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旅立つ準備をする父

 今朝になって父の血圧が88と低くなった。酸素濃度も84である。酸素マスクで補っているが、苦しいのかどうか聞いても分からない。

 「お父さん」と呼ぶと、眉毛をクイっと上げて反応する。「コーヒーでも飲む?」と聞くと顔をしかめた。こちらの言うことは聞こえている。

 ただ横たわって息をするだけになってしまった父。時々顔をゆがめて手を動かすが、意識してやっているのかどうかも伺い知れない。

 これから急変することもあるかもしれないとのこと。入院してから1週間、長かった。今日は良い天気で、桜が咲いていたらお花見には最適だ。

 高知はすでに桜の開花宣言が出ているが、ほんの一輪二輪ほどしか咲いていない。例年より遅いみたいだ。好奇心旺盛の父は、向こう岸の花の様子を見に旅立つのだろうか。

 一時は向こう岸に行きかけたが、自作の舟の出来が今ひとつ気に食わないのか、「今日は戻って来ちゅうねぇ」と医師に言われていたのが、つい昨日のこと。

 父の旅立ちはいつになるのだろう。私は満開の桜の季節がいいなと思う。春は別れの季節。良い気候になって、お花見をしながら向こう岸にたどり着いてほしい。

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