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運命を超えるときーーーあの孤独なマリッジブルーを、笑い飛ばせる日

思えば、わたしたちの結婚はちょっとドタバタだった。

付き合って数年経つと、二人とも同じエリアへの転勤が決まり、一緒に住もうということになった。結婚を前提に付き合っていたし、その頃も半同棲状態だったから、自然な流れだったのだけど、わたしは同棲するなら籍を入れたかった。

なので、転勤の辞令があって、いわゆるプロポーズが立ち消えたまま、2週間ほどで家を探し(当時住んでいたところから100kmほど離れた雪の積もる海辺の田舎町だった)、新生活が始まり、両家顔合わせをして、籍を入れた。結婚式を挙げたのはその半年後だった。

なのでわたしのマリッジブルーは、引越して、籍を入れるところから始まり、結婚式を挙げ、新婚生活と新しい土地での生活に慣れるまでの、2年くらい続いた。

今振り返れば、その2年全体がマリッジブルーだったんだなあと思える。すごく寂しくなったり、夫の行動にいちいちやきもきした。けれど当時はどれも個別の事案のように思えて、これがいつまでも続くんじゃないかと、一人で孤島に来てしまったような不安と孤独感を感じてた。

環境が変わる。ただそれだけで、人は大きな影響を受ける。それが例え良い変化であっても、変化そのものが大きなエネルギーを消費する。


それに環境の変化は、片方だけに起こっているんじゃない。相手も相手なりに変化に順応しようとして多くのエネルギーを使っている。二人が多くのエネルギーを消耗しているのだから、衝突しやすくなったり関係が揺らぐのは仕方のないことかもしれないなと今は思う。



今では笑い話なのだけど、結婚式の準備に追われる中、こんなことで喧嘩になったことがある。

当時、夫が色んなハウスメーカーのパンフレットを取り寄せた。具体的に検討するわけではなく、ちょっとした楽しみのつもりで。

ふと、インテリアの話をしていると、夫はシックな木の色合いの部屋がいいと言う。けれど、私は明るい木の色合いの部屋がよかった。

そこでなぜか大喧嘩になってしまった。

わたしは大切にしていた家具があって、それが明るい色合いだったので、それを否定されたような気持ちになってしまい、夫は夫で守りたいものがあったのだ。本当に家を買うわけでもないのに、大喧嘩となってしまった。

それから3年くらい経った頃、「今はインテリアの色合いはどちらがいい?」と夫に聞いたら、「どっちでもいい」と笑っていた。わたしも本当にどっちでもいい。二人揃って「なんであんなことで喧嘩したんやろうな~」と笑った。


あのときは何となく、"自分の領分を守らなければ"というような気持ちが働いていた。一見、インテリアの好みの違いというちっぽけな内容だったけど、当人の中では、"自分の大切にしたいことを、相手がないがしろにしているのではないか"という大きな問題に発展していたのだと思う。


それから数年生活を共にする中で、"自分の大切にしたいことを、相手がないがしろにしているのではないか"というのは思い込みであったことに気付く。たぶんお互いにそう思い込むことで、自分を保っていたのだ。

ほんとうは、自分も相手も、"二人で豊かな暮らしをしていきたい"という、同じ目標を根底で共有している存在だ。敵ではなく、まさにパートナー。

なのに、結婚に伴って、住む場所や環境ががらりと変わったり、式の準備に疲れていたりで、そんなふうに考える余裕がなくなり、そのストレスを相手にぶつけてしまっていたのかなと思う。

結婚すると色々なことが変化する。
住む場所が変わったり、相手の親族との関わりが出来たり、夫・妻としての新たな関係性を二人で模索したり。

それは自分が違うものになってしまうということじゃない。新たな関係性が生まれることで、自分という存在が一回り大きく、分厚くなっていく感じ。


それ自体はとても幸せなことだけど、同時に、体や心のエネルギーが大きく消耗していたりする。

そんなときに、相手も同じようにエネルギーを消耗しているのだ、とか、自分も相手も二人で心身ともに豊かに暮らしていくために同じ目標をもつ存在だ、とか言われても、すとんと心に落ちないと思う。わたしだって数年経ってやっと、少しそう思い始めたというところだから。


ただ、あの孤独なマリッジブルーを、笑い飛ばせる日を迎えられたのは、なぜかと考えた。

それはひとえに、階段を登るのをお互いがやめないでいたからなんだろうな。

二人で階段をのぼっていくことから、どちらかが抜けたり、諦めたり、放棄することなく、その営みを続けている。



もちろん、面倒に思ったり、無理かもと嘆くときもある。
運命の人だから出来るとか、そういうことじゃない。


ただ二人が続けようとしたか、どうか。


運命を超えてそこにあるのは、たぶんわたしたちの意思そのものなんだなあ。


そんなことを思っている春だ。



あとがき

ちなみに最近は、ストレスを相手にぶつけるような喧嘩がなくなったように思う。たぶんお互い、事前に自分のストレスに気付くようになった。

何だかイライラしてしうまうとき、原因は相手の中ではなく、"自分が自分を幸せにしようとしていないことにある"と、数年の新婚生活を経て、ようやく気付いたんだと思う。


▫️運命の人シリーズ
運命が動き出すとき~女性らしくふるまうことを、自分に許していますか。

運命のサイン~ささやかで、ともすれば見落としかねないような。

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