書き始めた。

30を過ぎたってスポーツは楽しいし、新しいことを始めても良いし、下手だって楽しめるコミュニティもある。(そして、いつも完璧に化粧をせず、Tシャツ短パンで公共交通機関に乗ることがあっても良い。)

そんな個人的な体験を共有して、誰かがスポーツの楽しさを思い出す、ちょっとしたきっかけになったら良いなと思いながら書いている。

少し話は変わるが、今シンガポールで所属しているホッケーチームは、シンガポール最高峰リーグであるPremier Leagueに参加しており、競技志向のあるチームだが、チームメイトは13歳から43歳と幅広い。(国籍も多様。日本人は私1人。)

最高峰といっても、シンガポールは小さな国なので、レベルは関東大学学生リーグ上位くらいの感覚ではあるが、それでもそれなりのレベルである。ちなみに2019年は私達のチームが優勝した。

チームに40前後のチームメイトは4人いるのだが、みんな試合ではがっつりスタメンに入っていて、めちゃくちゃ活躍している。たまたま全員、3児の母でもある。そして平日は仕事もしている。

このメンバーを見ていると私は、そんな未来もあり得るんだ、と希望が湧いてくる。

自分で何かをしてみたいと思っても、「そんなことをしている人は誰もいない」と言うのは、やっぱりなかなかハードルが高いものである。

「こういう未来の選択肢がある」ことを示してくれる存在というのはかくも有難いものかと、頼もしいチームメイト達を見ていて思う。

スポーツの純粋な楽しさや、スポーツが育んでくれる人との繋がりは、私にとって手放すことのできない人生の価値である。

未来の私や女性たちが、それを受け取り続ける為に。

私はこれからも純粋にスポーツを楽しみ続けるし、それを微力ながら発信し、市井の人として誰かの「未来の選択肢」であり続けたいと思う。