聴くなら観ろ、『戦場のメリークリスマス』

映画が見た後に、心の内にその世界が残っていること。

それが良い映画であり、私にとってこの映画もそのひとつだー

『戦場のメリークリスマス』

坂本龍一の音楽が、
有名なメインテーマ以外にも素晴らしく添わり、リアルと夢物語のあいだの心地よい雰囲気、世界観がつくられている。
映像と音楽が作り上げる世界観という意味では、world's end girlfriendが音楽を担当した是枝裕和の『空気人形』を思い出す。『戦場のメリークリスマス』も、『空気人形』も、”その音楽”無くしては構築しきれなかった映画である。浮遊感のある、しかしコントラストの強い世界は、果たして夢か、映画か、現実か。この映画の世界が空間的に感じるのは、坂本龍一の音楽によるものだろう。有名なテーマソングも、ピアノ版と原曲には違った趣がある。


戦争映画ということもあり、映画を追っていくなかで人道や正義について考えることもできる。
しかし、この映画の本質はそこではない。
演者が良いとか、脚本が良いとか、そんなものを超えた先にある、『戦場のメリークリスマス』のイマジナリーな現実世界は、1度は観るべきである。正直言えば、私にとって「このシーンの真の意味は?」みたいなものはどうでもいい。この曖昧な世界をまるごと私が覚えた、そのことに意味がある。

これからの生涯、『戦場のメリークリスマス』のメインテーマを聴くたびにこの世界を思い出せる。それだけとっても、この映画の価値はある。

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