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3.油絵具とテレピン油


太郎は、相変わらず休みの日には、絵を描いている。

太郎の休みの日には、
大きなキャンバスと油絵を描く為のテレピン油の匂いが、狭い借家の中に満ちていた。

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茜は幼稚園に行き始めた。

茜は、自分に似たのか幼稚園ではあまり喋らない子と華が言っていたが、ウチでみる茜は相変わらず可愛い女の子だ。
ちょっと、口数は少ないかもしれないけど。。

ただ火傷の事件以来、少し抱き抱えられるのを嫌がる所があるのは、太郎を少し寂しい気持ちにさせた。

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茜は幼稚園に行きながら、お絵描きを画家の先生から習うようになった。
絵が好きな太郎には、そんな茜が描いて来る「お絵描き」が楽しみで仕方なかった。

茜の絵は、ちょっと太郎が描く風景画の色使いが似ていると思える所もあり、ちょっと茜が誇らしくもあった。

茜も太郎が絵を描いている間は、横に座ってお絵かきをしているか、太郎の油絵具を珍しいおもちゃのように掻き回して遊んでいた。
茜は、太郎が絵を描いているのを見ているのが好きなようだった。

まるで、油絵の具が2人を静かに結びつけているようだった。

静かな、静かな
テレピン油の香と、キャンバスを擦る油絵の絵筆が作る時間。

それは、華と茜には生まれない、太郎と茜の楽しい秘密の時間だった。


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