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創作小説「DEvice」3

これは1-3です。1-1と1-2を読んだ上でお読みください。


問題の日の前日談。
遅ればせながら僕らが話した事と取った行動を話したい。
まずは部屋の違和感について。
散乱していた様子からはおそらく外部の人間が荒らした可能性が非常に高いと思われる。
いつも使うはずの家具の上に書類が散乱しているだけでなく、生活ができそうなスペースが確保されていなかったのがその証拠。だからあの散らかり方には生活感がなかったのだろう。
ちなみに僕たちのベッドと机の上には大量の書類がおかれているが、椅子の上には一枚もない。床には目を向けてはいけない。ちらほらあるから。
そこから外部の犯行だと僕たちは考えた。
ちなみにミナミは冷蔵庫の中が普通に片付いていることから疑問を持ったのだそう。
僕たちの冷蔵庫はブロックパズルのように詰め込まれているので僕は何も感じなかったのだ。
また散乱していた書類や持ち込まれたものがデータということからもヒロさんの部屋に入った人物の目当てのものは情報なのだろうと考えるのが普通だろう。
そして散乱していたプリントを見るにサッカー部が関連していると考えられる。
しかし、侵入者がそんなへまをするだろうかと僕は考えた。
なぜ痕跡を消さなかったのか。書類だけが散乱していたのは何故か。
書類を探していたとして、木を隠すなら森の中というように隠したい書類は書類の中に隠すということはまだ納得がいくのだが、サッカー部以外の書類の中にあるとどうして考えなかったのだろうか。
明らかに不自然である。
しかしヒロさん以外の人物が片付けたのは書類棚の中が整理されていなかったことからみてもほぼ間違いないだろう。
それならばどうしてサッカー部のプリントだけが部屋に散乱していたのか。
その理由は他の誰かが故意にサッカー部のプリントだけを散乱させたからだろう。
ならばその人物とはだれか。十分に怪しむに足る行動を取っている人物。
そう、アリスさんである。
どうしてそう考えることができるのか。それは彼女の言動から推察される。
まず一つ目は引きこもっているといっていたヒロさんの家に僕たちがいくことを許可したこと。もし本当にヒロさんのことを心配しているのなら、不用意に人に合わせることはないだろう。
しかし彼女がヒロさんのことを心配しないような人物であるとは僕には思えなかった。
ならばどのような仮説ができるのか。僕たちがヒロさんの部屋に行ってもいいような仮定。
その上、ヒロさんに危害が及ばない方法。
最も簡単な方法はヒロさんと僕たちを合わせないことだ。そこから、僕はヒロさんが部屋にいない可能性を考えていたのだ。
そして二つ目。これが決定打である。
ヒロさんが部屋にいないと知った直後に部屋の様子を聞いてきたこと。これが明らかに不自然である。もっと他に聞くことがあるはずなのに、なぜ一目散に部屋の様子を聞いたのか。その目的はこの部屋の違和感を僕たちに伝えることにあったのではないかと僕は感じた。
以上の予想からライと僕は二人きりでアリスさんからかかってきた電話にて話を聞いた。僕たちの予想は完全に的中していた。
後日、3人で集まった際に詳しい話を聞かせてもらった。
アリスさんはもともとミナミの力を借りるつもりで僕たちの同好会にやってきたそうだ。
ミナミがおせっかい焼きであることを知って、彼女なら助けてくれると踏んだのだそう。
そのミナミは短絡的にサッカー部を疑いやってきたのだそうだ。今回は助かったが、考え無しの行動は問題を誘発しかねないので以後気をつけて頂きたい。
持ち込まれたものが自作デバイスなら設計図を欲しがるだろうと考え、僕たちをヒロさんの家に上がらせたそうだ。僕たちは全く彼女の掌の上だったのだ。
彼女はヒロさんの行方が分からなくなった際、依頼を受けた日のおよそ一週間前、に彼の部屋に行ったそうだ。部屋に入ってもヒロさんはいなかった。部屋を探している時に書類棚が荒らされていることに気づいたのだという。そこでヒロさんがただの家出の類でないことを確信し一人調べ始めたそうだ。
ヒロさんの交友関係を洗っていくうちに、ヒロさんの友人からサッカー部の不穏な噂を入手した彼女はサッカー部に疑いを持った。
その後、明らかになったのは内部でのいじめ問題だった。
その標的はヒロさんを含む数名。一部の生徒はそれを苦にして退学をしてしまったようだ。からかわれることや金品をせびられることだけでなく、その影響は部の代表選考にまで及んだのだそうだ。
それに憤慨したヒロさんは監督に直訴したそうなのだが、あいにくその監督も話を聞いてくれるどころか、更なる冷遇をしたのだ。
その後ヒロさんはいじめの証拠を残そうと決死の思いで動いていたが、不幸にも掴んだものは監督と生徒数人が部の活動資金をプライベートなことに使っていたという不正の証拠であった。それがあのデバイスの中身。それからいじめはもっとエスカレートしていった。それに耐えかねたヒロさんはとうとう恋人にも打ち明けることもできずに逃げ出してしまったそうだ。
アリスさんは一人では立ち向かえないと思い学校でも顔の知られているミナミを味方につけようと、あのような工作をはたらいたのだ。
その後、ヒロさんがデータをアリスさんに渡したという噂を流してもらうことを約束した。
噂が広まってサッカー部が動き始めればそれが確固たる証拠になる。
そのうえで告発すれば学校側も話を聞いてくれるだろうという考えのもと僕たちは動いていた。

「まあ、結果的に何とか解決へとつながったものの一時はどうなることやらと思ったよ。」
「確かに。監督に見つかった時は俺も心臓が止まるかと思った。」
そういってライと僕は寮で駄弁っていた。
「そういやさ、サッカー部が不正で手に入れてたのって麻薬デバイスらしいぜ。」
「げっ、あの麻薬デバイスか。そんな物騒なもん入手してたのか。」
麻薬デバイスとは違法デバイスと呼ばれるデバイスである。ゲートウェイドラッグとして近年流行しており、規制が大幅に強化されているのだ。
「いじめ問題も摘発され始めてるらしいし、監督も責任逃れをするかの如く逃げたしな。」
「最後のはいいニュースでもなんでもないじゃん。」
あの後、予定通りデバイスをミナミとアリスさんが学校側に持ち込んだようで学校は大騒ぎになった。
僕たちの集めた証拠に加え、ミナミのような目立った人物に告発されてはもみ消すこともできなかったのだろう。
名門校であるがゆえに世間の目も厳しく、連日マスコミが駆け付けていた。
監督、顧問は辞任、一部の生徒は退学や休学といった措置が取られた。
ヒロさんもデバイスが学校側に渡ったと知って外に出てきた。
逃げていた期間は信頼のおける友人の家で寝泊まりしていたらしい。
後日、菓子折りを持って僕たちの同好会のもとへあいさつに来てくれた。
ヒロさんによるとヒロさんもデバイスにデータが入っていることは知らずに入手したものらしい。
もう一つ、残念なことに風のうわさ程度でしかないが、僕たちが影の立役者だとも広まってしまった。
マスコミがかぎつけなかったのが不幸中の幸いである。
「じゃあいいニュース。盗聴用デバイスの設計図と電子機器をバグらせるデバイスを完成させたぜ。」
「おおっ、待ってました。」
今回の反省を生かして僕たちは盗聴用デバイスを作ろうと話していたのだ。
仕組みや効果について二人で話していると玄関の鍵が開く音がした。
僕たちが扉のほうへ振り向いたと同時にミナミが入ってきた。
ミナミは僕たちの部屋の惨状を見るや否やあの無表情を鬼の形相に変化させた。
そして何も言わずに部屋に上がると、冷蔵庫の中を開けるとこちらを振り返った。
「お前ら、今日の日付を言ってみろ。」
「ミナミ先輩!今日は8日ですけど、、、」
「じゃあ何で消費期限が一か月前のものばっか入ってるんだよ!!」
そういって持っていたカバンをこちらに投げつけてきた。
僕たちはただひたすらに謎に謝り整理整頓をした。
帰り際、ミナミに2週間後にまた来るといわれた僕たちは家のセキュリティーを強化するために二人で策を練り始めた。


1がようやく終わりました。

続きはまったく推敲ができていないのでもうしばらくかかります。

圧倒的に描写が足りないところなどはこれから改善していきます。

今後ともよろしくお願いします。

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