見出し画像

With/Afterコロナにおける海外駐在員の在り方 vol.1

Before COVID-19の時代

これまで日本企業においては、業務の経験豊富な人材を海外へ派遣し、海外でのビジネス拡大を図り、また若手社員を海外拠点に送ることで国際ビジネス経験を積ませるという育成も行われてきました。平成元年の在留邦人数は34万人程度であったのに対し、平成30年においては87万人と、この30年で2倍を遥かに超える人々が海外で活躍する世の中になりました。これは、ビジネスのフィールドがよりフラットになったということだと思います。

COVID-19の流行

将来にわたり、海外で活躍する日本人の数が増えていくことだろうと誰もが想像していたと思いますが、COVID-19の流行により、想定される未来は大きく変化することになったと思います。

COVID-19の流行に伴う非常事態宣言により、日本でもテレワークという言葉が定着、そして実践されるようになりましたが、これは日本だけではなく海外でも同様に、むしろ海外では、より厳格かつDrasticに起こっていることを忘れてはなりません。

あるグローバル企業では、2022年からはオフィスや海外駐在の廃止を視野に入れた検討が始まっていると聞きました。おそらくこれらは、これから起こる多くのパラダイムシフトの中の一つに過ぎないでしょう。

海外駐在を廃止するということは、海外拠点のローカライゼーションを否応にも推進していかなければならないということにもなります。多くの日本企業が完遂しきれずに宙ぶらりんになった課題に取り組んでいかなければならない時代が訪れました。しかも、それはもう待ったなしの状況なのです。

駐在員を派遣できない時代

なぜローカライゼーションが必要なのか?

意外とそういう質問を受けることもあります。そもそも勘違いしてはならないのは、駐在員は自由に派遣できるものではありません。企業にとってコストがかかるという理由ではなく、国としての考えを理解する必要があります。

まず、日本をベースに考えてみましょう。
外国人が日本で働くということは、日本人の雇用機会を奪うことになります。賃金の高い日本で働きたい外国人はまだまだいます。これを自由に認めてしまうと、日本人の失業率が高まることに繋がりかねません。また、企業が持つ技術やノウハウがいずれは海外に流出してしまうことにもなります。

海外でも同様です。
私がいたシンガポールでは、外国人1人に対してシンガポール人2人以上を雇用していなければなりません(詳細なルールは割愛します。ざっくりです。)。
それ以外にも就労ビザ発給には多くの要件を求められ、本社人事と現地の人事が色々と苦心した上で要件を満たすようにしていました。

駐在員の派遣というのは、駐在員本人があまり知らない中で多くの人の知恵や工夫によって実現されています。

そして、COVID-19の流行によって、周知のとおり世界各国の経済に大きな影響が及んでいます。アメリカでの就労ビザ発給制限のニュースは日本でも大きく取り上げられましたが、その他の国においても同様に就労ビザ発給に新たな制限を設けたりと、海外現地での外国人の就労に制限がかかっています。これは、流行の水際対策ではなく、自国民保護という不景気化における経済施策に基づくものだと考えられます。

新規事業の立ち上げや、新たなマーケットへの進出等、駐在員の活躍が不可欠なビジネスシーンは今後も残ることだと思います。しかし、既存の進出先の法人においては、駐在員数を増加することはもちろん、維持することも難しいものになるでしょう。

日本人駐在員の数が減少することにより、日本人駐在員が担ってきた役割を現地人に引き継いでいく、ローカライゼーションが不可欠なものになるでしょう。ローカライゼーションの目指す姿は、これまで通り、むしろそれ以上の企業活動が継続されるものでなければなりません。

非常に難しい課題だと思います。
将来の駐在員の在り方や海外事業に向けた検討を次回以降記載していきます。

既に海外事業に関する課題や悩みを持っている企業の皆さんの相談も受け付けておりますので、お気軽にコメントください。

本編は以上です。以下、次回に向けた一休みコラムです。

コラム:駐在員のミッション

5年程、海外駐在員として海外で仕事をしていた私ですが、駐在員にも様々なタイプがいるなと実感する日々でした。

1.希望(野心)にあふれてチャンジ精神旺盛な駐在員
2.無難に任期を全うすることに価値を置く駐在員
3.海外生活を楽しむ駐在員

派遣元の日本企業としては、駐在員に対して「新規事業を推進して欲しい」、「海外現地法人が抱える問題を解決してほしい」といった期待があると思います。

しかし、その派遣元の期待は意外と曖昧であることが多く、また時として、駐在員へのミッションというのは経営環境の著しい変化の中で、コロコロと変わることも多くあると思います。

私自身、本社の意図を把握しきれず、本社の急な方針転換や意向に振り回されることの多い日々でしたし、同じような駐在員時代を過ごした方は多いのではないでしょうか。

これはまさに本社と駐在員とのコミュニケーション不足によるところが非常に大きいと、私は思っています。若手の社員であるほど、駐在員として海外に派遣されると、これまでよりも高い職位として扱われ、「管理される側」から「管理する側」になるということが多くあります。

管理者になり責任を与えられることと、ミッションを果たすことは全く違います!

仮に駐在員本人が赴任期間中に満足するパフォーマンスを残したとしても、それが会社から望まれたものでなければ、まったくの無意味となります。意外とそういうケースが非常に多いように思えてなりません。

次回はそんなことを検討していきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?