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お通夜の夜

夫が昔お世話になった会社の人が亡くなった。
お通夜に行くという夫にふくさや香典袋、数珠を用意する。

夫は冠婚葬祭のマナーに無頓着なほうだ。
なぜか子どもが藍染め体験で染めた絞り染めのハンカチを持っていこうとしていたのでお葬式用のものを渡す。

遠方のため帰りは夜中を過ぎるから駅からチャリで帰るという夫を説得して車で迎えに行く。
悲しいお別れをしてきた人を寒い夜中に1人で帰らせるのはいやだ。

帰りの車の中で話を聞く。
あっけないくらいすぐ終わって泣く暇もなかった。奥さんと話したら覚えていてくれた。一緒にフットサルをしたことのある息子さんがすっかり大人になっていて驚いた。

家に着いて塩かけようか?と聞くと別に悪いことじゃないからいいと言う。

着替えて軽く食べて落ち着いたのを見て先に寝室にいって布団に入る。
亡くなった人はまだ50代だったという。
夫もそんなに早く死んだりするのだろうか。

結婚するとき夫に「私より先に死んだら許さない」と言った記憶がある。夫は「分かった」と言ったので安心して結婚した。
今となっては夫を残して死ぬ方が心が休まらないので夫より長生きしたいと思っている。

喪主として夫のお葬式で挨拶する私。
着物?洋服?髪は白くなっているのか?
来てくれた人に何を話すのだろう。
できれば笑い話を挟んでもさしつかえのない死に方をしてほしい。
目をつむったまま考えていると涙が出てきてすぐに止まった。

お葬式のあと私は誰かに言うだろうか。
悪いことじゃないから塩はまかなくていいと。

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