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読了:『流浪の月』 凪良ゆう

こんにちは。土曜休みはめずらしい。

買ってからしばらく読まずに棚にしまっておく本ってきっと誰でもあるのかなって思ったら、書店員の同僚は夜のコーヒータイムですぐに読み始めるみたいです。だから積読という言葉すら知らなかったみたい。

なんかそんな時間が、余裕があって、自由そうで羨ましく思ったので、最近は私も自分の棚にある本と向き合ったり、図書館で借りたりしています。買ってしまうと自分のTO DOを増やしまう感じもする。

と言いつつも、やはり何年も気になってた本が文庫になると、「ああ!ついに!ええい、買ってしまおう!」という気になったりもします。こればかりは出勤するたびに気になってしまうので、しょうがない。

今回ご紹介する本もその「ええい!」で買った一冊です。


『流浪の月』
凪良ゆう


2020年に本屋大賞を獲ってからと言うもの、多くの本屋さんの話題書やランキングの棚に置かれていて、きっと見かけたり読んだことがある方も多いと思います。

帯を見ると「愛ではない。けれどそばにいたい。」とあったので、想像するにも謎は深まるばかりで発売からずっと興味津々でした。

しかし読んでみてびっくり。まさかここまでとは。


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普通の家とは違うような家で育った更紗(さらさ)。親が子供の前でキスをしていることが変だと言われたけど、そんな両親との生活はキラキラしていて大好きだった。

しかし父が病気で亡くなってから、母親が失踪し伯母さんの家に預けられることに。そうして更紗にとって苦痛の日々が始まる。

毎日夜にやってくる恐怖。回るドアノブの音。十分な睡眠なんてとれるわけもなく、日に日にやつれていく。

その日も家に帰りたくなかった更紗は、公園のベンチで大好きだった両親との暮らしを思い出していた。ふと雨が降り出した時、いつも見かける若い男の人に話しかけられた。それが文(ふみ)だった。そうして19歳の文との暮らしが始まった。

文の規則正しい生活とは反対に、夕飯にアイスを食べても許されていた更紗。真逆のような世界で生きてきた二人だったが、更紗は文との暮らしに「居場所」を見つけた。

しかし気を緩めてしまった出掛け先で通報され、瞬く間に誘拐事件として報道される。以降、更紗は世間からは誘拐事件の「被害者」と言われることになり、本当のことを言い出せないまま養護施設に入った。


そうして大人になった更紗だったが、ある日同僚に誘われて入ったカフェ『calico』に文の姿を見つける、、。


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本編が始まる前の内容、書きすぎました。ここまで書いてもまだ半分にも満たないので、メインはここから。気になる方はぜひ読んでみてください。

キーになるのは主人公である更紗の気持ちです。誘拐事件ではあるけれども、その報道の裏で実際にあったこと、感じたことは本人達にしか分からない。

目次を見てナンジャと思ったのが、「少女のはなし」「彼女のはなし」「彼のはなし」って分かれてるんですよ。「彼のはなし」の部分でこれまで明かされてなかった部分が一気にきます。まさかそんな事情があったとは。

それぞれ一人で重いものを抱えて生きてたんだ、って、逃げようと踠いてたんだ、って思います。


ああ、重いです。結構重い。もうちょい重かったら、さすがの私も食欲が無くなってたかもしれないレベルです。

彼氏とのやりとりも読んでて不快感を感じます。悪い意味ではなく、それくらいリアルに気持ち悪い。この束縛状態で生きてる人達は現実にたくさんいるんだろうな、と思うとゾッとします。

真相を知らずに、私たちは日々何かを勝手にラベリングして決めつけているんですよね。そうしたくなくてもどうしても先入観のようなものがつきまとう。前回の目の見えない白鳥さんの話でもそうでしたが、本人の気持ちを知らない同情とかって壁になったりもする。


本屋大賞ってこんなに重かったけと思いつつ、出会えてよかった本です。この、ひっそりとした読後感を大事に抱えて今日は感想を終えたいと思います。

凪良ゆうさん、新刊が出ているみたいなので、チェックしてみようかな!読んでいただきありがとうございました。


今日のnegoto「図書館が駅近に欲しいけれど混んでしまうのは嫌だという矛盾」


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