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全世代におすすめしたい。BEAMS社長・設楽 洋が観た『浅草キッド』

著名人の方々にネトフリで観た作品を聞く連載「ネトフリでなに観てますか?」。今回のゲストはBEAMS(ビームス)社長の設楽 洋さん。日本のファッションを牽引するセレクトショップ、その代表である設楽さんがセレクトした作品は、ビートたけし氏の同名小説を劇団ひとり監督が映画化した『浅草キッド』です。(ネトフリ編集部)

設楽 洋
1951年生まれ、東京都出身。株式会社ビームスの代表取締役社長。(Twitterアカウント: @TARAcyan3、Instagramアカウント: @taracyan3)

『浅草キッド』は全世代が楽しめる作品

僕は平日の夜にNetflixを観ることが多いです。会社では忙しいので帰宅してからメールチェックをするのですが、その流れでいろんな作品をリラックスしながら観ています。作品に興奮して寝れなくなっちゃう時もありますけどね(笑)。休みの日には、女房に付き合って韓国ドラマを観ることも多いです。

今回選んだ『浅草キッド』はストーリー性が強くコメディー的な部分もあるので、自分の好きなものが両方入っている作品です。そして、全世代が楽しめる作品だと思います。僕は1951年生まれの団塊ちょいあとなので、作中で描かれている浅草はドンズバの世代です。たけしさんのオールナイトニッポンにもハマっていましたしね。

あの時代を体験したからこそ、『浅草キッド』における当時の浅草を再現したCGや美術は本当にすばらしいと思いました。というか、まったくCGに見えないですよね。僕は新宿生まれの新宿育ちで親父が芸人が好きだったことから、子供の頃そういう劇場によく連れて行かれていたんです。新宿だと末広亭だとか、浅草だとデン助劇場(浅草松竹演芸場)などですね。まだ子供だったのでフランス座には入れなくて、ポスターをドキドキしながら見るだけでしたが、『浅草キッド』を観てそういう記憶が蘇りました(笑)。

でも、あの時代を知らない若い世代にとっては逆に新鮮な要素がある作品なんじゃないかと思います。最近は人付き合いが薄くなっていますが、だからこそ『浅草キッド』が描いている濃い師弟関係や人間関係に、キュンとできるんじゃないでしょうか。

”師匠”の言葉に感動。誰もが参考になる考えがここにある

『浅草キッド』はビートたけしさんの青春時代を描いた自伝的作品ですが、その後のたけしさんを作り上げたであろうものが、すごくよく描かれていましたよね。そして、たけしさんの映画でもあるし、その師匠である深見千三郎さんの映画でもある。むしろ師匠を立てて、師匠を主役にするぐらいの映画だったと思うので、そこにジーンときましたね。

師弟関係の描写として印象に残ったのが、深見さんの「バカヤロー」ですね。たけしさんの言う「バカヤロー」が、師匠から来たものだとすごくわかりました。と言うのも、深見さんの「バカヤロー」の言い方がその時々で違うんですよ。本当に怒っている時と、愛情を込めて行っている時とで全然違う。その「バカヤロー」のバリエーションは、今のたけしさんにも受け継がれていますよね。

そしてキャストですが、柳楽優弥くん、ものすごい見事でしたね。特に目の動きだとか、首の動きだとかは、本当にたけしさんを想像させるすばらしいものがありました。師匠への愛情を感じさせる演技も良かったです。逆に深見さんを演じた大泉洋さんも、弟子に対する愛情を感じさせてくれましたね。

他にも鈴木保奈美さんが演じた、深見さんの奥さんである麻里さん。着物の着こなしや髪型など、大人の色香が漂っていて素敵だなと思いました。そして格好良かった。旦那に芸をさせるために貧乏していてもがんばる姿には、昭和の格好いい女の姿を見せられた気がします。

そして監督を務めたのは、劇団ひとりさんです。彼はたけしさん大好きな人ですから、相当なプレッシャーだったと思いますよ。強い愛情を持ちながら、ものすごい時間をかけて構想して、その愛情があふれた映画を作り上げましたね。彼の演出と脚本のすばらしいところとして、たけしさんの下積み時代のものすごい苦労を、シーンとしてはそこまで描いていないのにも関わらず、伝わってくる部分が挙げられますね。「深いな」と思いました。

また、全体的に会話がオシャレな作品でしたが、深見さんが「芸人は洋服に気を使わなきゃいけない」と説教をするところが良かったですね。「腹が減ったのは見えないけど、洋服は人から見えるんだ」と。BEAMSはファッション業界の会社ですけれども、あの時代にそういうことを言っているおしゃれな人がいたんだなと驚きました。深見さんは北海道生まれですけども、台詞の一言一言に江戸っ子気質というか、いろんな人たちから「師匠」と言われるものをたしかに持っているのを感じました。

他にも「芸人は何か一芸を磨かなきゃいけない」といった言葉も良かったですね。我々BEAMSと芸人とでは全くジャンルは違いますけれども、どんな業種であっても参考になる考えだと思いました。

僕はこの『浅草キッド』、もう3回も観ているのですが、「このシーンはもしかして」なんて気付きや発見が毎回ありますね。深見さんは漫才のことをすごくバカにしていましたが、たけしさんが漫才でブレイクした後に映画を作ったり絵を描いたりとクリエイティブな活動をしたのには、深見師匠の軽演劇へのこだわりが布石としてあるんじゃないかと思ったり……。

それからもう一つ、たけしさんは弟子に殿と呼ばせたんですよ。逆に言えば、師匠と呼ばせなかった。それはもしかして「師匠は一人」だという意識があったんじゃないかな?なんて勝手な想像をしてました。何回も観て、そういうことを考えるのも楽しいですよね(笑)。


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