言葉で自分の城を築く

三島由紀夫は、森茉莉(もりまり)という作家を評して、
「言葉で自分の世界を構築してその城のなかに住んでいる。私もそうしたかったが、どうしても外からしか描けない。その点で森茉莉には勝てない」
というようなことを言っていたらしい。
なにがっていうわけじゃなく、なんだか素敵すぎる。三島由紀夫も、森茉莉も。

森茉莉は、貧乏生活のなかでも彼女の愛好するヨーロッパ的な美しさを見出し、その世界を文章にした。彼女の自伝的小説には、とにかく西洋的でおしゃれな言葉たちが散りばめられている。陶酔感とナルシシズムが満ち溢れており、ああ、ナルシシズムってよくないことのように思っていたけど、創作においてはむしろ必要なものなんだなあと。ナルシシズムを排除するのをやめようと思った。同時に客観視点も持ち合わさなければならないけれど。

森鴎外の娘として溺愛され育つも、二回の離婚を経験し、年老いてから貧乏生活を送る彼女は、不幸だと周りに同情されたそうだが、
言葉で自分の世界を構築し、その中でのみ生き、それ以外のことはどうでもいいと捨ててしまえる、そんな強さを持っていた。彼女はきっと幸せだった。

ここにきて使い古された言い回しを使うけれど、いつだって幸せは自分の心が決めるのだ。
そして自分が生きるための世界を言葉で作れたら、それほど素敵なことはないと思う。

いつかの会話。

「森茉莉って人の小説を読んでるんだけどさ」

「なにその、子役が踊りそうなやつ?」

「それはマルマルモリモリ」

確かに似ている…。

#コラム #文学 #とは #短め

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