カッコいい走り方

　なぁ、ネネ。
　俺な、ネネに聞きたいことがあるねん。

　この走り方どう思う？
　ちょっと見ててな。
　……どう？

「おもしろいな」

　はぁ？おもしろい？
　おもしろいってなに？
　カッコいいの間違いやろ。

「いや、おもしろいな」

　はぁ〜あ。
　ネネにはガッカリや。
　このカッコよさがわからんとか。
　考えらへん。

「じゃあ、どこらへんがカッコいいの？」

　説明せなわからんか。

　……あのな？いつもはこうやって走ってるねん。

　回し車に乗ったら……こうやってな、こうやって走ってるねん。
　そんでな、思い出したように止まるねん。

「うん」

　でな、新しい走り方がな……

　ーーこれやねん。
　だんだんスピード上げていってな、そんで疲れてきたらパッと止まるねん。

　ーーあ！顔はこうな！

「それのどこがかっこいいの？」

　え、かっこいいやん。

　……こうやで？

「わかった。わかったから顔をこっち向けたまま走るのやめてくれへんかな。ミッフィーちゃんみたいでめっちゃおもしろい。そんで危ないから。」

　ミッフィーちゃん？
　誰それ。どこの人？

「外国の人」

　俺と同じ走り方すんの？

「走りはせんけど、いつもこっち向いてはるから」

　ミッフィーさんも走ったらええのにな。

「あんまり走ったりしはれへんの。落ち着いてはる人やねん」

　そうなんや。
　俺は走るの好きやけどな。

　……ほら？

「だから、前向いて走ってって言うてるやん。もうわざとやってるやろ」

　ネネはいちいちうるさいな。
　そしたら、カッコいい走り方するからもう一回見ててな。動画撮りたかったら撮ってくれてもええで。

　いくで、見ててな？

　ーーどう、カッコいいやろ？

「あっ……めっちゃカッコいいからお言葉に甘えて動画撮らせてもらうわ」

　ーーふぅ。疲れたわ。
　でも、いい走りが出来た気がする。
　今までで一番かっこよく走れた気がする。

「ほんまやな」

　なぁ、ネネ。
　動画、観せてくれるかな。
　今後の参考にしたいねん。

「いや、いい走りやったと思う」

　そうやろ？なぁ、観せてや。

「んもぅ、100点やった」

　じゃあ、観せてや。
　何で観せてくれへんの？

「……」

　観せてや。ネネ。

「……」

　ーーえ、嘘やろ。もしかして心霊動画？
　嘘やん、そんなん嫌やで俺。そういう系の話、無理やから。
　うわぁ、マジか。やっぱりほんまにあるねんな、そういうことって。

「……あー、心霊動画ではない。でも映ってはいけないモノは映ってる」

　もう、なんなん！
　そういう言い方が一番怖いねん。
　ハッキリ言うてや！

「ショック受けなや？……コレなんやけど……」

　ーー怖いな。
　やってもてるな。……またやってもたか。
　映ってる。怖いな。

　そんでめっちゃ恥ずいな。俺こんなカッコいいのにウンコと走ってるとか。

「トイレでウンコする練習しよか」

　俺はそういうのできひんネズミなん知ってるやろ。

　そんでな、やっぱ走ってる時は力が入ってまうねん。だからしゃあないやろ。意地悪やな。

「ちなみに最初の時もウンコと一緒に走ってたで」

質問しがちなネズミとのひととき