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【小説】連綿と続け No.42

航と西川が口論になり、
互いが拳をふり挙げようとしたその時、
大声で止めに入ったのは春子であった。

「そこで何やってんの!!」

侑芽)春ちゃん!?

春子)ちょっとな〜に〜?侑芽どうした〜?

春子は侑芽に駆け寄って行き、
まるで幼な子をあやす様に侑芽の頭を撫でから
航と西川を睨みつけた。

春子)ちょっとあんた達!さっきからうるさいんだよ!侑芽に何してくれたわけ?それにこっちは、せっかくのデートが台無しなんですけど!

春子は腕を組みながら大声で怒鳴った。
春子と武史も蛍鑑賞に来ていたらしい。

その剣幕に、
荒ぶっていた航も西川も
しゅんとして素直に謝る。

航)それは、すまん……

西川)かんにん

武史)おいおい!お前らこんなとこで何しとんが。あんまし騒がしいさかい来てみたら。まさかお前らやったとは……

西川)お、俺は!一ノ瀬さんと撮影しとっただけちゃ!

航)嘘つくな!仕事にかこつけて侑芽に手ぇだそうとしとるんやコイツは!

西川)そんなこと思うとらんちゃ!すぐ手ぇ出したがはお前やろ!一緒にすんな!

再びつかみ合いになる西川と航。
それを武史が必死に止めに入る。

武史)ちょ、ちょ、ちょ、ストップ!一回落ち着こ?な?一回離れよ?

すると春子が鬼の形相で向かってきて

春子)武史さん巻き込んでんじゃねーよ!!

と言って西川と航をまとめて突き飛ばした。
そしてコロッと態度を一変させ、
今度は少女漫画のヒロインの様に目を輝かせながら

春子)武史さん大丈夫〜?

と言って武史に駆け寄った。
武史は春子のギャップに驚きつつも

武史)お、おお……。ありがと。春ちゃんは無事け?

そう聞かれた春子は、
一昔前の女子高生みたいな話し方で
武史にすり寄る。

春子)アイツら突き飛ばしたら、ちょっと手首痛めちゃって〜、めっちゃ痛いんですけどぉ〜!このままじゃ春子、金沢に帰れないかもぉ

武史)そら大変や!ほんならうちで看病しよか!もうこんな奴らはほっといて、早よう帰ろう!

春子)えぇ〜?いいんですかぁ?

武史に手を引かれて去っていく春子は、
侑芽に向かってぺろっと舌を出し、
上機嫌で去って行った。

春子劇場を見届けた侑芽と航と西川は、
暫く呆然としていた。すると航が

航)侑芽、もう帰ろう

侑芽)はい……

航は最後に
西川に釘を刺した。

航)仕事で会うんは仕方ないて思うけど、こんなんはもうやめてくれま

西川)わかっとるて。すまんかったな、誤解させてしもて……

航)いや、こっちこそ……

侑芽は西川に頭を下げ、
航と一緒に車に向かった。

航は無言でエンジンをかけて、
何も話さないまま井波に向かう。

家に着くと、
入ってすぐに力ずくで抱きしめられ、
乱暴に口付けられる。

侑芽)んっ!ちょっと航さん!やめて!

航は侑芽を部屋の中の壁まで追いやり、
彼女の顔を挟むようにして
両手をバンと壁に突き顔を近づける。

航)もうアイツとは関わらんでくれ

侑芽)お仕事でご一緒してるだけですよ

航)そんながは仕方ない思う。けど、今日みたいな事があるなら先に言うてくれま。嫌な予感がしたさかい行ってみたら案の定……

侑芽)でも本当に写真撮るだけだったので

航)写真撮るだけて……アイツが侑芽に惚れてるがは知っとるよな?

侑芽)そんなわけないじゃないですか。親切にして下さってるだけです。この前も「お兄ちゃんと思って何でも言って」って仰ってましたし

航)アホ!そんなわけないやろ?俺かて最初はそう言うた。けど初めから侑芽のこと、女として見とった。侑芽は全然わかっとらんがいちゃ!やさかいアイツがあんな風になるのちゃ

侑芽)ごめんなさい

航がずっと声を荒げているから、
侑芽はとうとう泣き出してしまった。

航)かんにん……言いすぎた。侑芽の事が好き過ぎて….心配になってしまうんや

侑芽)それって……ヤキモチ?

航)そらそうやろ。それに一平とは昔から気が合わんが。やさかい余計に嫌や

侑芽はクスクス笑いながら航に抱きつく

航)何がおかしいんや

侑芽)ヤキモチ、嬉しい

侑芽が背伸びをしながらキスをせがむと、
航は尖らせた口を押し付けた。

この日は夜から雨が降り出して、
2人が口付けに夢中になった頃、
土砂降りに変わった。

雨音が激しくなるにつれて、
求め合う速度も増していく。
これまでは受け身であった侑芽が、
初めて自分から甘く誘う。

侑芽)きて……

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