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吾輩は猫舌である

吾輩は猫舌である。好きな飲み物はスタバのチョコチップ&チョコソース入りバニラクリームフラペチーノだ。

いつから猫舌なのか見当がつかぬ。物心ついた時には既に猫舌で、幼稚園の芋掘り大会にて振舞われた豚汁を「あっちぃ」と言いながら必死の形相で食べていたことは記憶している。
後に父も猫舌であることを知った。あぁもうこれは血筋だ、と幼心で悟ったのは言うまでもない。

吾輩は炭酸飲料が飲めぬ。ジュースも得意ではない。
したがって飲み物の選択肢が限られてしまうことは明らかである。
今まで会う人会う人にその事実を告げるたび、大抵「今までどうやって生きてきたの!?」と驚かれ、あるいは「人生損してる」とも言われる。気持ちはわかる。ただ、損してる分は他のところで補っているのでほっといてほしいというのが本心である。
いずれ飲めるようになる大器晩成型かもしれないし、またはある日突然覚醒するかもしれない。

猫舌&炭酸が苦手、という点を踏まえて吾輩が今までどうやって生きてきたかというと、主に水とお茶とココアを好んで生きてきた。我ながら実に健康的な子供であった。今でもその主軸は変わらずにいる。もちろんホットもアイスも両方いけるが、ホットココアも熱いお茶も時間が経って冷めてしまえばおいしいとは言えなくなる。よってどちらかといえば最初からおいしく飲めるアイス派であった。今までは。

今季、突然変異ともいえる大きな出来事が起こった。
コーヒーが美味しいと思えるようになったのだ。しかもブラックを。ホットを。

何故なのか、いつからなのか、きっかけすらわからぬ。
気がついた時にはその美味しさに目覚め、午後3時になると職場の給湯室に向かい、底が薄く隠れるほどのインスタントコーヒーの粉を、ちょっと頑張った日にはいいとこのドリップコーヒーをマグカップに入れて熱々の湯を注ぐのが毎日の習慣になっていた。


と、ここでひとつの問題が浮かび上がる。
吾輩は猫舌である。

お茶もココアもアイス派だが、どうもアイスココアは受け入れられずにいた。
クリームを入れるくらいなら、いっそのこと牛乳を入れてアイスカフェオレにしてくれと思うほどに。

コーヒーもお茶とココアと同様、冷めてしまえばおいしいとは言えなくなる。
だがコーヒーはホットだからおいしい。
おいしく飲むならばアイスコーヒーではなく最初からホットコーヒーがいい!
まさかそんな葛藤が生まれるなど予想だにしていなかった。


「そんなもの、丁度いい温度になるまで少し時間を置けばいいだけの話じゃないか」


ま、言ってしまえばそれまでなのだが。


しかし丁度いいタイミングを逃すとおいしさが逃げてしまう。作業に没頭しているとそれはあっという間に過ぎ去ってしまうのだ。
そして逃したタイミングを惜しみながらカップにわずかに残る冷めたコーヒーをぐっと飲み干し、なんとも言えない表情で仕事に戻るのが日々のオチである。


おいしく飲めるタイミングを逃すまいとカップに口をつけては、「あっちぃ」と密かに呟くのであった。



吾輩は猫舌である。今日もコーヒーがおいしい。

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