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「※日本映画(ジブリ映画やアニメ、漫画、小説原作の作品は除く)」を見ている日本人に人生で会ったことがない(映画関係者は除く)

 日本映画を見ているのは誰なのだろうか。映画好きを自称していた高校時代からずっと感じている疑問である。(※ここで言う「日本映画」は、黒澤明監督の映画や、小津安二郎監督の映画などの名作とされる映画、「男はつらいよ」シリーズや「学校」シリーズなど、山田洋次監督などが何十年にもわたり、国民的に著名な俳優を起用して、しっかりと予算をかけて手がけたと思われる「日本映画」は含みません…まず、ミニシアター「のみ」でかかり、ヒットしたのちに時折全国に広がる、自主制作に近い日本映画をイメージしています)


私は日本映画界を応援したい。北野武監督の「ソナチネ」「キッズリターン」は人生を変えた映画だった。是枝裕和監督の「幻の光」「ワンダフルライフ」「誰も知らない」「万引き家族」、橋口亮輔監督の「ハッシュ!」「ぐるりのこと」「恋人たち」、西川美和監督の「ゆれる」「すばらしき世界」、深田晃司監督の「ほとりの朔子」「淵に立つ」、砂田麻美監督のドキュメンタリー「エンディングノート(滝のように涙が出た)」、濱口竜介監督の「ハッピーアワー(長いのに一切飽きなかった!)」、黒沢清監督の「アカルイミライ」「トウキョウソナタ」、河瀬直美監督の自伝的な作品「につつまれて」、「萌の朱雀」、森達也監督の「A」「A2」「FAKE」これらの”脚本が破綻していない””最後まで飽きずに観られる”日本映画は掛け値なしに面白く、一人でも多くの人に見て欲しいと思っている。

しかしながら、映画研究者になった大学の同級生の友人と、映画の配給会社に勤めた先輩以外、中学、高校でも、日本映画は、誰も見ていなかった。大学では映画好きな人が多く、日本映画を見ている人もいた。しかし、社会人になってから、本当に、身の回りで、誰も見ている人がいないのである。恐らく今自分が働いている(若干残念な)自分の職場で、「お客様の中にお医者様はいらっしゃいますか?」と言った体で、これらの映画を見たことがある人がいますか?と手を上げさせたら、誰も見ていないと思う(正確にいえば早稲田大学の第一文学部卒だった先輩が見ていた。「コピー機」を信じられずに目視でコピーされた原稿を確認するという伝説を残した、大変に神経質な女性だったので、まさか西川美和作品について熱く語れるような方だとは思わず、退職直前の今はなくなった神田の飲み屋で語った時は、もっと早く映画の話をすればよかった、と後悔した。コピー機を信じられなかった先輩お元気ですか?

自信を持って言える。誰も見ていない。日本映画の名作を、「誰も知らない」!

 カンヌ映画祭受賞作品が面白い!と感じて、クエンティン・タランティーノに傾倒した高校時代、クラスメートの誰に聞いても、ジブリ映画、エヴァンゲリオン(初代)劇場版、ドラえもんの映画以外の日本映画をみている人は一人も、いなかった。たまにテレビでやっていた伊丹十三監督の「マルサの女」「スーパーの女」などは、今ならいろんな解説を読んだりしてワクワクウキウキ見られるが、高校生だった頃に、あまり見たいと思えるような映画ではなかった。唯一、数人が見ていた作品は「スワロウテイル」など、岩井俊二監督の映画だったと思うが、「どうだった?」と聞いたら、「なんか、あんまり面白くなかった」と言っていた。「スワロウテイル」は中国語学習を一緒にしていた台湾留学友達同士で見たかもしれない。見たっていう話をしたのかもしれない(記憶が曖昧)。
ちなみに「スワロウテイル」の中の三上博史の中国語は、発音がかなり上手で、すごいレベルなのです!ちなみに、先日、20年以上ぶりに思い出したが、台湾の同世代の友人たちは岩井俊二監督の「Love Letter」が信じられないほど、熱烈に、好きであった。セリフを暗記するほど好きであった。どうやら中国、韓国にも、大好きな人が多いらしい。あの熱量で、私と同世代の日本人が岩井俊二監督の作品を好きかというと、ちょっとよくわからないところがある。岩井俊二監督の作品は、とても綺麗で、10代の頃の揺れ動く気持ちを描いているような繊細な作品が多いので、殺伐とした社会人となると受け入れ難いというか、綺麗で繊細過ぎるものは、こ汚い社会に適応しなければいけない自分としては、どうしても若干抵抗を感じてしまう、というのが本音のところである。

「ハリウッド映画ばっかり見ていたから、雑誌の記事を参考に、レンタルして日本映画を見てみたけど…、なんか、あんまり面白くなかった。よく分からなかった。」

「ハリウッドの映画の方が、ずっと面白い。」

 当時はレンタルビデオ隆盛時代で、レンタルをせずに映画を見る手段は、テレビの金曜ロードショー(的な映画番組)をビデオに録画する(3倍モードでたくさん録画する)方法が、最も主流であった。再度上からかけるように、鉛筆でタイトルを書くのがコツだった。私は、親のいない時間帯あるいは寝静まった時間帯に、頑張って日本映画を見た。東北名物「ほや」や、日本が誇る珍味「くさや」の美味さが分かるようになりたいと思うような感覚である。なんか暗いしボソボソしゃべるし何が面白いのかあまり分からない。珍味で例えるなら、苦いし、臭みもとても強い。でも一部夢中になっている人がいる。彼らはこの独特な味をどうやって美味しいと思っているのか、その美味しさを知りたい。必死に臭みを我慢して、珍味を食べていくような感覚であった。

 そんな中、ハリウッド映画やカンヌ映画祭受賞作品、などに傾倒して淀川長治さんの本を頼りに名作映画を必死に見ていた私にとって、最も「見たいと思えない」映画、それが「日本映画」であった。カンヌ映画祭で賞をとった今村昌平監督の「うなぎ」も見た。妙に、エロいシーンだけが、記憶に残っている。「うなぎ」が面白いのかは、よく分からなかった。
(※繰り返しますがここで言う「日本映画」は、大手配給会社が手がけた有名な作品は含みません・・・「うなぎ」は大手の企業が関わる大規模公開の映画だったかもしれませんが・・・私がここでつまらなさについて指摘したいのは、まず、都内のミニシアター「のみ」でかかり、ヒットしたのちに時折全国に広がる、自主制作に限りなく近い、インディペンデントな日本映画をイメージしています)

 なぜ日本映画を見たいと思えなかったのだろうか。映画好きとして、日本映画を応援したい一人の客として、率直にその思いを記す。

 日本映画は、妙に暗い。分かりにくい。伏線が回収されない。テンポが悪い。妙にエロいシーンが出てくる。精神を病んだ女性がやたら出てくる。エロいシーンが、気まずい。セリフがつまらない。眠くなる。暗い(二回目)。やたらヤクザばかり出てくる(「すばらしき世界」にも出てくるけど、「すばらしき世界」はすばらしかった)。やたら、意味もなく殺し合いがある。とにかく制服の女子学生を出す。言い争いのシーンが多い。とにかくヌメヌメしている。つまらない。テンポが悪い。つまらない(二回目)。脚本がひどい作品が多い。脚本を客観的に見ているスタッフが恐らくいない。音楽がポヤンポヤンしている。

自分の日常の延長上にある、おっさんが牛耳っていて制服を着ている女性のオフィスの描写などがあると、普段感じる仕事のストレスなどを思い出して、心から、うんざりする。

偉そうだろうか。ええ、偉そうだ。製作者がどれほど苦労して作ったかは知らない。お金の苦労も知らない。でも本当に、心から、思う。つまらないのだ。ハリウッド映画を1800円払って見るなら、日本映画には18円くらいの価値しかない。そりゃそうだろう、製作費が桁違いなのだ。スタッフの力量が違いすぎるのだ。全てのシーンを、綿密にマーケティングの手法を用いて、観客の視線まで分析しているらしいディズニー映画、ハリウッド映画と同じ料金を払う価値はあるのか。18円でも見たくない。なんなら見た後、粗品が欲しい。うまい棒コーンポタージュ味をおまけにつけて欲しい。10本つけてほしい。アソートパックでもいい。うまい棒は裏切らない。意外と腹持ちがする。焼き鳥味の再現具合にはたまげた。うまい棒と比較するのはジャンルが違いすぎて比較しづらいかもしれないが、うまい棒は一本の値段に比べて満足度が圧倒的に高い。昨今の日本映画のつまらなさは、筆舌に尽くしがたい。有名な俳優が出ていても、大手企業が制作していても、本当にゲンナリするような作品だらけなのだ。多くの作品は、脚本が酷すぎるのだ。

韓国映画が劇的に、猛烈に面白くなっている2022年において、日本映画を見る理由が、全くない。だって、つまらないから。暗いから。見終わった後に気分が悪くなるから。暴力シーンが多いから。レイプシーンも多いから。女性差別的な映画が多すぎるから。内輪すぎるから。脚本が破綻しているから。

 恐らく、私は同世代の日本人の中で、最も日本映画を一生懸命見てきた人間の一人であると思う。人生をかけて映画を見てきた。それでも、本当に憂いてしまう。永瀬正敏と、役所広司と、浅野忠信ばかりが出てくる日本映画界には、未来がないと。私は、永瀬正敏と役所広司と浅野忠信は天才だと思っているが、彼らはCMなどで生活費を潤沢に稼いだ上で、一切、お金にならない、自主制作、卒業制作に近い劣悪な制作環境の日本映画に、彼らの想いだけを頼りに出演しているかのように見える。

 中学校や高校の部活動の方が、なんなら日本映画よりもしっかりと才能を選抜し、本当に能力のある人々を活躍させるような運営ができているのではないか。全国大会に出るための日々の努力を想像してほしい。独立系日本映画界は、「産業」として成立していない。構造が破綻している、「趣味」の世界である。

 部活動以下の活動で、どうやって世界と戦うのか。日本映画の今後に対して、「アカルイミライ」は全く見えない。映画を愛するただの観客として、上から目線ではあるが、この思いを率直に記したい。


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