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情報を備えるという防災【罹災証明編】

水害が多くなるこの時期に、防災グッズや家の備蓄を見直そう、という動きもありますが、備えていて役に立つのは、物だけではありません。
「情報」もその一つです。今シーズン最初の台風も発生した今、もし被災したときに役に立つ情報を書こうと思います。

今回は「罹災証明」について。

まずこの、罹災証明、が読めない方も少なくないと思います。
「りさいしょうめい」と読みます。
これは、各市町村が発行するもので、住んでいる家屋の被害程度を証明するものです。
全壊や半壊、大規模半壊という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これはこの罹災証明で使われている被害の程度を表す言葉です。

住家の被害の程度については、国で被害認定基準を定めています。住家の屋根・壁などの経済的被害の全体に占める割合(=損害割合)に基づき、被害の程度を判定します。一般的には、「全壊」、「大規模半壊」、「半壊」及び「半壊に至らない」の4区分で認定されます。
*内閣府「被害認定とは」より

と、あるように被災は受けた程度によって4つに分けられます。そしてこの判定によって、被災者生活再建支援法などの公的支援の適応範囲が決まるのです。

ただ、この罹災証明でポイントになることが5つあります。

1、直後の写真を忘れずに!
住宅がどれくらい被害を受けたのか、これを証明する書類が罹災証明です。
水害ではどれくらい水が来たのかという浸水程度や、地震では家屋の傾き具合や瓦の被害程度などが判断の基準になります。
被害の程度は被災直後が最も鮮明にわかります。
例えば、地震で被害を受けた屋根を早々に修理したり、どれくらい浸水したか分かる跡をきれいに掃除したりすると、判定が困難になります。
しかし、被害の状況によっては判定のための調査に時間がかかり、それを待っていられません。
そのため、お家の掃除を始める前に、どんな被害があったのか分かるような写真を撮っておくことをオススメしています。

2、被害認定のための一次調査は、行政職員が行う
発災から時間が経つと、この判定のための調査が始まります。そして被害があったと思われる地域を、行政職員が歩いて調査し、一次判定を行います。
ここで注目なのは、行政職員が外観からの情報だけで判定する点です。
例えば、外からはなんともないが、屋内の壁が大きな損傷を受けているなど、外観からだけでは判断が難しいような場合や
建物に問題はないが、基礎部分に損傷があるなど、専門家でないと判断が厳しいケースもあります。

3、一次審査に不服なら、再調査を申請できる
上記のように、一次審査はあくまで一次審査。いろいろな理由から、実際の被害にそぐわない判定になる可能性もあります。
そんな場合には、一次審査の判定を受理する前に、判定内容を不服として二次審査の請求ができる仕組みがあります。基本的には受理する前なら、何度でも再審査申請が可能なようです。
もちろん、判定を受け取らないことには救援制度を活用できないので、不必要な再調査申請はいろいろな手続が滞ってしまう原因にはなります。しかし、この制度を知らないまま、モヤモヤとしたまま罹災証明をもらう方も少なくありません。判定のランクにより、受け取れる支援金にも差が出てしまうので、ちゃんと納得できるように覚えておいてほしいなと思います。

4、大きな被害でなくても、もらっておいて損はない
この罹災証明ですが、行政の窓口に行って申請をしなければ受け取ることができません。この手間が面倒だからと申請されない方がいらっしゃいます。特に、一部損壊など判定が軽い場合、被災者生活再建支援法などで受け取れる手当もほとんどなく、わざわざ窓口まで出向いて取得する必要はないと思われるかもしれません。
しかし、例えば税金が一部免除になったりするなど、恩恵を受けられる場合があったり、色々な手続の最初に必要になったりと、実はとても重要な書類です。市町村によって補助や減免サービスなどが変わりますが、ぜひ手間を惜しまず取得しておいてほしいなと思います。

5、罹災証明書は、住んでいる人に出される証明書
罹災証明書は、被害の程度を証明する書類です。そして、これを申請して受理するのは、「住んでいる人」が対象になります。
住んでいる人はどういった基準できまるのかというと、住民票です。
つまり、ある借家が被災した場合、家賃を払って借りている借り主が、罹災証明を受け取り、補助金などの救援措置を受けることができるのです。
そして、住民票がない大家さんは対象になりません。
また、同じ理由で別荘や住んでいる人が居ない空き家なども適応範囲外となるので、補助金等の対象外となってしまいます。


以上、災害が起きたときに知っておきたいポイントを、罹災証明に絞ってみました。ぜひ頭の片隅にとめておいてください。
また、判定の内容やそもそも発行される対象など、ちょっと判断が難しいこともたくさんあります。災害発生時は、無料法律相談の受付窓口が開設されたり、相談会が開かれたりします。また、高齢者や移動が困難な人に代わって取得を勧めてくれるような支援があったり、被災地によって変わりますが、さまざまな支援メニューが生まれます。そんな支援があるかもしれないことも、知っておいていただければ。

そして、この情報を備えるという防災のいいところは、場所を取らないこと!
ただ、法律や制度は時間と共に活用が変わるので、必要になったときに改めて調べるなど、入れ替えは必要です。
そして何より、伝える/教えることで、自分以外の人にも役に立つということです。自分のためだけじゃなくて、だれかのために使える備えになりますように。


最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。 少しでも、災害現場の課題が伝わっていたら嬉しいです。 いただいたサポートは、被災地の現在を伝えるための活動資金にさせていただきます!