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2020年10月に読んだ書籍一覧📚

10月はこちらの4冊。


📚Anker 爆発的成長を続ける 新時代のメーカー[松村 太郎

AnkerジャパンCOOの猿渡さんとMarkezine Day 2020でご一緒した際、献本いただいたので拝読させていただきました。

もちろんAnkerというブランドは知っていたものの、充電器メーカーという情報以上は持ち合わせていませんでしたが、登壇でご一緒しかつ本書を読んだことによって、Ankerという企業を深く知ったと同時に、日本市場だけでも年間100億の売上となった理由を知ることができました。

3-Lowというコモディティ化したレッドオーシャンなモバイルバッテリー市場において、どのようにして純正品とノーブランド品の中間である『第3の選択肢』というブランドを確立し顧客を獲得していったのか。

3-Lowとは?
Low Passion(消極的な購買姿勢)
Low Recurring Rate(低いリピーター率)
Low Average Selling Price(低い平均販売単価)

そこには、メーカーとして基本とも言うべき商品に対する真摯な姿勢と、顧客体験をマッチさせた周到な販売戦略がキーワードとなっています。

それは販売チャネルをAmazonに一本化しつつ、ソフトウェア的なアプローチ(スピード重視で市場に投入→顧客のフィードバックを得ながらさらに改善)で商品を開発、そして『神サポート』と呼ばれる徹底した顧客サポートによって顧客の意見を吸い上げつつ商品に反映、Amazon内で好レビューを大量に獲得して各カテゴリでランキングの1位を取る、というものでした。

ただ、この販売戦略を他社が真似ることは容易にはできず、特に20万件という問い合わせに対して、自社内で設けられた約17人からなるサポートで対応しているようで、計算すると1日1人あたり約32件も対応する計算となります。

また、商品に付属している『ハッピーカード』や公式サイトにFAQが設置されていないこと等、ここまで徹底的に顧客目線を貫いているメーカーもそう多くはないと思います。

ハッピーカードについてはこちらの記事をご参照ください↓

やはり、メーカーとしてのモノづくりというよりも、顧客の課題解決が上位概念にありその解決策としてモノづくりがある、というスタンスがメーカーとして目指すべき姿なのかもしれません。



📚仮想空間シフト[尾原 和啓山口 周

本書のキーワードである「仮想空間シフト」とは、いわゆるアフターデジタル的な意味合いで使われており、まさにここを深堀って言語化することを目的に共著で書かれた本です。

もはや業界ではおなじみなお二人で、内容的にはかなり概念的になりがちですが、本文は全て二人の掛け合いで書かれているため、とても読みやすくなっています。

アフターデジタルな世界は中国を中心に各国でその兆候が見えてきていますが、日本ではまだほんのわずかです。その中で、コロナによる進化の強制によって、その流れに乗って自らを変化させていくのか、ひたすら以前の日常への回復を待つのか。山口さんが書かれた「おわりに」をまずは読むと、改めて本書に対するお二人の熱量が感じ取れると思います。

デジタル(仮想空間)へのシフトを進めるためには段階があり、

① 仕事の仕方を変えていく
②(仕事が変わると)暮らしが変わる
③(暮らしが変わると)社会が変わる
④(社会が変わると)人生が変わる
⑤(人生が変わると)国と行政が変わる

という風に、まずは仕事が変わっていく、変えていくことが始まりとして、本書の章立てもその流れで作られています。

また、仕事一つ取っても、会議や業務という物理的なデジタルシフトだけでなく、モチベーションや価値観という部分まで変わっていくことが表面化し、変わる人と変わらない人とが二極化してくるので、どうやってそのような人材を集められるかが今後の企業には求められる、と書かれています。

特に本書で重要だと感じたのは、「仮想空間で解像度を上げる四象限」と題して縦軸にみんなでやる仕事か、一人でやる仕事か、横軸に目的が決まっているか、いないか、という図です。

これはどこがNGでどこがOKか、というものではなく、どれもお互いに干渉し合うもので、ただ漠然と仕事をするのではなく、今どの象限の活動をしているのか、またどこが足りないのかを強く意識するための図になっており、ライスワークとライフワーク、放電のための仕事と充電のための仕事、のようにお二人は言語化しています。



📚「仕事ができる」とはどういうことか?[楠木 建山口 周

楠木さんと山口さん、私はお二人のファンですがまさにそのお二人が共著で書かれたセンスについての本です。

こちらの動画を拝見したことがこの本を読んだきっかけでした。

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山口さん的には「サイエンス対アート」、楠木さん的には「スキル対センス」というように言語化・数値化できるものとできないものの双璧として語られるものですが、時代がだんだんと"役に立つこと"から"意味があること"に価値がシフトしている中で、改めてアート・センスについて考えていくことを主題としています。

スキルは育てることができるが、センスはできない。つまり外圧によって変化させることはできず、自身で"磨く"ことで結果的に育つ。」と楠木さんは表現しており、まさにこの本の中でも「こうすればセンスが磨ける!」というようなことは一切書かれていません。(それはもはやスキルになってしまう)

とはいえ、なんとか二人で「センスとは何か?」の輪郭を捉えるために、様々な議論を繰り広げており、本文は全て二人の会話形式のため、とても平易で読みやすくなっています。

本書は4章構成で綺麗に起承転結に分かれています。いつものパターンだと、「この章から読むのがおススメ」となりますが、そのようなスキル的な読み方ではなく、1章からじっくり二人の世界観に浸ることをおススメします。

動画内でも楠木さんが話をされていますが、センスを磨く方法の1つに、「これは!」と思う仕事ができる人を見つけてその人を「視る」こと。

これが一番手っ取り早いセンスの錬成法であり、それを方法化したものが修行、(もう少しソフトにすると)カバン持ちや書生と言われているもの、ということで、言語化・数値化できないものであるからこそ、武道の守破離のようにまずは徹底的に視て真似て自身に取り込んでいき、そこから自分なりの強みを作っていくことだと、理解しました。



📚武器としての「資本論」[白井 聡

今まで読んだ中でTOP3に入るくらい難しい本でした。
"本書を理解すること"ではなく、解説対象である"資本論自体を理解すること"がやはり難しいです。

入門書という立ち位置の本書でさえ何度も読み返す必要がありますが、まさにこの本をきっかけとして資本論を読んでもらいたいという著者の想いの通り原著に触れてみたくなりました。

資本主義的生産様式の支配的である社会の富は、『巨大なる商品集積』として現われ、個々の商品はこの富の成素形態として現われる。したがって、われわれの研究は商品の分析をもって始まる。

突然ですが、これが原著の本文の書き出しだそうで、もはや日本語ですら理解しがたい…。

この一文だけでもわかるように、随所に原著を引用していますが、そのどれもがこんなテイストなので、原著を読むにしても解説書とセットでないと…。(「包摂」というキーワードも出てくるのですが、生まれて初めてこんな日本語があることを知りましたよ…。)

この分かりにくさは、物事を本質的に捉えるために極端な概念的表現をしているからですね。原著はまだ読んでいないのでわかりませんが、本書では、「これはつまりこういうこと」みたいに具体的な表現に落とし込んでくれているので手触り感のある理解ができるようになります。(それでも難しいのですが)

本書によって、資本・商品・労働・価値・富…など、言葉としては理解しているものの、その本質・実態を知るきっかけになると思いますし、もっと言うと、それらを生み出し、扱っている「(不完全な)人間そのものの実態」というものが見えてきて、極論すると「資本を知ること=人間を知ること」だと私は理解しました。




▶過去に読んだ記事等はこちら


以上。


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