短編小説 「酒場 桃太郎」
とある村の小さな酒場に、カウンター席で仲良さそうに話をしている二人組がいました。
「なんだ赤鬼君、もう酔ったのかい?」
「そうそう…って俺は元から赤いんだよ!!」
お決まりのギャグを済ませてケラケラと笑いあう二人。
「だけど、赤鬼君とこんなに仲良くなれるなんて思わなかったなぁ」
そういうと、 グラスに注がれたウイスキーを桃太郎はゆっくりと口へ運んだ。
「そうだな…でも鬼ヶ島の入り口で、出てこーい!って勇ましく叫んでいる桃を見たときはビックリしたぜ」
赤鬼は目の前にあるカルーアミルクを喉を鳴らして一気に飲み干した。
「それは何度も謝っているだろう、赤鬼君だってものすごい形相で睨みつけてきたじゃないか」
「そりゃあ、いきなりあんなこと言われたら警戒するだろ、しかも一人っていうのがさらに不気味だ。だってあれよ…俺一応赤鬼よ」
「まあ、おばあさんから預かったこれがあったからね」
そういうと、桃太郎は腰に付けた巾着袋から、光り輝く一枚の板状のものを出した。
「ああ、スマートフォン…だっけ、その中に入ってるChatGPTってやつ。あれめっちゃ便利だわ」
「大抵の問題はこれで解決するからね。君と会う前に退治方法聞いたら、力任せじゃなくて、どうして村に迷惑をかけるのか理由を聞いて平和的な解決をした方がいいって教えてくれて。それで君に理由を聞いたら、鬼のパンツに付いているタグがずっとチクチクして気分が悪いっていうからさ…それ聞いた時は本当に笑っちゃったよ」
「あれ地味にイライラするんだよ」
「わかるわかる!でも周りに八つ当たりしちゃダメでしょ(笑)」
「そうだな…それは俺も反省してる。そういえばさ、そのChatGPTってなに聞いても答えてくれるんだっけ?」
「そうだね」
「じゃあさ、カルーアミルク好きにオススメのお酒、なにあるか聞いてよ」
二人の夜はまだまだ長そうだ。
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