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文章を読むのが好き。 時々、書きたくなります。 上手く整理して、思いを伝えられる文章が…

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文章を読むのが好き。 時々、書きたくなります。 上手く整理して、思いを伝えられる文章が書けたらいいなと思っています。

最近の記事

『スローシャッター』

仕事に出かけた異国の地で、出会った人々と互いに心を通わせた出来事。 記憶が鮮やかに綴られているのは、どれも忘れられない大切な思い出だからだろう。そしてその交友が続いていることがとても嬉しい。 誠意を持って真面目に働くと出会いが生まれ、物語になるのだろうか。 いやそれだけでは足りない。 相手の心のわずかな動きを感知する繊細なアンテナも必要そう。 言葉なしで伝わるこころ。 語り尽くして知るこころ。 ひとと会いたい。 そう思いながら読み進める。 時折、ゾッとする失敗や

    • 『全部を賭けない恋がはじまれば』感想

      あれこれタスクに追われる日もあれば、 こうやって読書と読後の余韻に浸る幸せを味わう時もある。 少しずつ楽しむつもりが一気に読んだ。 きっと読ませる工夫が仕掛けてあるんだろう。 クスッときたり、あははと笑ったり。 記憶の蓋も、覚えのない記憶の蓋も開けて、主人公の気持ちを味わい尽くす。 東京に土地勘がないから風景や空気は想像で補う。 渋谷や新橋はタモリのボキャ天に出てきたし、高円寺はたらればさんのコラムで読んだことがある。 きっとあってる。 語れる珍事件は、面白おかしく誰

      • ミニトマト・イズ・マイブーム

        この夏、最も熱中しているのはミニトマトの栽培。 これまで「あなたの趣味は何ですか?」と聞かれた時に自信を持って答えられるものがなく、趣味がないって居心地が悪いなぁと思っていた。 ところが今「趣味は見つからないけれど、熱中しているものはあります。」そう言えるものができた。 マイブームはミニトマトの栽培、そう言い切る夏となった。 この3ヶ月、脳のかなりのスペースを占めているトマト栽培について書いておこうと思う。【ミニトマト】に関する文字でいっぱいになっている脳内メーカーの横

        • 片付けのアマちゃん

          日曜日。 朝早く、出かけていく家族を駅まで送ったあと、丸一日わたしだけの時間になった。 やることは決まっている。 昨日までまったく手を付けられなかった和室を片付けること。 もし急に誰かが訪ねて来ることになって、泊めて欲しいとでも言われたら、一時間で片付けることは出来る。 広がったものたちを二階の一室にでも押し込めれば良い。 でも今日したいのは単にものをどかす片付けじゃなく、 あるべき場所・・・あるべき場所を決めて、そこへいい感じに収納する片付けがしたいのだ。 散らかる発

        『スローシャッター』

          母へのインタビューを始めました

          母にインタビューをすることにした。あらたまったものではなく、私の心のなかだけの、聴く姿勢としてのインタビュー。 きっかけは母と電話していたとき。 「今日、何しとったん?」 いつものように母が私に尋ねる。仕事の連絡がなかったから、家にいて、洗濯して、どこにも行かずに部屋を片付けてた。よくある休みの日の行動を伝えてから、今度は私が母の食事や今日観たテレビの話を聞く。 母が一旦、話し終えたところまでは、いつものとおりだった。 その日は母がまた、わたしに聞く。 「今日、何しとった

          母へのインタビューを始めました

          続 給湯器が壊れて記憶の蓋が開いた

          シャワーや蛇口からお湯が出なくても風呂には入れていた数日を過ごした後、いよいよ追い焚きができなくなった。前夜、浴槽に水を張っておくのを忘れた私のせいで凍結防止機能が働かず、配管が凍ってしまったのかも知れない。油断していた。 交換は2日後の火曜日。日曜の夜に銭湯を探すことになった。 かつて何度か利用していた温泉施設はコロナが流行る前に店を畳んでいた。 市の施設は緊急事態宣言を受けて時短営業となり、最終受付の時刻に間に合いそうにない。 検索で一件の温泉を選び、利用料金が安い

          続 給湯器が壊れて記憶の蓋が開いた

          給湯器が壊れて記憶の蓋が開いた

          先日の大寒波で、給湯器が凍結破損した。蛇口やシャワーからお湯が出ず、小さな不便を感じながらここ数日を過ごしている。 震災の時は電気と水道の復旧、それから一月ほどしてからガスの復旧だった。それに比べれば、水道も出るし追い焚きで風呂にも入れる。 ちょっとした非日常に、少しワクワクも感じながら不便な日々を過ごす。 朝、鍋で沸かした湯を洗面ボールに溜めて洗顔をしていると、子供の頃のことを思い出した。 --- 適温のお湯を張った洗面器を母が用意してくれていたこと。 生まれて

          給湯器が壊れて記憶の蓋が開いた

          洗たくマグちゃんをめぐる冒険

          0.はじめに よく聴いているポッドキャストの一つに「寝たら忘れるラジオ」がある。ヨウチャン、kanonさん、かえるさんの3人のキャスターが、眠ったら忘れてもいいよとゆるい話題を提供してくれている。寝つきの良い私は布団に入るとすぐに眠りに落ち最後まで聴くことができないので、もっぱら日中に拝聴している。忘れていいよと言われていても、気になる話題にはコメントしたくなる。第61話で取り上げられていた「せんたくマグちゃん」がそれだった。(14分40秒~) https://netara

          洗たくマグちゃんをめぐる冒険

          校庭で同級生に教えてもらったコツ

          先日気になるツイートを読んだ。私にも小学生のときに同じような感覚を持った記憶があるー。あれをじわーんと言うのかな。 小学3、4年生の頃、晴れた日の休み時間は良く「ひゃくうけ」をして遊んでいた。地面に靴で描いた長方形の線は、コートの真ん中に線がないドッジボールのような遊びで、中と外に分かれ、外は中の人に向かってボールを投げて当て、中の人は逃げるか受けるで対抗する。当てられた人は枠の長辺の外へ出る。中の人が全員当てられたら入れ替わって今度は外になる。 中の人がボールを受けると

          校庭で同級生に教えてもらったコツ

          ゴトウマサフミさんの挿絵「イマムラ」にぬりえしながら思ったこと

          きっかけはツイッターでぬりえの投稿をみたことだった。 ふだん書籍の紹介や手作りPOPを投稿されてる書店員のなかましんぶん編集長さんが高知中央ICの来年度完成予想図(国土交通省 土佐国道事務所)に色をつけていた。 派手な配色で下絵にはない模様も加え、懐かしい未来感のあるアート。わたしは横尾忠則さんを思い浮かべた。絵が踊ってる、楽しい。 単純なわたしはすぐ塗ってみたいと思った。 絵は得意ではないからモノクロの絵を探そうーすぐに「ブンガクフリマ28ヨウ」の中のゴトウマサフミ

          ゴトウマサフミさんの挿絵「イマムラ」にぬりえしながら思ったこと

          読後感想 解説「ウリコ トバニ カイコ トバ」田中泰延さん

          「売り子」と「買い子」が集まるフリー(free)マーケットにぴったりな、言葉と貨幣の話が展開される。 言葉を売買する。 これまで田中泰延さんの言葉を無償で読んできた私も、この「ブンガクフリマ28ヨウ」の小冊子を(手間賃にも満たない金額だろうが)購入できて良かったと思う。 初めてひろのぶさんの言葉に触れたのは、NHKで放送された「独裁者の部屋」の公式ホームページだった。 ドキュメンタリーなのか、役者が演じたドラマなのか推理しながら見ていたが、種明かしのないまま終わってしま

          読後感想 解説「ウリコ トバニ カイコ トバ」田中泰延さん

          読後感想「イマムラ」/浅生鴨さん

          「ブンガクフリマ28ヨウ」を読んでの感想、浅生鴨さんの「イマムラ」。 「わたしのしぶとい生命線」と「ラブバード」は実写かアニメで映像、「横断歩道の呪い」は絵本になるといいなって感想を抱いたけれど、この「イマムラ」は、小説のまま朗読してもらいたい。もしくはラジオドラマ化。 地形を含めた情景も、雪子の部屋、家、家族、全て自分の頭の中で映像化しながらお話を聞きたい。もちろん「イマムラ」も私の不完全な想像の廃屋のまま。 音はどうかな。それらも朗読がいい。 鳥の声だけ音声にするの

          読後感想「イマムラ」/浅生鴨さん

          読後感想 横断歩道の呪い/末吉宏臣さん

          「ブンガクフリマ28ヨウ」の3篇目は末吉宏臣さんの「呪い」という、ちょっと物騒な言葉の入った短編小説。 途中まで読んで、私が想像したのは 主人公の僕が、異世界へ転生して数々の試練に出会い、生き抜いていく中で、転生前の現在の暮らし、月曜の憂鬱、ずる休みの誘惑、さえも懐かしく思い出すという、アニメのような展開だった。 予想に反し、この物語は真正面からの優しい呪いを語ったお話だった。電車で読むとダメなタイプ。 ふと、谷川俊太郎さんの「かないくん」を思い出す。 絵本作家の祖

          読後感想 横断歩道の呪い/末吉宏臣さん

          読後感想 ラブバード/山本隆博(@SHARP_JP)さん

          シャープさんの中の人(@SHARP_JP)、山本隆博さんの作品。 「ブンガクフリマ28ヨウ」に収録された短編小説。 一行目から性交の文字がでてくる。 若い頃の大江健三郎や芥川龍之介を思い浮かべるよりも、私が思い浮かべたのは江戸川乱歩だった。私の読書暦が純文学から程遠く幅が狭いだけで、その先は怪奇でも隠微な描写が続くわけでもなかった。 コールセンターのオペレーターとして勤める男のこだわりは、ほんの少し異質だったが病的といえるほどではない。ただ仕事は勤務時間の長短ではなく内

          読後感想 ラブバード/山本隆博(@SHARP_JP)さん

          読後感想 わたしのしぶとい生命線/燃え殻 さん

          「ブンガクフリマ 28ヨウ」に収録された作品を読んだあとの感想をひとつづつ書いてみようと思う。 「ボクたちはみんな大人になれなかった」の燃え殻さんの作品、「わたしのしぶとい生命線」から。 最初に読んだときは彼女の視点だった。二度目に読んだときには彼の気持ちを考えていた。 3年同棲した彼女に妊娠を告げられた彼は、生むことに生返事の同意をしてから一ヶ月後に中絶を迫る。それまでなんとなく過ごしていた彼が、恐らくやや真面目に考えた期間に「未知の未来」と「彼女と子どものいる将来」

          読後感想 わたしのしぶとい生命線/燃え殻 さん