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初めての映画

 あれは確か小学2年生の春休みだったと思う。一つ下の弟と映画を見に行くことになった。とはいえ、2人ともまだ低学年。何かあったら不安なので、母が従兄弟のK君に子守りを頼んだ。

 K君は当時高校1年生。待ち合わせ場所には、友達を連れて来ていた。やはり1人で2人の小学生を見るのは、心細かったのだろう。

 当時高知の街中にあった東宝で、ドラえもんを見たのが初めての映画体験。薄暗いロビーから戸を開けると、スクリーンに併映のドラミちゃんの主人公であるノビスケが映っていた場面は、今でもはっきりと思い出せる。

 K君も高校生ながら、よくドラえもんの映画に付き合ってくれたものだ。ドラミちゃん映画のテーマソング、♪ドラミ、ドラミ、ドラミードラ♪は、頭の中にぐるぐる回るほど印象に残った。

 本編は「ドラえもん のび太の日本誕生」。名作と言われるドラ映画である。映画館の中からは、笑い声が聞こえたり歓声が聞こえたり。今ここにいる子どもたちと同じ映画を見てハラハラドキドキを共有しているんだと、不思議な気持ちになった。

 映画館では、ドラえもんの顔が描かれた緑色の巾着袋を買ってもらった。中にお菓子が入っていたことを覚えている。他にもパンフレットまで買ってもらい、とても嬉しかった。

 お昼は雑居ビルの中にあるカレー屋さんで食事した。なんでK君がこんなお店を知っているのか分からなかったが、飲み水がペットボトルに入っていたことを覚えている。

 K君は面倒見が良く、高校を卒業してすぐ就職したにも関わらず、私たちにお年玉をくれるほどだった。遠い35年前の記憶だけれど、K君の優しさは今だに忘れない。

#映画にまつわる思い出

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