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ゴトウマサフミさんの挿絵「イマムラ」にぬりえしながら思ったこと

きっかけはツイッターでぬりえの投稿をみたことだった。

ふだん書籍の紹介や手作りPOPを投稿されてる書店員のなかましんぶん編集長さんが高知中央ICの来年度完成予想図(国土交通省 土佐国道事務所)に色をつけていた。

派手な配色で下絵にはない模様も加え、懐かしい未来感のあるアート。わたしは横尾忠則さんを思い浮かべた。絵が踊ってる、楽しい。

単純なわたしはすぐ塗ってみたいと思った。

絵は得意ではないからモノクロの絵を探そうーすぐに「ブンガクフリマ28ヨウ」の中のゴトウマサフミさんの挿絵を思い出した。浅生鴨さんの「イマムラ」の主人公雪子が書かれた絵。数日前には小説の感想も書いた

絵は決まった。何を使う?

またツイッター上でみた、るるてあさんのグラスのソーダと邪エナガちゃんの絵を思い出す。グラスに入ったレモモサワーがピンク、黄色、水色、茶色の4本の色鉛筆だけで色づけされていたのが印象的だった。

よし。色鉛筆にしよう。かわいく色づけできるといいな。

pdf版の挿絵のページだけを印刷して手元にもち、冊子にした「イマムラ」を読み返す。すると、この中にほぼ全てのものが描かれていることに気づいた。

海へ行ったときに拾ったまん丸の石、夜店で買ってもらった赤い指輪、緑色の透き通ったお菓子の包み紙。柄のところに細かい模様の彫られたティースプーン。小さな貝殻はロウソクの光を受けると虹色に光った。そして絵の
具。

西条君のくれた大きなビー玉もある。雪子の秘密基地での大切な時間。イマムラと、その行きかえり。ランドセルとブリキの箱。

さっと塗れると思っていたのに、雪子の気持ちを思ったら丁寧に塗りたくなる。たからもの。色の数を抑えておしゃれに塗ってみようと思った気持ちを諦め、どんどんと色を使う。

金色の色鉛筆を塗っても金色に見えない。黄色を足してみる?迷路に入る。雪子は寂しかったのか楽しかったのか。心細くなかったのか。明るい色を塗る?暗い色?

色を重ねるうち、私は暗い場面のイメージを特に印象深く思っていることに気づく。話の中の終盤のイメージが強いひともいるだろうに。同じ物語をよんでも受ける感動が人によって違うのが、こういうところに出てくるのかも知れない。ぬりえにもその人の気持ちが映されるのね。

何本も色を取り替えながら、どんどん重ねていく。どうしても暗くなる。ああ上手だとはいえないな。でもまぁいいか、わたしなりの印象で色を塗って完成させよう。そう思いながら進め、白いところが随分少なくなったとき、

コーヒーをこぼしてしまった。

絵も、冊子も、数本の色鉛筆も濡れ、現実に戻される。楽しかったし、これでおしまいにするか。こぼしたことを悔やんでいても仕方ない、切り替えが大事。

だめになっちゃったけど諦めきれず念のため、べたべたの紙をピンチハンガーに挟んで干して、この夜はお風呂に入って寝た。

後日、やっぱりこれを完成させたいと思った。そしてきのう、色を加えて完成させた。

雪子の気持ちを考えながらぬりえをした時間。楽しかった以上に気づきのあった時間になった。

一番印象に残っているのは「イマムラ」での時間。

その時間は何者にも邪魔をされない雪子の繭の中のよう。

つらい気持ちを癒す術は子どもにもあること。

不安定で辛い気持ちは何かのきっかけで溢れて出てくる。

寄り添うだれかがいれば、きっと大丈夫だと思いたい。

他にもあるけれど、できればここでお話のネタバレはしたくないからこのくらいにしておく。

前に感想を書いたときより、深く考えることができたように思う。本を読んで感想を書いて、また考える時間を持って。その時間は物語に添った絵を描いたり、色を塗ったりすることでも生まれるんだな。

またお話に挿絵があったら塗ってみたい。すこしずつうまくなれれば嬉しいし、ならなくてもお話の中に入っていける時間が過ごせたらそれだけでも楽しいと思う。

絵心がある人は、とっくにやっていることでしょうね。