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カバラ物語 第五章 ぼくの善と美 #9「お金持ちではない一流人」 |小説 ユニバーサル・カバラの物語 第五章

南の国から帰ってきたぼくは非営利団体への寄付をやめた。社会的に立派な立場にいる団長はとんでもなく不誠実だった。多くの人から巻き上げた寄付金はほんの少ししか使われていなかった。南の国に送られている物資はごく少量だったのだ。ぼくは遊び仲間の警察出身の官僚や政治家に訴えたが、非営利団体の団長は彼らの後ろ盾でもある。ぼくの訴えは通じず、憤懣やるかたない気持ちは行き場を失った。

ぼくが久しぶりに赤い本を開くと新しい物語が増えていた。ゴミ清掃業に従事している男性がこの上なく高貴な存在なのだという。少し前のぼくなら読み流してその意味を深く考えることはなかった。ところが今のぼくには堪えるものがある。立派な職業についている人が立派な振る舞いをするとは限らない。赤い本にはいつも絶妙なタイミングで心が痛くなる話が刻まれていく。ぼくはまた人生の軌道修正を迫られている。ぼくが追い求めてきた一流の人たちは、見せかけは豪華でも中身は空っぽだった。ぼくはあんなに通っていた高級スポーツクラブも、一流人の集まりにも興味がなくなった。

お金持ちとの付き合いが減って、ぼくには時間ができた。ぼくは視野を広げることにする。時間を作っては映画やコンサート、演劇など、気になるところに足を運ぶ。ぼくが出かけようとするとガールフレンドの誰かがくっついてくる。中には女優がいて、舞台を見にいくと舞台裏に連れて行ってくれる。ぼくは演劇人と呼ばれる人たちに誘われて下町の居酒屋で飲み明かす。

電車の始発の時間まで映画論や演劇論を戦わせ、請求された飲み代はぼくのお昼ご飯代より安かった。ぼくは居酒屋に足を踏み入れた途端に愕然としたものだ。ボロボロの洋服を着ている人たちがホコリっぽい部屋にぎゅうぎゅうに集まっていた。ボロボロの洋服を着た人の中には有名な映画監督もいた。彼らとの会話は今まで付き合ってきたお金持ちとはまるで違う。教養とセンスに溢れている。ぼくの一流人に対するイメージは変わった。

夢の国にいた頃、野生のような鋭い目をした女に言われたセリフを思いだす。

「人生を楽しむこともせず、そんなに働かなくちゃいけないなんてかわいそうに」

あのときは反発したけれど、今なら少しわかる。ぼくはずっと一流人とはお金持ちのことだと思っていた。世の中にはお金持ちより面白い人がたくさんいる。ぼくはもっといろいろな人と知り合わなければならない。

…#10へつづく。

◆現在公開中の連載はこちらからまとめてご覧いただけます。

​誰も読んだことのない、誰も書いたことのない、本当の成功の物語。
「ユニバーサル・カバラの物語」
秘密はここに。


◆連載小説「ユニバーサル・カバラの物語」が本になりました。

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モダンミステリースクール 形而上学BOOKシリーズ
「カバリスト ぼくの成功物語」〜永遠の生命の木の謎〜(上巻)
イプシスマス・中込英人 著 税込2,500円

物語の裏に秘められた神秘の教え「カバラ」の奥義を解き明かす解説つき。カバラを学ぶ人、そして真理を探求する人に必携の一冊です。


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制作
グッドニー ・グドナソン
中込英人
谷村典子

グッドニー ・グドナソン

モダンミステリースクールファウンダー
リネージホルダー メインイプシスマス

アイスランドの貴族の家系に生まれ、生まれてすぐに双子の兄を亡くす。以来兄の存在を通し、目に見えない世界とこちらの世界を同時に生きるようになる。 10代で英国のミステリースクールに招聘され、カバラ、ヘルメス学、古代エジプトやケルト、ドルイドマジックなどあらゆる魔術と形而上学を学び、最高位の魔術師となる。1997年にモダンミステリースクールを継承(当時はロッキーマウンテンミステリースクールの名称)。「No More Secret」の下、それまで秘密にされてきた真の形而上学の教えをオープンにする。現在は世界60カ国に広がるミステリースクールで教える一方で、DJとしてフジロックのステージに立ったり、ハリウッドの映画祭でプロデューサーとして活動するなど、多方面で活躍。まるでファンタジー映画や物語のようなその生き様を通し、あらゆる可能性と喜びを表現し続けている。オーロラエンタテイメント・エグゼクティブプロデューサー。
中込英人

モダンミステリースクール校長
リネージホルダー サードオーダーイプシスマス

世界中で形而上学を教え伝えるメタフィジックス・ティーチャー。幼少期より空手の天才少年と称され、大山倍達氏のもとで内弟子として研鑽を積んだ武道家でもあり、15歳で渡米した後、飲食店経営などで成功を収める。また、武道の実力を買われ、ダライ・ラマ14世のボディガードを担当。ダライ・ラマ14世から「スピリチュアルな道を人に説くもの」と称されたことをきっかけに、密教の学びを始める。密教行者として厳しい修行を積んだのち、30代で一時帰国。ミステリースクールおよび形而上学の学びと出会い、以降、スクールの拡大に全精力を傾け、2017年に最高峰の魔術師である「イプシスマス」の称号を得る。形而上学をわかりやすく、ユーモアを交え伝えるクラスは、国や文化を問わず常に笑いと活気に満ちている。著書『支配者(エリート)が独占してきた成功の秘笈』『MAX瞑想システム™️ー脳を鍛え可能性を引き出す究極の成功メソッドー』『カバリスト ぼくの成功物語』

谷村典子

作家・脚本家
日本シナリオ作家協会会員

成蹊大学卒業後、会社勤めの傍らで松竹シナリオ研究所卒業。2002年テレビアニメシリーズで脚本家デビュー。テレビ、映画、舞台で、幅広いジャンルの脚本や構成台本を担当する。
L.A.Fear&Fantasy映画祭他では、作品賞などを受賞。タロットをきっかけにモダンミステリースクールと出会い、形而上学の学びを深めている。Atelier ADITI主宰。http://atelier-aditi.jp/


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