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心の置き所をこれでもかと注ぎ込んだ意欲作。「返校-Detension- 」

「返校-Detention -」プレイしました。
Switchでの配信直後に購入したにもかかわらず、
今まで置いてけぼりにしてました。
…だってホラーって怖いじゃないですか。
血とかそういうのがどばって出るのは、抵抗値が高いのでなんても思いません。
しかし。心の闇が生んだ精神世界系ともなると
全くの防御力0。夜トイレ行けません。

1960年台の台湾が舞台。
学校の講義中に居眠りしてしまったウェイ・チャンティン。
目を覚ますとそこには誰もおらず、
校舎の外に出るため校内を
歩き回っていたら、体育館のステージの真ん中で
椅子に腰掛けながら気を失っている少女、
ルイ・レイシンと出会います。

彼女と一緒に学校からの脱出が目的の
いわゆる横スクロールクリック式の「脱出ゲーム」です。

アメリカのindieCade2017ベストジャーニー賞も受賞しており、このゲームの中身は世界でも折り紙付きの面白さ。
開発は台湾の「RED CANDLE」
自国に起きた歴史の闇を、これでもか!と投げ込んだ意欲作です。

ただ、ここでは台湾の歴史を語るようなことはしません。
起動するとこのようなメッセージが表示されます。

ゲーム中に登場するキャラクターや団体は
幸いなことにフィクションであり
実在の人物 場所 歴史的事実への
類似点が見受けられた場合は
完全に偶発的な事象に他なりません

返校

プロデューサーSHUN TING YAO氏の言葉なのか、販売会社の意図なのかはわかりかねますが、当時のこの歴史を扱う難しさが滲み出ているメッセージだと思います。


この点において、当事者でもなければ、台湾人でもない身としましては、事実がどうとかを述べるのはどうにも「無粋だなぁ」と感じてしまいますので、遠慮させていただきます。


ゲームはポイント式クリックで、気になる場所があるとメッセージが現れ、
必要ならアイテムを取り、はめ込んでいくパズルゲーム。
道中襲ってくる幽霊もいますが、攻撃手段はないので、息を止めてやり過ごすしかありません。
捕まったら、終わりです。


往年の「シザーマン」みたいでした。捕まっても振り切れますけどね。あっちは。


対抗手段がない、というのがホラー感を増しており、恐いけど行かなくてはいけない!という
緊迫感がたまりません。

アクションゲーム顔負けの没入感。
怖くて一歩ずつしか進みません。
ドアが突然ガチャっと開いたりするだけでも
「一休みしようか」とSwitchを置きながらプレイしました。


前半パートは主に脱出が目的で、台湾には馴染みのある教え、
「道教」(中国由来)や台湾の風習「冥銭」などのイベントもあり
台湾を知り、謎解きしながらゲームを進めることができます。

しかし後半戦になるとゲームは激変。
パズル要素は、「物語の」謎解きがメインになり、
主人公ルイ・レイシンの真実に迫ります。

彼女が抱えるさまざまな葛藤。迷い。わずかな希望。相反する絶望感。そして決断。

ノンストップ映画を見ているかのような怒涛の展開。物語に入り込ませる事をしっかり押さえながら、「ゲームとして」の核も忘れない、見事な演出でした。


後半もパズル要素がないわけではありませんが
「難しいけど少ない」量に抑えてあるおかげで
物語にしっかりのめり込むことができました。

こういうさじ加減て難しいと思います。
考えうるアイディアは、なるべくなら全部つぎ込んでしまいたいもの。
しかし、それではゲームテンポが悪くなる。
だから削ぎ落としてブラッシュアップしなければなりません。


返校はとにかくゲームテンポとストーリーの波長がとても合っているゲーム。どちらも置いてきていません。


そしておすすめは「バッドエンディングを見る」ことです。


自身もやらかしてしまい、一度地獄を見ましたが
だからこそ、このゲームの真髄、製作者の意図、そして真エンドの重み、なにより、この結末は、どうみても幸せじゃない。

ルイ・レイシンの苦しみが、痛いほど伝わるのが、バッドエンドです。
ぜひ、やらかしてみてください。


2周することで物語の意味が理解でき、彼女が存在することが理解できます。


文学的な詩が随所に挟まれ、
読み物としても上質でした。
日本語訳がとても洗練されていたと思います。
最後に、この物語の舞台背景が重くのしかかった言葉を紹介します。

若者は否応なしに決まりきった道を歩かされ
やがて純潔を失っていく。
私は人生のメリーゴーラウンドを回る木馬ーー
生なき感情がもつれた塊となった。
狂気を吹き込まれ、木馬は加速していく。

ルイ・レイシン

あやふやに目を開き、
私は不毛の世界を迎え入れる。

ルイ・レイシン

紙飛行機が私の夢を運んでくれて…
次に目覚めたら知らない国にいて…
見知らぬ町で新しい人生を始められたら…
そうだったらいいのに。

ルイ・レイシン



今回のお話はおしまいです。
最後まで読んでくださりありがとうございます。

コケでした〜。






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