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デザインのつくりかた(2023年の年賀状製作)

あけましておめでとうございます。デザイナーの千星(ちぼし)です。
NECKTIE design officeという名前でGRAPHIC / WEB / PRODUCTと領域をはみだしてデザインをしています。

2023年の年賀状デザインの製作過程をまとめてみました。
過去の年賀状はこんな感じで

午年に金に塗装した蹄鉄を送ったり
アクリルをレーザーカッターで切ったり
薄紙をレーザーカッターで梅型に切り抜いたり
酉年に金のたまごを送ったり
真鍮で知恵の輪をつくったり
シャーレに言葉を詰めたり
2020年はシールを使ったデザイン
2021年は牛肉が印刷された紙を食品トレイに封入
2022はいろいろな紙が重なり合うデザイン

といった形でいろいろ製作してきました。近年のものはその製作過程もnoteに書かせていただいてます。

そして今年2023年は

こんな「フワフワうさぎの福笑い」というデザインです。
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そもそも、なんで毎年変な年賀状なのか

年賀状のデザインは過去のものを見てもらえればなんとなくわかるかと思いますが、毎年「半立体+DIY」というテーマで製作しています。
一般的に年賀状というと、はがきサイズの紙にグラフィックが印刷されたものがほとんどですが、自分自身がグラフィックとプロダクトのデザイナーなので、その両方の仕事の領域が見えるようなつくりにしています。単純に他とは違うと目立って面白がってもらえるという部分もあります。

また、小〜中ロットの実験としての意味合いもあります。実際の仕事でも大ロットであれば、印刷会社、加工会社さんに印刷や型抜きをお願いすることになりますが、小〜中ロットの場合、型代等がネックで印刷会社さんにお願いできないといったことも多いです。
そこで「DIYでなんとかうまく魅せる」という手法が効いてきます。ただ10個くらいまでなら色んな可能性があるけれど、100個近くになると話が違ってきます。あまりに手作業の工程が多すぎて時間がかかり過ぎてしまったり、クォリティにムラがあるなど、全部をきれいに仕上がるためには、手法や仕組みなども考えないといけません。もちろん価格のことも配慮しないといけません。なので「ちょうどいい塩梅の作業工程でできるデザイン」を探っていくことになります。
クライアントさんがいる仕事だとなかなか失敗はできないので、自分の年賀状で毎年そのあたりの実験をいろいろと続けているという感じです。

2023年の年賀状を考える

2023年はうさぎ年ということなので、うさぎの毛にみえそうな「綿」で何かできないか探りました。綿は過去にも何度か使っていて「カサ増しできて金額が安い」万能選手なんで、とても使い勝手がいい素材です。で、みつけたのが

こんな感じのピンク色の綿。あんまり見たことないので、このあたりを起点にデザインをスタート。はじめは「透明のOPP袋をうさぎの耳型にして、綿を詰めたら面白いかなー」と思うも、オリジナル型のOPP袋がとんでもないプライスで断念。

年賀状の送付はヤマト運輸さんのDM便になるので薄さも20mm以内に抑えないといけない。その薄さで何か良いものはないかなとリサーチすると

こんなハンカチ用の紙箱を発見。これなら薄さもクリアできる。
ただ白の紙箱のままだと新年感がでないので何か印刷したいけれど、既に型抜きされているのでこの状態からの印刷は難しい。さぁ、どうしたものかと考える。

紙だからといって印刷以外もできるんじゃ?

よくよく考えると紙も数ある素材のひとつなので、印刷以外にも着色・華やかにする方法はある。外注せずに自分でてきる方法はないかなぁと考えていた時に「普通にラッカースプレーでもで着色できるのでは?」と思いつく。あんまり紙にスプレーって聞かないし(量産品の場合は印刷した方が早いし安いからかな?)。
で早速試しにやってみる。さらにうさぎ型に手でカットして、綿を入れてみると、

あ、案外いけるかも。ということであとは作業だー!

まずはカット

早速レーザーカッターで紙箱の蓋部分をうさぎ型にカット

動画でみるとこんな感じ。

想定していたより、カットの時間が早いのでサクサク進める。

切り立てホヤホヤ。ほぼレーザーの焦げもなくスムーズに切れた。

抜いたらこんな感じ。抜いたパーツも何かに使えないかなぁ。

全部抜いたぞ!

次は塗装だ!

で、切った蓋部を今度はラッカースプレーで塗装。

ダンボールで簡易塗装ブースをつくって、

おりゃー

ひたすらプシューしていく。

活版印刷用に購入したプリントゴッコのカードスタンドが大活躍!

端が白いのは、最終的に折込まれて内側に入るのでちゃんと塗ってない。逆にこれがあることで見る人が見たら「これスプレーで塗装した?」というのがわかる。

スプレー完了するとダンボールが金ピカ!ダンボールが金の茶室(ミニチュア)みたいになったぞ。

今度は組み立てだ

塗装が終われば次は組み立て。

今年から小学2年生の息子もお手伝いで参戦。家族総出で働くのじゃ。個人商店の家に生まれてしまった宿命じや(とはいえ本人はなんか楽しそう)。

頑張れ小学2年生!

塗料の定着があまりよくないからか結構手が汚れる。手袋も金ピカ。

並行して下箱も組み立て。

で、組み立ててみてはじめてわかったんですが、紙が片面コートボールなので、内側がグレーなんです。もともとハンカチ用なのでハンカチが入ってしまえば底面はわからなくなるからなんでしょうが、綿の場合は結構底のグレーが透けて見えて目立ってしまう。
そこで考えたのが、もともとこの箱はハンカチ用として販売されているものなので、こういった

下箱に被せるパーツ(左)がワンセットになっている。

本来はこういった形でハンカチを固定するのに使われて、抜かれた左側のパーツは捨てられる。
今回は逆にその捨てられるはずのパーツを使って

こんな形で底面のグレーを簡易的に隠す。これならパーツも捨てなくていい。こういう解決方法は実際に手を動かしてみないとわからないよなぁ、と悦に浸る。こういう現場の工夫って大好き。

結局ピンクの綿は使わずに、うさぎっぽい白の綿で製作しました。

綿を詰めて、金塗装した蓋をセット!

目玉を入れていくぞ

つぎは目玉。目玉のパーツはフラワーアレンジで使われるらしい

こんな赤いガラス玉をネットで購入。ほんとネットなんでもあるわ。この色の、このサイズっていうのがビタッと見つかる。すごい。色やパッケージを見る限りクリスマス用かな。

イクラ

取り出しやすいようにジップロックコンテナにいれたら、もう完全にイクラです。ツヤツヤでプリプリ(実際にはカチカチ)なのでご飯に乗せて醤油をかけたらかなり美味しそう。

イクラをざっくり目の位置に設置。とはいえ配送中に移動しちゃうだろうな、というのは想定済み。そこは福笑いなので。

トレーシングペーパーを巻く。今はトレーシングペーパーもオンデマンドで印刷してくれるからほんとうにすごい。小ロットでもできることが増えた。

裏面に金色のシールで留める。

OPP袋に入れて

封緘。塗装もスプレーだしハンドメイド感が強いけどOPP袋に入れると途端になぜか製品感が出てくる。業界ではこの現象を「OPPマジック」と言うとか言わないとか。

あとはヤマト運輸さん、お願いします!

トライにはエラーがつきもの

とはいえ、実験的な作業でもあったので、トラブルもありました。

当初ラッカースプレーを「ピカピカの方がめでたい」という理由でメタリックのスプレーを選択していたけど、メタリックの塗装がめっちゃムズイ! 薄く薄くと意識しながら塗装しても結構ダマになって垂れてくる。ある程度は塗装ミスをみこして多めに作っていたけれど想定以上にB品が出る、、、「こんなことなら初めから片面金の紙をレーザーでうさぎの形と一緒に箱の形で抜いた方が良かったのでは?」という完全に振り出しに戻されるような思考が湧き出てくる、、、レーザーカットだと抜きだけしかできないから、折罫はつけられないしなぁ、と言い訳気味に邪念を払い去る。ぐむむ。
よい子のみんなは、くれぐれもメタリック塗装には気をつけような!(結局途中からノーマルの金色スプレーに切り替えました)

できました!

ということで完成がこちら。

目の位置を動かすと、ちがった表情に
うさぎの福笑い
トレペをかぶせるとこれくらいの見え方に

受け取った人たちに遊んもらえたら嬉しいなぁ。
今後も良いデザインができるよう精進していきます!!


サポートは特に結構ですので、より多くの方に読んでいただけるようシェア等していただけるとうれしいです。