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花の香りで季節の移ろいを知る

さっき散歩の途中で、ふっとジャスミンの香りがよぎった。

あぁ、もう5月なんだと、あらためて実感する。

ついこのあいだまで、
フリージアの花の香りに春の到来を喜んでいたばかりなのに、
季節の移り変わりは、思いのほか急ぎ足である。

私は鼻がいいほうだ。
だから、花の香りで季節を嗅ぎ分ける。

梅は甘ずっぱい香り。
桜は香りがないと思っている人がたくさんいるが、
それは誤解だ。
ソメイヨシノは香りを嗅ぎ分けるのは結構困難だけど、
八重桜などの種類は、控えめながら甘く芳しい。

雨の降り始めの、アスファルトが烟る匂いもとても好きだ。
あの匂いと、雨上がりに咲くくちなしの花の芳香が混じりあうと、
初夏の到来を感じる。

梅の実が日ごとに大きくなっていて、
顔を近づけると、甘い甘い、そしてなんとも言えない懐かしい香りが広がる。
昔、毎年梅雨の時期になると
祖母が台所で梅しごとをしていたことを懐かしく思い出す。

私にとっての記憶というものは、
どうやら嗅覚によっていちばん甦りやすいらしい。
香りとは、瞬く間に時間移動をすることができるタイムマシンである。

昨年、コロナウイルスに感染してしまった時に、
数日間、全く嗅覚がはたらかなくなってしまった。
匂いを感じられないということは、味もまったく感じなくなるわけで、
生きていることの楽しみが大方削がれてしまったような
とても悲しい、絶望的な気持ちになった。

また花の香りを愛でられるようになって、
今年もジャスミンの香りを楽しむことができて、
本当に良かったと、小さな幸せをかみしめるのであった。

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