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『Ten Americans: After Paul Klee』 Zentrum Paul Klee Prestel 2017年 978-3791356655

クレー好きのみなさま、必読です!

これまで出版されたクレーの本とは、違う方針で学びが多い本となっている。

本書はクレーがアメリカ人アーティストに与えた影響についてまとめている

クレーを語る上で、芸術運動だったり、描き方だったり、同時代の人物との比較やバウハウスの教育と言う観点から比較対象を選ぶことが多かった。本書だと、アメリカと言う国の人たちが持つ抱く意味合いで比較対象となっているため、国が持つその土地に住む人にとって作家1人が発信する作品としての価値だったり、人物像個性の影響だったりを改めて認識させてくれる本になっている。

自動描画、カラーフィールドペインティング、シンボル、ピクトグラフの使用を通じて、クレーの理論と芸術的方法が戦後のアメリカの芸術の歴史にどのように貢献したかを明らかにする。

本書に登場する作家は10人だが、個性豊かで興味深い。10人一人ひとりに対しての紹介文がとてもしっかりしていて、短いながらも大変充実したものになっている。こういうまとめ方は美大に通っていたら目にするものだけど、いざ自分で英語でまとめるとなると、ここまで冷静で簡潔でまとめる力は訓練されていないと難しい。英語が苦手な人でもわかりやすくその作家が生きた証、そしてクレーから何を影響を受けたのかがわかる。

10人のアーティストには、ジャクソン・ポロック、ロバート・マザーウェル、マーク・トビー、ジーン・デイビス、ケネス・ノーランド、ウィリアム・バジオテス、ノーマン・ルイス、セオドア・ステイモス、ブラッドリー・ウォーカー・トムリン。

233ページと234ページのたった2ページに参考文献が載っているが、これが全てでは無いにしろこれを押さえておけばクレーの外枠だけでも把握することができるだろう。一番最後にあるカタログレゾネの一覧に挙げられている3つは必読である。

小さい頃からわたしの大好きな作家のクレー。大体の本は読んできたし、大体の作品は知ってきたけど、本書のようなアプローチは私の中にはなかった。クレーが持つ魅力が、これからもいろんな点と点を結ぶ存在として増幅するだろう。まだまだ正解が見えないからこそ調べていくのが楽しい。

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