月めくりである僕たちは
自分で月をめくることを許されていない。
これは「月めくり一族」の昔からの約束事。
一族の者はみな生まれてからずっとそれを大切に守ってきた。

そして僕は今その約束を破らまいと
なんとか頑張っている。
それはなぜか。
数日前に新しい月になったというのに
僕は未だに「同じ姿」のまま過ごしているからだ。
いつもの君であればすでに月めくりをしているはずだが
一体どうしたのだろうか。
僕は昔のことを思い出し、少し不安になる。

あの時もそうだった。

新しい月になっても一向にめくられず
僕は君がくるのを今か今かと待っていた。
あの時の僕は君がめくるのを
ただ忘れているだけだと思っていた。

でもそうじゃなかった。

あの時君にとってとても悲しいことが起こり
君は月めくりができなくなってしまった。
そして僕は半年もの間一切めくられず
その年はそのまま静かに終わっていった。
あの時の僕は君と同じで、とても悲しかった。

それから年が変わり、新しい月めくりとして
僕はまた君の元へやってきた。
僕はあの時のことがずっと忘れられなくて
もう一度君の担当にと立候補した。
だから無事決まった時は本当に嬉しかったし
また君に会えるんだってワクワクした。
そして今度こそ君には最後まで月めくりをしてほしいと
心からそう思ったんだよ。

だから「月めくり様」お願いします。

どうかあの人にこれ以上悲しいことが
起こりませんように。

机の上でそう祈りながら
僕は今日も変わらず一族の約束を守り
君がくるのを待っている。

【おしまい】

＊＊＊

今週のシロクマ文芸部でした🐨

ではまた。