鴻上尚史 「トランス」


私の愛する人は精神を病んでいます。
ですが、 私は、とても幸福です。
あなたが私を必要とする限り
私は変わり続けられるのです。
私があなたを愛する限り
あなたは私の大切な人なのです。
あなたがなにに傷つき
あなたでなくなったのか
あなたの哀しみの深さを私は知りません。
ですが、
あなたが私を必要としていることだけは、
私は分かります。
あなたがどんな妄想に生きようと
私を必要としていることだけは、
分かるのです。
そしてそれは、
どんな妄想より大切な真実なのです。
そして
あなたのそばに私がいること
私のそばにあなたがいること
すべてはそこから始まるのです。
私の愛する人は精神を病んでいます。
ですが、私は、とても幸福です。

戯曲の一節で、語り口で一気に読ませます。

終盤から医者と患者が目まぐるしく入れ替わり、何が正常で何が異常なのか分からなくなっていき、3人の登場人物によるこの合唱シーンで幕となります。

当時、鴻上尚史さんは小説形式にして賞を取るなんて簡単と語られていましたが、本当にそう思います。

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