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読書会のお知らせ あなたの読書の物語

人は、運命を避けようとしてとった道で、しばしば運命に出会う

Jean de la Fontaine

ごあいさつ

こんにちはこんばんは。はじめましての方にははじめまして。
次の読書会に向けて期間が空きそうなので少しまとめてみようかと思います。少し??
いつものことながら私の急な誘いにも関わらず作品に触れていただいた方がいるそうなので有難いかぎりです。
日程調整の都合、読書会自体は先の話になりそうなのでそれまでの繋ぎというか何でしょうね??とりあえずまとめてみました。健忘録かな?
原作と映画で相違点もあるのでそのあたりも詰めてみました。感想会のため、どちらか一方でも触れていれば会話に参加可能です。
日にちが決まり次第追ってご連絡します。未読未視聴の方でネタバレを気にしない方もぜひ、奮ってご参加ください。聞き専歓迎します。
※読書会はX(旧Twitter)で相互フォローの方に限らせていただきます。


課題図書/メディアの紹介

(小説) あなたの人生の物語 Stories of Your Life and Others / テッド・チャン(著)
この短編集に収録されているわずか104項の短編小説「あなたの人生の物語Story of Your Life」を扱います。
本の原題と短編の原題が違っているのがいいですね(翻訳版では同じタイトルになっている)

(映画) メッセージ(邦題)/ Arrival(原題)


あらすじ

ある日、突如として世界各地に浮遊物体が飛来した。異星人の来訪に世界中が混乱に陥る中、言語学者ルイーズは異星人とのコンタクトを担当するように国から要請を受ける。彼らが地球に来た理由を探るため、未知の生命体"ヘプタポッド"の言語を理解するにつれて、ルイーズにはある能力が備わってゆく。
映画版に関してはwikiにネタバレを含め詳細なあらすじが載ってます。↓


小説と映画の比較(ネタバレあるよ)

【登場人物】
ルイーズ・バンクス
大学で教鞭を執る言語学者
ヘラジカの声真似ガチ勢

ルイーズの娘
(小説) 25歳でロッククライミングの事故により亡くなる
(映画) おそらく小児がんで亡くなる

ゲーリー・ドネリー(小説) / イアン・ドネリー(映画)
物理学者

【異星人"ヘプタポッド"】

まぶたのない七個の眼が、ヘプタポッドの頂部をとりまいて配されていた。(中略)全集に眼が配されているから、あらゆる方向が等しく”前方”にあたっているのだろう。

(ハヤカワSF文庫)『あなたの人生の物語』旧装版 p.187

肉体の下面部に、連結した骨状の隆起にはさまれた開口部がひとつあることもわかった。(中略)ほかには明瞭な開口部はないので、おそらく”それら”の口は排泄孔を兼ねているのだろう。

(ハヤカワSF文庫)『あなたの人生の物語』旧装版 p.200

【ヘプタポッドのニックネーム】
(小説)ラズベリー、フラッパー
(映画)アボット、コステロ

【ヘプタポッドとのコンタクト方法】
(小説)
ルッキンググラス(姿見のようなもの)が世界各地に112隻飛来。
母船は軌道上に静止したままでルッキンググラスを通して鏡越しに異星人と対話する(テレワークかな?)。
(映画)
巨大な殻(異星人の母船:日本語話者には「ばかうけ」にしか見えない)が世界各地に12隻飛来。ばかうけに直接乗り込み、透明な壁を隔てて異星人と対話する。

【ヘプタポッドが地球に来た理由】
(小説) 明かされない
(映画) 3000年後に地球人の助けが必要になるため


用語・参考文献

内容を整理するにあたって知っておきたい概念、理論、仮説、参考文献をまとめました。
作中で言及されているとは限りませんのであしからず。

○ フラッシュフォワード flashforward / prolepsis(先説法、予期的叙述法)
「フラッシュバック(後説法、回想シーン)」が過去の出来事を思い出す現象なのに対して、「フラッシュフォワード」は未来の出来事が鮮明に脳裏に浮かぶ現象のこと。
ex) クリスマス・キャロル / ディケンズ

○ サピア=ウォーフの仮説(Sapir-Whorf hypothesis、SWH)/ 言語的相対論
「どのような言語によってでも現実世界は正しく把握できるものだ」とする立場に疑問を呈し、言語はその話者の世界観の形成に関与することを提唱する仮説。
「言語は認識に影響を与える思考の習性を提供する」とされる。
ウォーフの主張は脚色があり、派手めだったこともありしばしば批判の対象となった。

○ 使う言語が世界の見え方を決めている研究結果
動きのあるビデオクリップを見せ、その場面について説明するとき英語話者では行動の目的まで言及しないのに対し、ドイツ語話者では行動の目的も説明する傾向がある。
また、リスク判断の際に、バイリンガルは第二言語を用いて(言語を切り替えることにより視点を変えて)、より合理的な経済的意思決定を下す傾向がある。
世界の見え方そのものが、めちゃくちゃ変わるってわけでもなさそう。あくまで傾向だよねって話。

○ 左右、過去形・未来系の表現がない自然言語
【前後左右の概念が存在しない民族】
オーストラリア先住民族であるアボリジニの言語のひとつ、「グーグ・イミディル語」には前後、左右を指す言葉がない。じゃあどうやって道順とか示せばいいんだってなりますよね?彼らは地理座標を用いるそうです。東西南北で方向を伝えるのだとか。言語が思考にこれほどまで影響を与える実例のようなものが現実世界にあるんですね~
どうやって正確に位置情報を把握できるのでしょうか?地磁気でも観測できるのかな?犬みたいに。
【カンガルーの語源の俗説】
kangarooは現地語で「(何を言っているのか)わからない」を意味しない。
gangurruが変化して伝わったものと考えられている。直接的な意味は「跳ぶもの」

○ 生成文法 / 『言語理論の論理構造』『文法の構造』
ノーム・チョムスキーにより提唱された、ヒトが生得的に備えているとされる普遍文法(幼児期においてあらゆる言語を短期的に獲得できる初期状態)があるという仮説。

○ ニュースピーク(Newspeak、新語法)(『1984年』/オーウェル)
国民の思考を単純化するために、辞典の改訂版が出るたびに旧語法に由来する語の数を削減しており、オーウェルは作中で「世界で唯一、毎年語彙の数が減ってゆく言語」と述べている。

○ 三世の書(さんぜのしょ)
ある人が記した、過去と未来のすべての事象を記録された年代記。

自由意志、200ms(0.2秒)だけあるらしいっすよっていうインパクトファクター高めの論文を拾ってきました。

The point of no return in vetoing self-initiated movements

Schultze-Kraft M, Birman D, Rusconi M, Allefeld C, Görgen K, Dähne S, Blankertz B, Haynes JD. The point of no return in vetoing self-initiated movements. Proc Natl Acad Sci U S A. 2016 Jan 26;113(4):1080-5. doi: 10.1073/pnas.1513569112. Epub 2015 Dec 14. PMID: 26668390; PMCID: PMC4743787.

○ 多義図形(だまし絵)
ex)妻と義母、ウサギとアヒル、ルビンの壺

My Wife and My Mother-In-Law / W.E.Hill
Jastrow
Edgar John Rubin

○ 表義文字 semagram (semantic + -gram)
semantic(形容詞)「意味の、語義の、意味論の、意味的な」
表音でも表語でもない、発話された語と書記体に相関関係が見出されない、新たな文字体系。

○ フェルマーの原理
光は光学的距離が最短になる経路、すなわち進むのにかかる時間の停留点になる経路を通る、という原理。
ざっくり言うと、光は最短距離じゃなくて、最小時間になる経路を通るよ~って感じです。あのですね、僕は光じゃないんで「ファインマンの経路積分」とか理解してません。そこまで知りません。ご了承ください。

「違う違う。フェルマーの原理。『二点間を結ぶ光は、取りうるあらゆる経路の中で、最小の時間で到達できるルートを通る』っていうやつ」

 (中略)

「量子力学ではね、こう考えるの。光は、最小時間でたどり着ける経路だけを選んで進んでいるわけじゃなく、たどることが可能なすべての経路を、同時にたどっている、と。でも、『二点間を結ぶ最小時間で到達する経路』以外の経路をたどる光は、お互いに干渉しあい、打ち消しあう。その結果、『二点間を結ぶ最小時間で到達する経路』だけが残る。だから光はいつでも、もっとも短い時間で通れるルートを取っているように見える。
 そう。光りもまた量子であって、波と粒子の性質を持つのよ」

(電撃文庫)『紫色のクオリア』/うえお久光
(Kindle)『あなたの人生の物語』/テッド・チャン

○ 非ゼロ和ゲーム(non zero sum game)(win-win)
参加者の得点(利益)と失点(損失)の総和(sum)がゼロ(0)にならないゲームのこと。ex) 長期的株式取引、囚人のジレンマ(ナッシュ均衡)
ゼロ和ゲーム(win-lose) ex) 二人零和有限確定完全情報ゲーム(将棋、囲碁、チェス、リバーシ等)、麻雀、外国為替取引(FX)、競馬、パチスロ

○ ゴルディロックスの原理(松竹梅の法則)
3段階の選択肢があるとき、人間は真ん中の選択肢を選びやすいという心理的傾向。
イギリスの童話「ゴルディロックスと3匹の熊」に登場する少女ゴルディロックス(Goldilocks)が熊の家で飲んだ熱すぎず冷たすぎない、ちょうど良い温かさのスープにちなむ。

○ (アニメ)正解するカド /(原作)野崎まど
【あらすじ】

真道幸路朗(しんどう・こうじろう)は、外務省に勤務する凄腕の交渉官。
羽田空港で真道が乗った旅客機が離陸準備に入った時、空から謎の巨大立方体が現れる。
“それ”は急速に巨大化し、252人の乗った旅客機を飲み込んでしまう。
巨大立方体の名は「カド」。
カドより姿を現した、謎の存在・ヤハクィザシュニナは人類との接触を試みようとする。
カドに取り込まれた真道は、ヤハクィザシュニナと人類の間の仲介役を引き受けることになる。
一方、日本政府も国際交渉官の徭沙羅花(つかい・さらか)を代表として現場へ送り込む。
ヤハクィザシュニナとは何者か。そして彼の狙いは何か。

https://seikaisuru-kado.com/

異方人との外交、未知のテクノロジー等々お話の中盤あたりまではかなり楽しめました。終盤は、う~ん。
【異方のヤベー技術】
そもそも異方とは?
この宇宙の外の存在。人間に分かりやすい表現として高次元世界に例えられる。3次元世界と比較し、37乗倍の情報処理速度と37乗倍の広がりを持つらしい。は?
ワム
電力を無限に取り出す2つで対となっている球形装置。形状さえ合わせることができれば、素材を問わず製造可能。作中では折り紙から作られた。
サンサ
睡眠を不要にする装置。
一目見るだけで(映像などの間接的視認も含む)人類に異方を認識させる形状をしている。
ナノミスハイン
宇宙内部から操作を行うことにより宇宙の設定(物理法則)に手を加え、物体に触れることなく重力制御、慣性制御、質量制御等を行うことができるようになる装置。

○ (ハヤカワ文庫JA)あなたのための物語 / 長谷敏司

西暦2083年。人工神経制御言語・ITPの開発者サマンサは、ITPテキストで記述される仮想人格《wanna be》に小説の執筆をさせることによって、使用者が創造性を兼ね備えるという証明を試みていた。そんな矢先、サマンサの余命が半年であることが判明。彼女は残された日々を、ITP商品化の障壁である“感覚の平板化”の解決に捧げようとする。いっぽう《wanna be》は徐々に、彼女のための物語を語りはじめるが……。

『あなたのための物語』あらすじより

希望と絶望を同時に感じとれる生命倫理の物語ですね~……これだけでも記事書けそう。死の臨界点を記述した物語としては『ハーモニー』とか『know』あたりが個人から群衆に向けているのに対して、こちらは「死」についてさらに踏み込んでいてかつprivateなんじゃないでしょうか。


物語の始まりに

以上で、まとめは以上です。
確認用、健忘録としてご活用ください。
なんか、まとめすぎると課題図書の話ではなくなって言語学の話になりそうなのでこのくらいにしときます。参考図書めっちゃ削りました。
引用やエピグラフばかりで、ここには私の言葉はほとんどありません。でも、言葉の配置が新しいのです。たぶん
この記事書いてる時点では読書会はまだ先なので、物語は始まったばかりです。終わるまで終わらないよ。

追記/Palimpsest

削った参考図書、文献等を載せます。関連性の低いものも混ざっているかと思いますがご了承ください。

  • 因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか(文春e-book)ジュディア・パール(著)、ダナ・マッケンジー(著)、夏目大(翻訳)、松尾豊(監修解説・読み手)

  • 言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか(中公新書)今井むつみ(著)

  • ことばの発達の謎を解く(ちくまプリマー新書)今井むつみ(著)

  • 言語の力 「思考・価値・感情」なぜ新しい言語を持つと世界が変わるのか? ビオリカ・マリアン(著)、今井むつみ(監訳・解説)、桜田直美(訳)

  • "What Is it Like to Be a bat?", Thomas Nagel, Philosophical Review, pp. 435–50 repr. in Mortal Questions(1974).【https://www.sas.upenn.edu/~cavitch/pdf-library/Nagel_Bat.pdf】

  • related 【https://compass.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/phc3.12407

  • 「利他」の生物学 適者生存を超える進化のドラマ(中公新書)鈴木正彦(著)、末光隆志(著)

  • タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源(みすず書房)ピーター・ゴドフリー=スミス(著)、夏目大(翻訳)

  • メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生(みすず書房)ピーター・ゴドフリー=スミス(著)、塩崎香織(翻訳)

  • 翻訳できない世界のことば エラ・フランシス・サンダーズ(著)、前田まゆみ(翻訳)

  • ニルヤの島 (ハヤカワ文庫JA)柴田勝家(著)

  • know (ハヤカワ文庫JA)野崎まど(著)

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