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登利平の鳥めし

祖父が死んだ時は家で通夜から葬式までやった。襖を取り外し畳の部屋へ大勢並べるように座布団を敷きつめた。
派手な袈裟を着た坊さんを呼び経を上げた。
もうあんな大掛かりな葬式をやる家はないだろう。
今は斎場ですべて済ませる時代だ。
父母は部落で死者がでると組内くみうちだと嫌でも手伝いに行かざるおえない。
母は気疲れするとよく口説いていた。
男は葬儀を取り仕切り、女は料理に取りかかる。煮しめとうどんは必ず出す。
うどんをだすのは上州の特色だろうか。
きんぴらと青菜を茹でたものを添える。
しかし、うちの組内は不思議な事にカレーを出す決まりがあったらしい。
母がいうにはまずいので仕出し弁当を頼んだ方がはるかにましなカレーだそうだ。
気の合わない女衆ががやがや言いながら作るのだからまずさが倍増するのではないだろうか。ちょっとお金をかければ登利平とりへいの鳥めしを人数分頼んだ方がうまいし、手間がはぶけるのにケチな家は何が何でもカレーなんだそうだ。
母は畑から芋を掘るところからやらされた!と疲れ果てて手伝いから帰って来たことがあった。
そして葬式手伝いでカレーなんか馬鹿じゃねぇのかと怒っていた。
やはりカレーはまずかったらしい。
そんな恨み?があったので父が死んだ時はうちは登利平の鳥めしを頼んだ。
足りないといけないので余分に注文したようでかなり余った。
勿体ないので私は3食鳥めしを食べた。
もう一生分の鳥めしを食べた気分だった。
取りの鳥めしは上毛名物のひとつです。
群馬にいらしたらぜひおためしを。

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