見出し画像

エスパー魔美雑感(2) 「マミを贈ります」

(※)トップ画像は表題のエピソードから。本文でも触れています。


今回はエスパー魔美「学園暗黒地帯」の感想書きの予定でしたが、どうも文がうまくまとまらず。
つなぎとして「マミを贈ります」の感想をさらっと書いてみることにします。


さて、今回はネタバレ全開でいくつもりです。
というのも、なんとこのエピソード、丸まる試し読み出来てしまうんですね(^_^;)。

というわけで、未見の方はぜひこの話を読んでから先に進んでください!


「マミを贈ります」

(アニメだと37話「魔美を贈ります」。原作は「てんとう虫コミックス」8巻。「大全集」では5巻。初出は「少年ビッグコミック」1980年24号)

というわけで今回は「マミを贈ります」です。

この話を急遽持ってきたのは、これが印象に残るエピソードだというのもあるけど、上に書いたように原作を丸まる「試し読み」できてしまうことを見つけたからというのも大きいです(^_^;)。
この太っ腹のおかげで、ネタバレしまくりでこの傑作エピソードをレビューできる。実に有り難いことです。

さて、このエピソードのハートウォーミング具合は、全話とおしてもトップクラスですが、思えば随分「イカレた」話でもあります。

中学生の女の子が、自分の身を大学生の青年にクリスマスプレゼントとして捧げちゃおうという!

これを少年が読む分にはまだあまりピンと来ないでしょうけど。
もちろんF先生は性的含意も念頭に置いてこの話を作っていたことは疑いありません。
その意味で、これは当時でもかなり「アブナイ」ストーリーではあったのでしょうが。

むしろ「薄い本」文化であるとか、ネットに氾濫する良からぬ情報であるとか、そんなものに晒されまくって心の汚れてしまった(^_^;)今日の人の目にこそ、このエピソードはいっそう「刺激的」で「危険」なものに映る。……そんな気もします。

しかし、お読みになった人なら分かるように、この話はもちろん、単なる「際どいくすぐり」で終わる話ではありません。

そういう「際どさ」に踏み込むことで初めて表現できる人間の暖かさ、といったものを見事に描き出している。そこが重要なところなんですね。
世間知らずでお人好しな魔美が、クリスマスだからと発揮してしまう驚くべき自己犠牲精神。
この常識外れな善意が読者の胸を強くうつのです。

そう、魔美はいつだって周りの人に、ささやかだけど幸せな夢を見せてくれる少女なのです。
そして大切なのは、全エピソードとおして、その「夢」がその場限りのものでなく、その先へ向かおうとする勇気を与えてくれる、そういう種類のものであるということなのです。

このエピソードを久しぶりに読み返して、地味ながら素敵だなと思ったのが、トップ画像に使った高畑くんのセリフ。

ありきたりのようではあるんだけど、それが一周回ってしみじみと味わい深い。
そんなことを今回感じました。
今後の自分の座右の銘にしようかしらん。

なお、このセリフは一ページ後にある魔美のセリフときれいな対になっていて(詳細は各自でご確認ください)、ストーリーの上では魔美と高畑くんが本質的に似たものどおしであることも示しています。

オチに使われたプラモデルはもちろん「Star Wars」のミレニアム・ファルコン。こっちのシリーズも今日まで人気を保ってくれているおかげで、最近の読者にも謎の時事ネタにならずに済んで良かったかなと(笑)。

さて、このエピソードを今日読むと、青年の悩みの内容に、逆説的に「総中流」の日本の豊かさが感じられて、なんだか複雑な気分になったりも。

幼少時から受験戦争に明け暮れ、それに勝ったはいいけれど、いざ勝ってみると、今後の人生でやるべきことすべてが(言わば)「予め決められている」。そのことがありありと分かってしまった。「自分の人生」はどこにもない。あまりに虚しい……。

こういう気持ちは青年の抱える悩みとしては大変普遍的で、もちろん理解できます。できるのですが……。

今日の若者には、ひょっとしたら浮世離れした理解不能の悩みと映るのかも、なんてことも思ってしまうのでした。
「それなりの運と実力がなければ歯車にさえなれない」というのが今日の青年の悩みなのでしょうから……。


仮にこのエピソードに不満を求めるとするならば、ストーリー上、ひどく非現実的な箇所が見受けられることでしょうか。

だってそうでしょう? もしこんな天使のような女の子がいきなり窓から飛び込んできて、しばらく一緒に暮らしてもいいなんて言ってくれたら。即プロポーズするしかありえないじゃないですか!!??
(え、私のほうが現実的じゃない? 固いことは言いっこなしです。)


最後に、今回もお約束的に以下のサイトを貼っておきます。

アニメ版エスパー魔美(abema)

てんとう虫コミックス

藤子・F・不二雄大全集



この記事が参加している募集

マンガ感想文