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ポーの一族『青のパンドラ』の第4回目

<flowers>の1月号を買ったら、萩尾望都の『青のパンドラ』が載っていた。
あたりまえだ……続きは1月号に載せるって予告に書いてあったんだから。
しかし、先々月号では予告と違って載っていなかったし。

ただ、作家からの一言コーナーによると、
どうも先々月号の突然の休載は、体調不良によるものだったようだ。
なら、出版社のほうだってそう書いてくれたらよかったのに。
そうしたら、読者からもお見舞いの品や言葉が先生の下にわんさか届いたことだろう。

さて、それはさておき、
今回、大老(キング)ポーの昔語りによって、ついに明らかになったポーの一族の起源!
でも、キングポーの幼き日の姿なんて見たくなかった。
少年時代も、青年時代も、
並みの人間のようになにかに脅えたり、恐れたりしたことがあったなんて知りたくなかった。
老ハンナの、まだ初々しい14歳の小娘の時の姿だって目にしたくなんかなかった。
二人とも、威厳もなにもあったもんじゃない。
最初っからどっちも、老人として存在していたっていうわけにはいかなかったのか!?
(ちょっと、無理か)

というのが率直な感想で、それ以外に思うことはあまりなかった。

ってか、キングポーの回想によって、
この不死の一族が紀元前2000年頃に発生したということはわかったけれど、
そこからどうやって、クイを胸に打ち込まれたり、銀の弾丸を撃ち込まれると消滅するという、
典型的なヨーロッパの吸血鬼伝説にまみれた存在に?
皆がそうすれば退治できると思うようになったから、
集団の意識に反応して、自分たちもそうされると消滅するようになったのだろうか?(『チェンソーマン』風理屈)。

あと、クロエのせりふには驚いた。
彼女がポーの村に帰れることになったという知らせを持ってきたシルバーに向かって、

「村になんか帰らないわよ!」

と言い返し、

「これからデートよ(!) サボイホテルで食事して コンサートに行くのよ!
 相手はお金持ちのアメリカ人 ねえケイトリン ステキな紳士よねえ」

と、世話係のケイトリンの腕を取り、浮かれたように踊る
(カッコ内の、! は私による補足。吹き出しのギザギザな形に合わせて)。

さらに、
「キングは村を壊滅させるつもりね! そうよ 世界の終わりが来るのよ!」

と、やたらうれしそうにわめく。

「終わる…? 村が――…?」とうろたえるシルバー。
なんかもう、クロエは錯乱しているとしか言いようがない。

この人もポーの一族なんだから、
千年以上も生きてきているはずなんだが、まだそんなことが楽しいのか。
デート? サボイホテル? それでもってデートの相手がお金持ち?
これがほんとうに、永遠の時をさまよう一族である者の言う言葉なのか、と思った。

そしてまたしてもファルカが、「炎の剣」はどれかと言って騒ぎ立て、
(「これか? それともこれか? えっそれか!?」)
「ファルカ 落ち着け」とキングポーにたしなめられる。

さて、今回の話の運びだと、
アランがよみがえるのはまだまだ先になるのじゃないかと思っていたものの、
もう次にはよみがえらせるしかなくなってきたようだし、
そうすると、それとほぼ同時に、長きにわたって拘束されてきたという美しい男の封印も解かれる可能性もあるので、
次回はただでさえうるさい登場人物たちが、さらに輪をかけたように騒ぎまくってのクライマックスになりそう。
なんかこちらも今からどきどきする、というよりも、むしろ頭が痛い。

あ、今回気に入ったのは27ページの4コマ目だけ。
キングポーにすがってきた、年老いて傷だらけのハンナを、いたわるように胸に抱きしめたキングポー。
「ハンナ……」とその名を呼びながら。
孤独に生きてきたキングポーに、いつ終わるかわからない人生の連れ合いができた瞬間でもあった。
そこだけ、じんわりと心にしみ込んでくるものがあったが、
たいていは騒々し過ぎて、ろくに心に入ってこない『青のパンドラ』なのだった。

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