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初めての出産

先日初めての出産を経験した。

妊娠するまでは仕事が忙しく、異動も重なって苦労した。思い切って産婦人科に通い、待ちに待って授かった子どもだった。

妊活中や妊娠中に思ったこともたくさんあるけれど、今回は出産したときに思ったことを、自分のために書きたい。ちょっと長くなると思う。

目次
⒈陣痛。千差万別のお産
⒉分娩。自分一人の身体へ
⒊赤ちゃんとの対面。独立した一人の命
⒋入院生活。「母」になってゆく身体

⒈陣痛。千差万別のお産

出産に伴い里帰りしてからは、安産のため毎日たくさん歩いた。運動すれば早めに産まれるだろうと思い込んでいたけど、予定日をとうとう4日ほど過ぎてから、ようやく陣痛らしきものが始まった。

前駆陣痛と呼ばれる不規則な陣痛で、病院に行くも、本陣痛ではないため一旦帰宅になった。不規則な痛みが1日中続き、痛みがより強くなり、4,5分間隔になった早朝、病院へ向かった。

診察してもらうと、子宮口は3cmほど開いていた。分娩が始まるのは10cm開いてからなので、まだこの痛みが続くのかと思うと途方に暮れそうだったが、診察直後に破水した。

破水になると即入院なので、それからは陣痛室でひたすら陣痛と向き合って過ごした。
夫と母がついていてくれ、身体をさすってもらった。

陣痛との向き合い方は、正直最後までよく分からなかった。

リラックスした方がいいと言われるのだけど、最後の方は赤ちゃんが出てきそうで。でもまだ子宮口が全開じゃないと言われていたため、"いきみ"はしないようにするものの、力を抜いたら出てきそうで、腹筋に力が入る。

お産の始まり方、陣痛の痛み方、お産の進み方。お産を巡る経験は千差万別で、実母とでさえもまるっきり違う。まるで人生のよう。

病院やネットで色んな情報は得られるけど、同じ経験はひとつもなく、自分に起こったことをその都度受け入れて、対応していく。

「生きることは、結果ではなくプロセスの連続」と言うけれど、そういうことなのかもしれない。


⒉分娩。自分一人の身体へ

さて、陣痛室に入って7時間ほど経過し、いったいいつまで続くのか、疲れもたまり、叫び果てて汗だくになったところで、再度診察してもらうと、子宮口が全開になり、頭が見え始めていると言われ、分娩室に移動した。

分娩室に入ると、助産師四人と医師一人が手際よく準備を始めた。いきみ方を説明され、陣痛の来るタイミングで6回くらいいきんだ。
夫もそばで手を握っていた。

頭が出てきたとか、そういう感覚は全然分からなかった。この痛みに耐えられるように陣痛はあるのかな。

産まれ出たときは、お腹が明らかに軽くなり、「自分一人の身体」に戻った感覚があった。それは"すっきりした"という表現よりも、もっと"軽やかで、かつ、寂しい感覚"だった。わたしは寂しさを覚えるほど、マタニティライフを楽しんだのだと改めて思う。


⒊赤ちゃんとの対面。独立した一人の命

いよいよ赤ちゃんと対面だ。
赤ちゃんが出てくる様子はわたしからは見えないので、取り上げられて初めてその全身を目にした。

そのときわたしは意外にも、「わたしが今まで毎日話しかけていたのは、この命だったのか」と、呆然とした。

出産をイメージしていたときは、想像しただけで感動して涙していた。けれどいざ出産したとき、感涙することもなく、他人の赤ちゃんを見て可愛いと思うときのような感情もわかず、自分でもびっくりした。

誕生したばかりの独立した一人の命に、ただただ圧倒されたのだと思う。

母性が芽生えたのは、出産を終えて、分娩室で数時間経過観察を受ける中で、カンガルーケアと呼ばれる授乳をしたときだった。
生まれ出て間もない身体で、必死に胸に吸いつく小さな命を目の当たりにし、自分の子どもなのだと自覚した。

「可愛い」と思えたのは、母子同室が始まった出産翌日だ。当日は疲れ果てたせいか、周りが感動したり、可愛いと言っている様子が不思議にさえ思えた。身体は例えるなら、絞り切ったボロ雑巾状態で、骨盤が緩い感じがして歩けなかった。夜は興奮していたのか目が冴えて眠れなかった。当日はそんな一日だった。


⒋入院生活。「母」になってゆく身体

翌日から母子同室がはじまった。自分の身体の検査、授乳の練習等で思った以上に忙しい入院生活だった。前日は眠れなかったので、夜間は預かってもらった。

授乳でびっくりしたのは、出産直後にカンガルーケアをしたとき、母乳が出たことだ。産前からケアしていたが、母乳が出ることはなかったので驚いた。産まれた瞬間からわたしの身体は「母」になっていた。

生後2日目には胸が張って、助産師さん二人がかりでマッサージをしてもらうほど、カチカチに胸が固くなった。自分の身体が急激に「母」になってゆく。そのスピードに心がついていくのがやっとだった。

こうして、忙しない入院生活を終えて退院し、今に至る。

生後0ヶ月の育児に、毎日心身ともにいっぱいいっぱいだ。

幸せという土台が根底にあって、その土台の上で感情が波のように動く。これ以上ない喜びを感じたり、訳もなく涙が流れたり。

これからどうなっていくんだろう。

こんなに先の分からない生き方をしているのは、今が初めてかもしれない。

確かなのは、今目の前に在る一人の命と全身全霊で対峙する日々。

流れに任せて、周りに頼って、一日一日を大切に幸せに過ごしていきたい。