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雨化粧 #シロクマ文芸部

雪化粧があるなら雨化粧もあるの?

妹が僕に聞きました。
聞いたことがないなぁと答えると
妹はそれって変よねと言います。

何でもそういうことってあるだろ?
これはあるけどこっちはない、とかさ。
すると妹は「そういうのがいやなの」と
怪訝な顔をしました。

雪化粧があってなぜ雨化粧はないのか。
もちろん僕にはそんなことわかりません。
でもそもそも雪化粧とは雪による白さで
化粧をしたように景色ががらっと変わることをいうわけで。
だから僕は、雨は雪みたいに白くもないし何も変わらないから
やっぱり化粧にはならないねと言いました。

しかし妹は言うのです。
雨だって景色が一変するよ、と。

雨で濡れた景色は全てがキラキラして綺麗だと妹は言います。
いつもは平凡に見えるものも雨が降ると
美しい世界に変わるそうです。

妹は昔から雨の日が好きでした。
僕は晴れている方がいいなぁと思っていたので
なぜ妹が雨が好きなのか
僕にはずっとわかりませんでした。

でも妹は僕とはそもそも全く違うものを見ていたようです。
僕には見えていなかった世界が
妹には見えていたのです。

雨は様々なものに溶け込み辺り一面を輝かせてくれます。
雨は仲良しの光と共にその瞬間しか見られない色を出してくれます。
また植物に目をやればより一層の瑞々しさが目に映ります。
妹はそうやっていつも雨の日の世界を見ているのです。

「雨化粧」

妹の世界には昔から存在していました。
そしてとうとうそれは僕の中にも。


僕は、妹の世界と
ようやく繋がれた気がしました。


【おしまい】

***

今週のシロクマ文芸部でした🐨


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