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【かたみわけ】#2 追記あり:BECAUSE/Gilles de Rais

手持ちの90年代V系CDを生前整理する、聴き直しディスクレビュー。
2枚目はGilles de Raisの3rdアルバム『BECAUSE』です。

アーティスト:Gilles de Rais(ジル・ド・レイ)
タイトル:BECAUSE
リリース:1992年

ケースも紙も経年劣化で黄ばんでしまっていますが、当時は「白」にすごくインパクトを感じたアートワーク
裏側
ブックレット

1:購入した経緯

前回ご紹介した『殺意』はファンになってから追いかけで購入したと思いますが、『BECAUSE』はリリースと同時に購入したはず。
ただ、どこでどうやってという「手段」に関する記憶が、完全に欠落しているのですよね……。私の実家は神奈川の片田舎で、インディーズ盤を流通しているCDショップは近所になかったはずなので、やっぱり通販かな……。

それはそれとして、CDに付いている帯! 皆さん、どうやって収納されていましたか?
私は最初、CDケースの外側に被せたままビニールの外袋にしまっていたのですが(写真上)、友達がこうやっているのを見て(写真下)一時期真似していました。
久々に見たら懐かしくなったので載せてみましたが、紙の劣化を防ぐには普通にケースの蓋裏にしまうのが一番かも?

CDの外袋が付くか付かないかは購入店舗によるのでしょうか
ジャケットも帯も両方見えるしまい方

また、帯といえばキャッチコピーですが、これについてはメジャーデビューアルバム『Gilles de Rais』をご紹介するときに書きたいと思います。

2:私的アーティスト紹介

前回の『殺意』で、バンドに関する個人的な思い出は結構書いたかなと思ったのですが、もうひとつ印象的なことがありました。
JOEさんが少年時代について語っているインタビューなのですが(確か掲載誌はロクf)、中学時代に剣道部に入っていたものの、先輩がものすごく厳しくて嫌だったそうなんですね。それで夏に合宿があるけれど行きたくなくて、下級生同士で相談して、椅子の上に指を置いて木刀で折ったんだそうです。合宿前に下級生全員、どこかの指が折れている。そのくらい嫌だったという話で、あまりに壮絶だったのでいまだに覚えています。

この部活の話ではありませんが、90年代はバンドシーンにも縦社会・体育会系の空気がありましたよね。たとえば、打ち上げで先輩に飲めといわれたら飲まないわけにはいかないし、逆に一滴も飲めないこともあるような。
そういう風潮も時代とともに変わっていきましたが、それは「自分たちの世代から空気を変えていこう」という意思を持った人たちの行動も大きかったのでしょうね。

ちなみに、こうしたシーンの気質をネガティブばかりに捉えるつもりはもちろんありません。先輩から後輩、そのまた後輩へというリスペクトの連鎖によって紡がれてきたのが、V系という文化だと思っています。
(あくまで私見ですが、逆にそういう縦方向のリスペクトが感じられないのがYouTubeの世界なんですよね……横のつながりや個の自由はすごくあると思うのですが、先人を敬うとかシーンを敬うという縦軸が薄いがために、めちゃくちゃなことが起こりやすいような気がしています)

3:聴き直しての所感

ジャケットに写っている包帯姿の男性は、当時のローディーさんだと雑誌で読みました。このローディー文化というのも、まさに上記の話にもつながる部分ではないでしょうか(2015年の『LUNATIC FEST.』では、AION先輩の出番でJさんがローディーになって、フロアが大いに湧いていましたね)。

このアルバム最大のフックは、なんといっても冒頭を飾る①「BECAUSE」でしょう。イントロからバチクソテンション上がる〜!
JOEさんのフェイク「お前の中に俺が棲みつき〜ィヤア!」も、友達と当時死ぬほど真似しました。そして、Bメロの「You Just for Because Now」では今でも腕を振り上げずにはいられません。ライブではオーディエンス側がこのフレーズを歌うので、私の耳には今も女の子たちの絶叫のような歌声が残っています。
ラスサビ前に入ってくるギターのリフも本当に好き……! そしてラストはバスッといきなり終わるのもかっこいい!
もう、この1曲だけで無限に白飯が食えそうなほどのキャッチーなキラーチューンで、V系好きならきっと世代関係なくブチ上がってしまうのではないでしょうか。

しかし、次の②「PICTURE OF PICTURE」から始まるのが、このアルバムの本当の世界です。
自分の記憶からは抜け落ちていたのですが、ブックレットの内容やネットの情報を見ると、このアルバムは既存曲のリアレンジを主とした、いわばインディーズベストに近い内容だったのですね。
だからか、全体的な印象としては「マニア向け」という感じで、どの曲も世界観が濃いめで実験性も強く、全9曲とコンパクトながらかなり濃密な聴きごたえがあります。

なかでも個人的に興味深いのは、⑦「SO BALLET」⑧「BLUE」。
このアルバムには、エキゾチックで退廃的なテイストがあちこちに散在している感じがするのですが、「SO BALLET」には特にそれを強く感じます。タイトルがドンズバの⑥「BAGHDAD」よりも、こちらのほうが幻想的かつ官能的で、個人的には好みですね。
「BLUE」は、吹きすさぶ風の音のSEから始まる静かな曲。JOEさんの歌声とバイオリンをメインに据えたシンプルな構成で、荒涼たる砂漠の風景が見えてくるよう……そして流れる水音とともにバンドインすると、世界が一気に色づいて広がる。けれどまた、風の音とともにすべては消え去ってしまう……まるで映画を観た後のような、とても深い余韻の残る一曲です。JOEさんは、こういうイマジネイティブな音世界を創るのがお好きで得意な方だったのかな、と今振り返って感じます。
そんな混沌としたアルバムのラストに配置されているのが、スコンと抜けるような開放感のある⑨「COSMO」で、「あっ、この迷宮にはちゃんと出口があったんだ……」という安堵に包まれて終わるのも、ライブのセットリストっぽくていいですね。

あとは、③「殺意」を2ndアルバムVer.と聴き比べるのも面白いと思います。前作はセリフの導入が付いていたのに対して、こちらは実際のライブパフォーマンスのようなシンプルな構成。JOEさんのフェイク「もーどーれーナイナイナイナイ!」もライブ感満点です(言うまでもなく友達とさんざん真似しました)。
そして⑥「PRESURE SONG」は、ガラス曲(途中でガラスの割れる音が入っている曲)です。V系のガラス曲についてはすでに研究している方も多いのではないかと思いますが、起源はどこなんだろうな〜。

ところで、CDの帯をよく見ていただくとわかるかと思うのですが、このアルバムは3,000円です。私が今好きなSixTONESのアルバムも通常盤は税込3,300円なので、つまりCDは30年経ってもそれほど値上がりしていないんですね。
一方で、めちゃくちゃ値上がりしているのがライブのチケット代。
私が中学生の頃、かまいたちの渋公ワンマンは2,500円だったんですよ……Xも、アリーナツアーは確か4,500円くらいでしたしね……。

理由は複数あるでしょうが、やっぱりコロナがなければ値上がりのペースはもう少し緩やかだっただろうとは思います。
コロナの影響で収容人数が半数に規制されていた頃、苦肉の策としてチケット代を2倍にする動きがありましたよね。でも、収容人数がフルに戻ったからといって、いったん上がったものが下がることはなかなかないわけで……。
仕方ないと思っていますが、もしチケット代が安ければ軽率に行きたいライブはたくさんあるんですよね。でも、値上げされると「選ぶ」ということをどうしてもしなければならなくて……すると、アーティスト側も「選ばれる」ことを考慮しなければいけなくなってきたりするのかなと思うと、どうしたらいいんだろう?と本気で考え込んでしまいます。

(追記)
と、原稿をアップしたときはこのように書いていたのですが、チケット代の値上がりについて、現役バンドマンの方のこのような事情をX(Twitter)で拝見しました。
これを読むとV系シーンで育ってきた人間として辛いものがありますが、今はV系に限らず音楽業界全体が、チケット代にかなり苦慮しているところがあるようです。
SKY-HIさんが『テレ東経済ニュースアカデミー』でそのあたりを詳しくストレートに語っていらっしゃるので、興味のある方、アイドルも好きな方はこちらもぜひご覧ください。



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