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『青のパンドラ』第3回目――シスターベルナドットのりりしさ――

<flowers>の11月号を買ったが、萩尾望都の『青のパンドラ』の続きが載っていなかった。

でも、そうじゃないかと思っていたんだ。
だって、先月号の最後のページの下に「つづく」とだけあって、
「11月号(9月28日ごろ発売)につづく」とは書いていなかったから
(ほかの続きものは、何月号に続くのかちゃんと書いてある)。

しかし、巻末の来月号の予告ページにはちゃんと『青のパンドラ』と載っていたので、
おかしいな、と思っていたのだけれど、
これはきっと、カラーページのほうが入稿が早いというので、センセイの意向を確かめきれなかったからだろう。
で、本編を印刷する頃には、次はちょっと休みたいかも、ということになっていたのに違いない。
というか、予告と違っておきながらなんの断りもないわけ? と思って、11月号のページを丹念にめくって調べていったら、
ようやく、最後の最後の目次のページになって、下のほうにきわめて小さな文字で、
「『ポーの一族 青のパンドラ』は'23年1月号('22年11月28日ごろ発売)に掲載です」と書いてあった。
以前だったら、予告と違った場合には、
「先生の都合で今月は休載です」とか、お詫びまでしなくてもちゃんと断り書きしたものだけど、出版社もマナーがなくなったものだ。

それはさておき、
なら書かないでおいた3回目についてちょっと書いておこうかな、とキーボードに向かった
(筆を取った、と書けないところが悲しい。しかも、キーボードにはほぼ毎日向き合っているし)。
3回目は、なんとなく気に入って割と読み返していた。
というのも、シスターベルナドットが多めに出てきていたからで、
再開『ポーの一族』の中では、このキャラクターだけがけっこう好きだ。
どっからどう見ても、タロット(マルセイユ版系)2番の「女教皇」がモデルだし、
その象徴の示すごとく威厳があり、古書を管理したりしている。
女教皇は処女性を表わしもすると言われているので、
今回、孫がいたことが判明したのには拍子抜けしたが
(「シスターの息子?」とあっさり聞くエドガーの態度もどうかと思ったが)、
常に落ち着いていて、めったなことではうろたえそうにない(ここ、今後も裏切らないでほしい点だけど)態度は頼もしく見える。
紀元前から生きていて、ベネチアに流れ着いてからは、ずっとそこに留まって自分の一族を統括しているのだそうだ。

まあ私はあまり、バンパネラたちの出自とか謎とかに興味はないが。
『ポーの一族』は元々、ファンタジーとして始まった。
ファンタジーとしてのロマンチシズムや美意識が見どころだったので、謎解きを主眼に置かれたり、SF仕立てになったりしても気が乗らない。

ところで、この作中ではベネチアとベニスとで、同じイタリアの都市の呼び方が揺れている。
サルバトーレはベネチアと言うけれど、ほかのほとんどの人は、シスターベルナドットまで含めてベニスと言う。
それから、23ページ目に目立つ誤植があったね。
ファルカが「ずいぶ霧が出てるが」……と。
ここ、「ずいぶん」としたかったのか、「だいぶ」とでもしたかったのか判別がつかないが、
「だいぶ」となっていたところを、後で「ずいぶん」に変えることになって、
「だ」を「ず」にしただけでオペレーターさんの気が抜け、「ん」をつけるのを忘れたのかもしれない。
このあたりはいずれコミックスが出れば、どうしたかったのかがわかるだろうと思うが。

さて、大老(キング)ポーが呼び寄せた別次元を走る馬車に乗り、
エドガーたちは来たばかりのイタリアを去って、次はイギリスに舞台を移すことになっている。
まさか、まともに鍛冶場が出てきて、ヘファイストスとかいう名の新登場人物が現れたりはしないだろうね、と思うけど、
今回も騒々しい新キャラ(アルゴス)が突然霧の中から現われて、ダミ声(と書いてあった)でわめいてうるさかった。
ただ、シスターベルナドットが毅然として対応していたし、
バリーの態度も割りときっぱりとしていたので、それほど見苦しいことにはならなかった。
そのベルナドットが進行上、当分はまた出てこないことになるのが、
私としては再開『ポーの一族』を読み続けるのにちょっと寂しいところ。

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