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【ケーススタディーその1(下) 提案編】骨折用プレート折損事故

土庫澄子です 骨折用プレートの折損に関する判決のケーススタディは、1回で終わる予定が3度目の記事です 今日は事故の再発防止策の提案をメインに書いていきます

■最終のステップへーStep 5.

今回はケーススタディの最終ステップ、事故の再発防止のために提案をするという工程です 

問題提起は大風呂敷を広げたって誰も文句をいわないけれど、解決策を提案するのはムズカシイとよくいわれます そうでしょうか?

手品のようにあっと驚く解決策を見せなくていいとおもいます タネも仕掛けもなく、まわりまわって解決につながるきっかけとなればいいとわりきっています 

Step5.はシナリオの外からライトをあてた要因の消去です Step 4.の工程がそのままStep 5.に続くのでいたってシンプルです 道なりに行けばきっとなにか出てくると自分の足を信じて歩くだけです👟👟

そんなわけで、まずはメソッドから。。

(Step 5.)再発防止策の提案

裁判で問題となったケースと同種の事故や類似した事故を防止するには?を考えます 判決が描く事故の要因のひとつづつについて、どうしたら除去できるか考えます

要因のどれか、あるいは全部をシナリオの外からライトをあてて見直しているなら、修正されたシナリオを構成する要因の除去を考えます(←ここは前の記事をみてください)

■プレート折損事故の再発防止につながりそうなことを探す

話をケーススタディに戻します 糖尿病患者さんが上腕を骨折し、手術をして装着した上肢用プレートの折損事故に関する神戸地判平成15年11月27日です

■(要因1)と(要因2)を除去する

判決が描く事故のシナリオを構成する3つの要因のうち、(要因1)は患者さんが三角巾を取り外した、(要因2)は患者さんがプレートを誤って使用したというものです  

判決は、(要因1)と(要因2)をつないで医療者の言うことを聞かない身勝手な患者さんの人物イメージを作っています

ですが、糖尿病という事情からライトをあてるとプロットは変化します 糖尿病の場合の特別なリスクを患者さんが理解不足だった?と思われる節があるのです(←ここは前回の復習)

糖尿病というシナリオの外にある事情をカウントしながら(要因1)と(要因2)を除去するには、糖尿病患者さんのプレートリスクについて医療者が患者さんにわかりやすく伝えることが必要です 

「伝える」というのは、医師が「伝える」という行為をしたかどうかではなく、患者さんが必要なときにリスクをわかっている状態でいられるか?という話だとおもいます 患者さんの状態を考えると一度説明したというのは免罪符にならないのですね

(提案)患者向けインプラント医療機器ガイドを作るーオンラインで情報入手

再発防止のためのわたしの提案は、糖尿病患者さんがプレートを使用するときのリスク情報を患者さんがいつでも入手できるようにしておくことです

プレートに注意しながらリハビリと日常生活を続ける生活はかなり長期です こんなときどうしたらよいか?という疑問は日々新たに湧くでしょう

患者さんの体調は毎日変化しますし、日常茶飯の疑問にいちいち医療者に相談するわけにもいきません そこで、プレートのリスク情報を患者さんや家族がオンラインでみられれば助かるのです

医薬品の副作用については患者向け医薬品ガイドや患者向け用語集が提供されています この仕組みを参考にして患者向けインプラント医療機器ガイドを作ればよいとおもいます

プレートのリスクについて患者さん向けガイドがあれば、プレートを装着した腕が動きにくくなってきたときに、すぐにネットで調べられます 

骨癒合遷延とか骨癒合不全とか偽関節といった難解な言葉は、患者向け用語集をみればよいことになります

・患者さんのつぶやき

患者さんはこんな風につぶやくのではないでしょうか?

患「糖尿病だとプレートにこんなに高いリスクがあるとはなんてことだ!」
患「プレートが真っ二つに折れたといわれてお医者さんに立腹した。転院すると言ってから会ってないけれど、手術をしても骨がくっつかないかもしれない? もう一度ちゃんと診てもらわなくちゃ」

・家族の話し合い

患者さんの状態をみて、家族のだれかがガイドを調べ、患者さんの日常生活や家族の協力について話し合うこともできるでしょう

家族はこんな風に言うかもしれません

家「お父さん、ネットでガイド調べてみたの。プレート入れたからって、元通りじゃないのよ。糖尿病だと特にね。このまま放っておくと再手術かもしれないわよ。」

患者さんの状態は急を要したり、正しい知識を早くもつほど身体へのダメージが小さいですから、24時間いつでもガイドをみることができれば実際上頼れるサポートとなります

家族の話し合いの質はぐんとアップし、適切な骨折治療への軌道修正につながるとおもいます 在宅ケアの質もアップしますね

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■(要因3)を除去する

つぎは、理学療法士さんのリハビリに関する(要因3)についてです

・理学療法士と患者の関係ー2つの場面

理学療法士さんと患者さんの関係で、患者向けインプラント医療機器のガイドは(要因3)の除去のため効果を発揮できると思います 

2つの場面を想像してみます ケーススタディの最終工程では存分に想像力を発揮して考えていいと思います

(場面1)リハビリ方針に関する医師から理学療法士さんに対する指示で、糖尿病患者さんに関する特別な注意事項が触れられていない

理学療法士さんは患者さんと直に接し、糖尿病の持病や状態を知るでしょう 理学療法士さんは患者さんにこんな風に言いながら、患者さんと良好な関係を作り、中断した医師につなぎ直すことができるかもしれません

理「患者向けガイドを見ましたよ。糖尿病の人は特に気をつけないと、プレートが折れたりしたら大変ですよ。リハビリメニューも無理がないようにしましょう。日常生活も無理しないでください。」
理「糖尿病の人は骨の状態をお医者さんによく診てもらって、リハビリに生かしていきましょう。リハビリの効果をあげるには、患者さんの受診が大切ですよ。」

(場面2)患者さんが転院して新しい理学療法士さんのリハビリテーションがスタートした

患者さんはガイドからプレートのリスク情報を入手して新しい理学療法士さんに渡すことができるでしょう  

患者さんは新しくリハビリを担当する理学療法士の先生にガイドを渡しながらこんな風にいうことができるでしょう

患「はじめましてどうぞよろしくお願いします。ご存知かもしれませんが、わたしは糖尿病の透析患者で、プレートのリスクはぜひこのガイドをみてください。今後の受診をどうしたらよいかも相談に乗ってほしいです。」

反対に、新しくリハビリを担当する理学療法士さんが自分でガイドを調べてリスク情報をリハビリメニューに取り入れ、患者さんに説明することもできるでしょう

理「ネットで糖尿病のプレートリスクのガイドをみて、メニューを作ってきました。慎重にやっていきましょうね。お医者さんに骨の状態を診てもらうことも必要ですよ。」

ガイドを使えば転院に伴って理解不足の間隙が起きない工夫ができると思います 

・医師と理学療法士の関係ーチーム医療

お医者さんと理学療法士さんの関係で(要因3)の除去のためにできることを探してみましょう 二人は同じ病院で患者さんの医療チームを組んでいます

(場面3)院内の廊下で二人がばったり会いやりとりする

理「先生こんにちは。プレートを入れた患者さんのリハビリのことなんですが。。」
医「なにかあったの?」
理「糖尿病のプレートリスクを理解できていません。プレートを骨格と勘違いして、三角巾はいらないといっています。骨癒合不全の可能性もわかっていなくて、レントゲンを受ける気もないようです。」
医「あの患者さんは紹介状を書いたあと来ないね。転院したんじゃないの?」
理「結局転院せず、わたしのリハビリだけを続けています。受診するように話してますがどうしましょうか?」
医「そうか。君との関係は良好なんだね。考えておこう。」

理学療法士さんが患者さんと良好な関係を築いていれば、医師の診療の再開につなぐ道が開けそうな気がします。

患者のニーズをとらえて良質のリハビリテーションを行うには、医師の指示を待つだけでは足りないと思います 理学療法士さんが積極的にお医者さんとのコミュニケーションを図り、情報共有して、チームの方針と患者さんのニーズ(医療的なニーズを含んで)が一致するように工夫できれば、(要因3)の除去につながると思うのです

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■まとめ

プレート骨折事故の再発防止のための提案をひととおり書いてみました

事故のシナリオを構成する3つの要因に糖尿病や良質なリハビリテーションというシナリオの外からのライトをあてながら、要因のひとつひとつを除去する方法について考えてみました

判決は争いを終局的に解決する方法と考えられています が、他方で判決はそこから事故をめぐる部分社会を見せてくれるドア(←前の記事で書いたコンビニのドアを話を思い出してください)でもあります

ドアから入ってコンビのハコのなかを回遊するうち、いろいろなモノが見えてきて、事故につながる部分社会を理解する鍵が見えてくるとおもいます

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こうして部分社会を切り取ることができれば、あとはその先に道なりに行けば再発防止策の発見が待っているとおもうのです

判決のケーススタディで部分社会を切り取ると発見があるというわたしのステートメントが少しは伝わったでしょうか? 少しでも伝わってくれたなら嬉しいです(^^♪

ここまでお読みくださってありがとうございました☆










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