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私家版ゲームオブザイヤー2022

まずハッキリ言っておく。2022年はゲームの当たり年だった。

AAA級からインディーズまで、個性豊かで手触りのいいゲームが多かったように思える。どのゲームを遊んでも超絶面白かった……とまでは言わないものの、打率でいえば体感で4割は余裕で超えているといっていい。伝説のバッターのような一年だった。

夏からゲーパスことXBOX GAME PASSに加入し、PC限定とはいえ手に取れるゲームの数がケタ違いに増えたのもいい方向に働いた。これのおかげで、旧作から新作に至るまで良質なゲームに出会うことが増えた。俺はマイクロソフトの回し者ではないが、ひと月1000円足らずでメジャーなゲームがだいたい遊べるゲーパスはかなり"使える"。保証しよう。結局、数撃ちゃ当たるのだ。

このゲーパスに問題があるとすれば、積みゲーがこれまで以上に加速してしまうことだ。ゲームひとつひとつに金を払っていないために、冒頭10分でつまらないゲームはついつい後回しにしてしまう。後回しにされたゲームが二度と遊ばれない確率は、刑事裁判が有罪判決になる確率とほぼ同じだ。

サブスク全盛の現代ではイントロが長い曲は人気が出ないとかいう与太話がまことしやかに囁かれているが、これはむしろゲームにこそ当てはまるんじゃないかと俺は密かに疑っている。

……このままゲーパスの話を続けていると本当にマイクロソフトの回し者になってしまうので、本題に移ろう。

NeverAwakeManによる、独りよがりなゲームオブザイヤー2022。これまではトップ10を書いてきたが、さすがに芸がない気がしてきた。なので、今年は様々な切り口からの部門賞と、総合一位としてのGOTYを選ぶこととする。したがって、必ずしも面白いゲームだけが選ばれるわけではない。また、選考対象はあくまで俺が2022年に遊んだゲームであり、2022年以前に発売された作品が含まれることにも注意だ。

それでは発表しよう。ドラムロール!

Best "Chill" Game - 『オリオリワールド』

"チルいゲーム"というのは多くの場合、"プレイはしょうもないけど雰囲気は落ち着いてていいゲームだよね"をオブラートに包んだ表現にすぎない。しかし、『オリオリワールド』はそれに当てはまらない稀有な作品だ。ポップでピースフルな見た目とは裏腹に、このゲームは高速2Dアクションを存分に楽しませてくれる。

本作の素晴らしいところは、プレイヤーの失敗を許容する懐の深さだ。スケートボードを題材にとったゲームでは着地にすら気を使うことが多く、コケたら終わりの一発勝負がしばしばストレスのもととなる。けれど、『オリオリワールド』ではそういう繊細な操作は決して必要条件ではない。着地でボタンを押すタイミングがズレても滑り続けられるし、高度なトリックでカッコよくキメるかどうかは常にプレイヤーの選択にゆだねられている。また、コース上には細かくチェックポイントがあり、ミスしても何度でもやり直せる。

スケートの神々によって作られた理想郷オリオリワールドは、何人たりとも拒まない。先へ進むために必要なのは、コースを楽しく滑りきることだけだ。気楽で奥深いプレイフィールとローファイなサウンドトラックが醸し出す、至天のチルを味わおう。

Best "Violent" Game - 『ULTRAKILL』

FPSというジャンルにおいて、プレイヤーを評価する基準は長い間変わらなかったように思える。ノーデスでクリアするとか、クリアタイムが早いとか、難易度ベテランをクリアするとか……せいぜいその程度だ。『ULTRAKILL』はそうやって凝り固まっていたFPSに『デビルメイクライ』風のスタイリッシュランクシステムを持ち込んだ点で画期的ともいえるゲームだ。ちなみに、開発者は実際にこのゲームのことを『Devil May Quake』と表現している。

『ULTRAKILL』では敵の殺し方によってポイントが加算され、格付けされる。ランクは"Destructive"に始まり、"Chaotic"、"Brutal"と続き……最高位はそのタイトルと同じく"ULTRAKILL超殺戮"だ。

コールオブなんたらのように地上をノロノロ動いて遮蔽物から敵を一匹ずつチマチマ撃つようなダサい真似をしていると、ウルトラキルには一生辿り着けない。壁蹴り、ダッシュ、スライドジャンプその他諸々を駆使して縦横無尽に飛び回り、跳弾や爆発でスタイリッシュかつ惨たらしく殺すことが、勝利と高ランクに繋がる。体力が足りない?それなら敵に密着してショットガンをぶっぱなし、新鮮な血しぶきを浴びよう。体力の半分くらいなら余裕で回復するはずだ。

プレイヤーは己の殺意と創造性を披露し、ゲームはそのバイオレンスを正しく評価する。俺の知る限り、この遊び方を実現したFPSは『ULTRAKILL』をおいて他にない。

Best "Too Cinematic" Game - 『Trek to Yomi』

映画のようなゲーム。この比喩はもはや陳腐すぎて何のセールスポイントにもならない。ゲームである以上それはなんらかの形で遊べなくてはならず、そこにゲームならではのインタラクティブな快楽が存在すべきだと誰でも理解しているからだ。

『Trek to Yomi』は、その点で見事なまでに失敗したタイトルである。

モノクロにこだわり抜いたグラフィック、言葉遣いの端々まで行き届いたローカライズ、日本神話と武士道の両方に触れるストーリーはたしかに魅力的だ。しかし、黄泉への道すがら敵を切り捨てるゲームプレイは歯軋りするほどつまらない。刀で人を斬るゲームなんて1000000000個くらいあるだろうに、その最底辺に位置するレベルでアクションが気持ちよくないからだ。

黒澤映画は好きだがゲーム作りは下手な人間が作ってしまった、"映画的すぎる"ゲーム。それが『Trek to Yomi』だ。

Best "Ongoing" Game - 『GUILTY GEAR -STRIVE-』

格闘ゲームは、プレイヤーにもっとも苦労を強いるジャンルのひとつだ。鍛えたエイム力は他のタイトルでもだいたい応用が利くものだが、格ゲーはキャラを変えるだけでも難儀する。だいたい、実戦で上達する前にトレーニングモードにこもるのが当然・・とされるジャンルは格ゲーくらいじゃないか?

格ゲーはくたびれた社会人向きではない。しかしながら、『GUILTY GEAR -STRIVE-』(GGST)は俺と格ゲーの紐帯をこの一年に渡って結び続けてくれた。ブリジットに釣られてやってきた大量の新規プレイヤーがウソみたいに消えてしまった今も、俺はぼちぼちランクマッチを続けている。

『GGST』以上にキャラクターの個性が際立ったゲームはない。ヨーヨーで殴る男の娘とギターをかき鳴らす魔女と棺桶をブン回す国防長官と黒人サムライ吸血鬼がひとつのタイトルに同時に存在するなんて、普通ありえなくないか?だが、それがギルティギアだ。

これらの登場人物は外見だけでなくゲーム的な性能もそれぞれ色々な方向に尖っていて、単純なキャラランクが意味を為さないのが面白い。カウンターヒットから7割減るような豪快すぎるダメージ設定も爽快感があって、やみつきになってくる。それでいて決して大味とは思えないのが、ギルティギアの不思議なところだ。

そして、なにより音楽だ。これがもう……たまらない。プレイアブルキャラクターが追加されるたびにそのキャラの超カッコいいテーマ曲も作られるので、ギルティギアでは新キャラ追加の嬉しさが通常の2倍、いや20倍だ。

Best "Friendly" Game - 『Neon White』

思うに、タイムアタックを苦手とする人が多い理由のひとつは、一切のミスを許さない狭量さにある。『Neon White』は、ショートカットを可視化するという大胆なデザインによってタイムアタックという遊び方の門戸を開け放った作品だ。

このゲームの魅力については既に書いたことがあるので、詳しくはそちらを参照してほしい。以前の記事にあえて付け足すなら、『Neon White』にイージーモードがないのは掛け値なしの偉業であるということだ。クリアできる人を増やすことのみを"間口を広げる"と呼ぶなら、無限にジャンプできるとか死ななくなるといったイージーモードを実装するだけでよかっただろう。

だが、『Neon White』はそんなチープなやり方で己の価値を貶めるような真似はしなかった。自らのレベルデザインと難易度曲線をしっかりと研ぎ澄ませ、それに全幅の信頼を置いたのだ。イージーもハードもなく、あらゆるプレイヤーは同じコースを同じ条件で走る。ハイスコアを生むのは単純な操作テクではなく、コース構造の理解と機転にある。この選択はリスキーだっただろうが、しかし、見事に成功した。『Neon White』は2022年に俺が遊んだ中で最も優しく、ユーザーフレンドリーなゲームだ。

あと、BGMがマジで良い。

Best "Political" Game - 『ディスコ エリジウム』

おまえは記憶を失っている。世界は寄る辺となる思想を失っている。木に吊るされた死体は、降ろされるすべを失っている。ここはレヴァショール。共産主義革命がボロボロに失敗し、資本主義体制がグズグズに腐敗した、負け犬の街だ。

『ディスコ エリジウム』はこれ以上ないほどのドン詰まりから始まる。記憶喪失に加えてアル中でヤク中の中年刑事の脳内には24もの異なる思考が乱れ飛んで喧しく、ゲームの舞台について親切な誰かがわかりやすく教えてくれるようなこともない。ハリー・ポッターの原作全7巻を合わせたよりも多い膨大なテキストをなんとか噛み砕きながら、プレイヤーはこの世界をじわりじわりと理解することになる。言うまでもなくこれはとてつもなく大変な作業ではあるが、本作のテキストは硬い骨付き肉のようなものだ。噛みしめていくうちに、そこに確かな旨味を感じられるようになる。

また、『ディスコ エリジウム』は大衆娯楽全般で避けられがちな政治思想を前面に押し出した珍しいタイトルだ。右翼、左翼、無政府……数多の主義思想が、知的で皮肉っぽい視点から語られる。このゲームが生まれたエストニアという国の苦難の歴史や、このゲームを作ったアーティストのワイルドな経歴を考えると、むべなるかなといった感じだ。

『ディスコ エリジウム』の全体に漂うこのシニカルさは虚無主義ニヒリズムに片足突っ込んでいるようで、個人的には賛成できない。こうしたメタ認知仕草はつまるところ、レヴァショールにごまんといる負け犬連中が酒とドラッグで酩酊しながらブツクサやる類の諦観を内面化しているにすぎないからだ。

……とはいえ、このタイトルが歴史に残るアドベンチャー/ミステリー/RPGであることは疑いようのない事実である。本作のワード量を超えることすら、凡百のゲームには難しいだろう。

Best "Combat" Game - 『SIFU』

徒手空拳の近接格闘Hand to Hand Combatはアクションゲームの鬼門だった。正確に描くと地味すぎて見栄えがよくないし、かといってエフェクトを盛りすぎると何が起こっているのか把握できず、駆け引きそのものを粗悪にしてしまう。『SIFU』は近接格闘におけるこれらの問題を解消しつつ、アクションのケレン味とリアリティを両立した傑作だ。

『SIFU』はプレイヤーの傲慢を許さない。ジャストガードになることを祈ってL1連打するようなシケたプレイをすると、まず間違いなく死ぬだろう。タイミングを合わせて敵の攻撃を弾くシステムに加え、体幹をわずかに動かす回避の存在がスタミナをめぐる駆け引きをよりシビアにしているからだ。逆に、相手の動きをしっかりと読み、後の先を取る冷静なプレイをすれば確実に勝利が近づく。度重なる死と老いを乗り越えた先で、『SIFU』はミニマルかつ滑らかなフィニッシュムーブでプレイヤーの努力に報いてくれる。

一切の小細工が通用しない恐ろしいラスボスを倒すためには、プレイヤー自身が理と合一し、師父へと成長しなければならない。迷えば敗れる、惑わば死ぬる。『SIFU』は『SEKIRO』に並ぶ究極の近接格闘を楽しめる超高純度のアクションゲームだ。

Best "HR/HM" Game - 『Metal: Hellsinger』

いつの頃からかはわからないが、アクション映画の予告編では音ハメがよく使われるようになった。BGMの拍子に合わせてバンバン銃撃したりボコボコ殴ったりする、気持ちいいアレだ。『Metal: Hellsinger』は、いわば気持ちいいアレのFPSである。System of a DownやArch Enemyといった大御所バンドのメンバーによって作られた極上のヘビメタサウンドをバックに、プレイヤーは地獄の道を殺戮で舗装する。

『Hellsinger』の基本的なアクションは『DOOM Eternal』と同じだ。銃撃、リロード、ステップ、フィニッシャー。ただし、こちらはあらゆるムーブがリズムでできている。例えば、ショットガン。一発ドンと撃ち、ガションとポンピングする。ドン、ガション、ドン、ガション。このシンプルな二拍子に合わせてクリックすることで、ダメージも音楽もパワーアップしていくというシステムだ。

ボルテージが最高潮に達するとBGMにアツいボーカルが付き、プレイヤーのテンションもなんだかすごいことになってくる。遊びながらヘドバンしてしまうようなハードでロックでヘビーでメタルなゲームは、『Hellsinger』くらいなものだろう。

……こんなに音楽が優れているのに、なぜか本作のサントラは配信されていない。それだけが本当に残念だ。

Best "Outdated" Game - 『ゼノブレイド3』

このゲームを手放しで褒める人間がいたら、そいつは『スカイリム』も『ウィッチャー3』も『ブレスオブザワイルド』もやったことがない腰抜けだ。

このろくでもないMMOもどきについては既に上の記事で散々書いたので、これ以上クドクド書かないでおく。『ゼノブレイド3』のどこがどのようにつまらなくてくだらなくてかったるいか気になった人は読んでくれればいい。ひとつ付け加えるなら、本作のレビューで散見される"雰囲気やストーリーは良い"という文言はなんのフォローにもなっていないということだ。雰囲気やストーリーが良いだけなら、ゲームである必要がない。

俺がこの乱雑で低解像度なオープンワールドRPGを遊んだのが2014年なら、あるいは好きになっていたかもしれない。残念ながら今は2022年であり、2023年は目の前だ。

Best "Adaptation" of Game - 『サイバーパンク: エッジランナーズ』

ベストアダプテーション。この部門は特殊で、ゲームの映像化作品が選ばれる。Netflixはこの手のスピンオフに力を入れていて、『ウィッチャー』や『League of Legends』、『鉄拳』などの映像化をプロデュースしている。『エッジランナーズ』もまた、そのひとつとして生まれた作品だ。

全般的なクオリティで語るならLoLのスピンオフアニメ『ARCANE』に軍配が上がると思うし、本家ゲームアワードでもそちらがベストアダプテーション部門を受賞していた。それでも俺が『エッジランナーズ』を推すのは、このアニメが『サイバーパンク2077』の感じ方を変えてくれた点にある。

タチの悪い癖だと分かってはいるが、俺は一度期待を裏切られたものへの評価をひっくり返したがらないところがある。それどころか、胸の内で燻る失望がいつしか真っ黒な煤を吐いて燃える憎悪に変わることもしばしばある。『ゼノブレイド3』に対して俺が必要以上にキツく当たるのはまさにこのためだろう。『サイバーパンク2077』についても、このアニメを見るまで未完成のガラクタと切り捨てて憚らなかったのが俺だ。

だが、『エッジランナーズ』は緻密なゲーム内ロケハンや個性豊かなキャラクター、これまで以上にキレのある作画でナイトシティのカオスな魅力を鮮やかに描いてみせた。そのおかげで俺は『2077』を再び手に取り、面白さを再発見することができたのだ。スピンオフとしてある意味で理想的な役割を果たした『エッジランナーズ』こそ、俺のベストアダプテーションにふさわしい。

Best "Smart" Game - 『ローラードローム』

たとえば、視界の外から予告もなしに超スピードで攻撃が飛んでくるとき。あるいは、敵の攻撃を回避した先に別の攻撃が重なっていてどうあがいてもダメージを喰らうとき。こうした理不尽を味わう瞬間は、ゲーマーにとって最大のストレスのひとつだ。また、これはゲームに本来存在すべきでない杜撰なデザインが浮き彫りにされる瞬間でもある。

だが、こと『ローラードローム』においてこの手のフラストレーションを感じることはありえないだろう。

『オリオリワールド』と同じRoll7が手がけたこのゲームは、ローラースケートとTPSを掛け合わせた異色のシューターだ。トリックをキメることでリロードされるなど独特な仕様が目立つが、決してその意外性に甘んじていない。むしろ、本作はアクションゲームの勘所を実によく理解した賢いゲームだ。上の記事で書いたように、このゲームでは必要な情報がしっかりと整理され可視化されている。したがって、プレイヤーが置かれた状況は完全にフェアであり、仮に手こずったとしてもゲーム側に非は存在しない。その場合、己のプレイを見直すべきだ。

70年代レトロフューチャーを感じるエレクトロサウンドに酔いしれながら、美しくスマートに暴力しよう。

Best "Curious" Game - 『ELDEN RING』

エルデンリングは冒険という概念・・・・・・・の最も秀逸な翻訳であり、それ故に、万人にとって普遍的な魅力を輝かせているのだ。

『ELDEN RING』について、俺は以前こう書いた。そして、この感想はいまも変わらない。こんなに好奇心を刺激するゲームが今後出るのかと無用な心配をしてしまうほど、このタイトルには冒険が詰まっている。

『ブレスオブザワイルド』よろしく、冒険は穏やかな平原から始まる。かと思えばいきなり仮面の男に"巫女なし"と嘲られ、ほんの少し進んだ先には屈強なツリーガードが待ち構える。慌てて逃げ出した先には広大な湖があり、そこを縄張りとするドラゴンに追い回される。たまたま見つけた宝箱を開くと罠に引っ掛かり、おぞましい蟲が番人を務める謎めいた坑道へと転送される。やっとのことで坑道を出ると、そこには病んだ朱色の大地が広がっている……。

『ELDEN RING』の舞台となる狭間の地は、どこもかしこも新鮮さに満ちている。退屈な時間は一秒たりとも存在しない。まわりを見渡せば興味をそそるランドマークが必ずあって、そこに行けば予想の斜め上をいく光景がきっと待ち受けている。本作においては、発見と攻略を通じた探究心の充足こそが報酬であり、便利なアイテムなどではなく冒険それ自体がプレイヤーのモチベーションだ。小賢しい言い方をするなら、『ELDEN RING』はモノ消費ではなくコト消費のゲームなのだ。

GAME OF THE YEAR - 『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』

『ELDEN RING』はぶっちぎりでゲームオブザイヤーだった……『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』さえなければ。この2タイトルは本当に甲乙つけがたく、どちらもエンドロールが流れるまでずっと楽しませてくれた。それでも俺の中で『ラグナロク』が『ELDEN RING』を上回ったのは、主に2つの理由からだ。

第一に、極まった戦闘システム。前作では『ダークソウル』寄りだった戦闘はさらに激しさを増し、今作では『SEKIRO』のように連続でパリィを決める気持ちいい場面が増えた。『ラグナロク』ではガード不能やパリィ不能といった特殊な攻撃はそれぞれ色分けされており、それさえ判断できれば理不尽な初見殺しにイライラせず戦える。視界外にいる敵の方向や攻撃の兆候も表示されているので、この手のゲームではしっちゃかめっちゃかになりがちな集団戦で混乱しなくて済むのもいいところだ。

臨場感を求め、俺は体力バーなどのHUD表示をあらかたオフにして『ラグナロク』をプレイしていた。それでもラスボスまで快適に遊べたあたり、本作の戦闘システムとそれを補完するUIの完成度は本当に高いといえる。

第二に、感動。ナラティブに関する両者のアプローチは大きく異なるため、単純にどちらが優れているという比較はそもそも不可能かもしれない。だが、『ラグナロク』が2022年に遊んだ他のどのゲームよりも激しく俺の心を揺さぶったのは動かしようのない事実だ。

これは壮大な北欧神話を舞台にしたゲームであるが、神話を通じて語られるのはごく身近な親子関係についてだ。本作には主人公のクレイトスとアトレウスを含め様々な家族が登場し、それぞれ問題を抱えている。幸福な家族はみな一様に幸福だが、不幸な家族はそれぞれに不幸なのだ。彼らは神であっても決して完璧ではなく、家族を愛するがゆえにそれぞれ過ちを犯してしまう。互いの不完全さを認めあったとき、はじめて親子は真の繋がりを得て、切り拓くべき道を見出せる。

最高峰のグラフィックと最先端のモーションキャプチャーで描かれる登場人物たちに、実力派声優陣が魂を吹き込む。彼らが織りなす冒険とドラマは前作に引き続き全編ワンカットで映され、そこにはコントローラーから手を離せなくなるような強い引力が宿っている。これは、エモいなどという安っぽい言葉では到底足りないような、深く、強烈で、尊いゲーム体験だ。

『ELDEN RING』をクリアしたとき、俺の頭の中にあったのはラスボスを撃破した自分への称賛だった。フロムゲーの終わりとしては、ごく自然な感覚だ。しかし、『ラグナロク』をクリアしたとき、心にじんわりと沁み渡っていたのはクリエイターへの感謝と尊敬の念だった。こんなにも素晴らしいゲームを遊ばせてくれてありがとうという、純粋なリスペクト。今年は本当にたくさんのゲームを楽しんだが、そういう気持ちにさせてくれたのは本作だけだ。

神々の運命を巡る美しく調和の取れた物語を描き、俺を心の底から感動させてくれた点を評し、私家版ゲームオブザイヤー2022を『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』に決定する。

未来へ……

冒頭でも書いたとおり、2022年はゲームの当たり年だった。想像よりずっと多くのゲームを遊び、笑い、怒り、泣き、そして楽しむことができた。いちゲーマーとして、こんなに嬉しいことはない。これでまだ『スプラトゥーン3』や『ソニックフロンティア』を遊べていないというのが信じられないくらい充実した一年だったが、積みゲーは年末年始にでもぼちぼちやっていくことにしよう。

しかし2022年がこうも豊作だと、2023年が不安になってくる。傑作が今年に集まった反動で腑抜けた一年になってしまいやしないかと……うん?

アッ……

わァッ………

あッ、ワア…………!

オアアああアアオオ!!??!!!?!!?

わ…ワア……

………

前言撤回。

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