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日常にアフレコを入れる

最初に断っておくと、
私はYouTubeなどの動画を発信したことは一度もない。

今まで動画を見ることはあっても、
配信することに興味が湧いたことはないし、
これから先、興味が出てきそうな兆しも、今のところはまったくない。

なんとなく、毎日の暮らしにメリハリが感じられないというか、
つまらないな、と感じてしまう時がある。
誰にもそんな瞬間は、ふと訪れるものではないだろうか。

訳もなく空気が重いそんな時、
私は、暮らしに「アフレコ」を入れる。
そんなちょっとした遊びを、たまにやっている。

本当に取るに足らない遊びである。
洗濯物を洗濯機に放り込むときに、
「この服はお気に入りなので、必ずこの洗濯ネットに入れてます」
と、いちいち説明を入れる。
料理をするときは、
「鶏肉は私はこれくらい細かく切るのが好きなんです」
などと、誰に伝えるでもなく、ぶつぶつと独り言で説明を繰り返す。
ただただコーヒーを入れる作業も、
どこで買った豆なのか、なぜその豆を選んだのかを呟く。
お気に入りのマグカップの由来なども付け加える。

もし誰かがこの光景を偶然目にしたら、
きっと気味悪がるか、
目の前にカメラを置いて撮影しているに違いないと思うだろう。

名付けて、”YouTuberごっこ”。

日常生活に彩りが減ってきたなと感じている人に、
私は、この遊びをお勧めする。

とても単純で稚拙なことのように思われるかもしれないが、
これが存外、趣深いのである。
大しておもしろくもないありきたりだと思っていた日常が、
なぜか分からないけれど、
なにかドキュメンタリー映画に出演しているような、
また撮っているような、
そしてそれを鑑賞しているような、
ちょっと素敵な何かに、変化を遂げるのだ。

私はこの人生の主人公なのだ

大層なようだけど、こんな些細な遊びが、
私をそんなうっとりとした気分にさせてくれる。

なんとなく気分がすぐれない、気持ちが上がらない時というのは、
自分のことを俯瞰できなくなっている時なのかもしれない。
平凡で単純な繰り返しばかりの毎日を送っているのは、
世界中で自分だけのような気がして、取り残されたような気分になって、
さらに気が滅入る。
けれども、そんな生活に敢えてアフレコを入れて、
自分を主人公に仕立て上げて、私というものを演じてみると、
新たな視点に気づいたりもする。
そして気がつくと、
いつの間にか得体の知れないどんよりとして滅入っていた気分は
どこかに去ってしまっている。

はじめはちょっと恥ずかしくて躊躇するかもしれないけど、
騙されたと思って、ぜひ一度お試しあれ。

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