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凧揚げ

去年の初夏
私は東京から地方都市に引っ越した。

いわゆる移住というものをしてみたのだ。

とりあえず慣らしで
田舎過ぎない所に住もうと
比較的交通の便や買い物にもそう困らない街で
新たな生活のスタートをきった。

地方とは言え割と都会のせいか、
降雪以外ではそこまで暮らしに困っていない。

車で片道30分ほどいけば温泉街があったり、
野菜の直売所や道の駅が近所にあったりで、
日々、旅をしている気分を味わえる。

コロナでの引きこもり生活が続いていたこともあり、都会では得られなかった充実感が心を踊らせた。

そういった精神面の変化からか
運動なんて全くしてこなかった私が、
この半年でウォーキングを持続している。

山裾にあるだだ広い公園があり
そこをただ無心で歩く。

それがいい気分転換になり
執筆で息詰まるとそこへ行き
体を動かした後は温泉街に行き
共同浴場で汗を流す。

このルーティンが今の執筆活動を支えている。

話はそれましたがこの公園は
東京では考えられない広さで、

競技場やテニスコートがあったり、
サッカーやフリスビーを楽しめる場所もある。

芝生エリアや噴水広場、
時期になればバラやシャクナゲが咲く。

当然、犬の散歩やジョギングをする人達もいるが
敷地が広範囲なので
なかなか人とすれ違わないし
車や自転車も入ってこない。

たまにラジコンカーを爆走させている人もいるが、そんな事も気にならないほど余裕でかわせる道の広さだ。

そして今日も歩きに行った。
風が強かったので途中で引き返そうかと思ったのだが、入り口の芝生広場で空を見上げた。

そこには風に乗って凧があがっている。
大空を悠々と泳いでいる。

「凧揚げか。懐かしいな〜」

思わず足止め見入ってしまう。

父親と思われる男性が
小学生くらいの男の子に凧揚げを教えていたのだ。

糸を操りながら
凧が右へ左へと動く

近くに電線も何もない場所で
親子が操る凧があがっている。

凧揚げなんて
最後に見たのはいつだったか。
思い出せないほど
久しぶりだったと思う。

東京は人が密集し過ぎて
ありとあらゆることが制限され
いつのまにか何もできなくなったように思う。

キャッチボールも凧揚げも
都会では迷惑行為になってしまう。

でもここではそれができる。
誰の目も気にせず
誰も咎めることもない。
大声を出してもいい。(限度はあるが…)

そう思ったら足も軽くなり
結局、いつも通りウォーキングができた。

地方在住の皆さんは
「凧揚げ?普通じゃん」って思うかもしれませんが東京はそれすらできない。

いや、場所によってはできるのかもしれないけど、ほぼ無理ですよ。人が多すぎるから。

人が多いと色んな人が出てくる。
特に神経質な人の声が大きくて、
許容できる人達がおとなしいから
そっち側の意見が通りやすい。

村社会の同調圧力に屈し
周囲がやらない事は自分もしない。
トラブル回避のためにもやらない。
面倒なことはあらかじめ避ける。

その悪い癖が身につき過ぎて
今も保守的なつまらない人間だ。

だけど今日
凧揚げをする親子を見て
私も自由だと思えた。

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